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第一話 ニンゲンの残り香

 現在まで続いている大戦争。

 元々は世界は人間連合軍とその敵対勢力の二分割だったが、今はすでに全員敵バトルロイヤル状態になっている。

 そして、戦争は渦中の人間がほとんど死んでからも続いた。

 そのなかで、生き残った少しの人間は他種族の戦争に巻き込まれないように、静かに余生を生きていた。

 また、人間と同盟を組んでいた天使達は基本的には中立となることを公表した。中立じゃなくなる条件は天使側に攻撃が来たときと、人間の生き残りが再び戦争を始めるとき。

 その上で、人間に再び戦争を起こせる力は既になかった。

 若者は数を減らし、武器は殆どがなくなっている。生産をする力もなく、手元にあるのは自爆用の信管だけ。自由に耕す土地がなく、採取や狩猟に外に出るには命の危険がつきまとう。

 既に、人間は希望をすべて失いただ滅びを待つだけだった。


 ほんの一部の人間を除いて。


ーーーーーーーーー


 三年前に破壊され、滅びた洞窟国家の生き残り。人数は百余名。

 その中でも、当時軍で訓練段階に居た二十名程度が洞窟の奥に集まっていた。

 先の洞窟国家のような頑丈な作りはなく、流れ弾が飛んでくればすぐに崩落するかもしれない洞窟の奥。いる人間は、皆昔の軍服を来ていた。

 黒地に緑の縁取りがされた上着。ボタン一つ一つには戦前の人間生存域の地図が掘られている。

 部屋の奥には少年が一人。年齢は十七歳。しかし、その瞳はまるで死んでいるかの如く光を通さずにすさんでいる。

 周りには彼よりも年上の人間もいる。なのに彼が選ばれたのはただ一つの理由。

 無情であるからだ。

 彼ならば、誰よりも心を動かさずに仲間を見捨てられる。

 彼ならば、誰よりも躊躇することなく自分を使い潰して殺してくれる。

 敵の襲来を囮で回避し、仲間を命懸けで採取に向かわせ、この集落は何とか成り立ってきた。

 一人の少年に、すべてを押し付けながら。


ーーーーーーーーー


「なあ大将。何時になったら戦争が終わるんだ?」


 部屋のなかに、一人の声が響いた。

 名前はアベル。彼は三年前の洞窟で、妻と子供を失っている。


「大将に言っても仕方ないのは分かってる。けど、あとどれくらい待てば良いんだ?一年?二年?それとも十年か?」


 彼の夢は、いつか花畑のなかに二人の墓を建てることだ。

 だからこそ人間が堂々と歩ける天下、つまり終戦を誰よりも望んでいる。


「ああ、もうそろそろ各種族も疲弊している。そろそろ動き出すぞ」


 先日まで、各種族の戦力などを確認していた天使達。その、最後の一人が帰ってきたのだ。

 報告は『数年前に比べて戦闘員、武器資源などすべての要素において下降傾向にある』とのこと。これまでずっと続く戦争に、いくら化物じみた能力をもってしても耐えきれなかったのだ。


「反撃の狼煙をあげろ!人間は特殊な力をもたない。魔法すら使えず、かといって身体能力が高いわけでもなく、戦争の表舞台にすら立てない!」


 だからこそ真っ正面から勝てないのであれば、あらゆる搦め手と騙し討ちを駆使して。


「全世界を、終戦の時に人間おれらと天使が支配する!」


 いつも光のない瞳が、爛々と輝く。これで、今まで死んでいった者たちに顔向けが出来る。


「さあ、リベンジだ!前回は負けた。代償は国家一つと数多の命。だが、今回は負けない!」


ーーーーーーーーー


 洞窟国家の滅亡から三年。正確には二年と三百二十三日目。

 人間は、進軍を開始。一年を経たずに全世界を支配し、後の大帝国の礎を築き上げた。

 旗印となったのは初代皇帝ランスロット。当時十七歳であった。


 帝国史教科書より抜粋。

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