プロローグ②
第一洞窟国家。そこは戦前は迷宮と呼ばれていた洞窟の中の一番奥にある。
あちこちに土がむき出しになった壁。そこは、ある程度の魔法による振動には耐えられるように、木の柱で補強されている。その景色は、さながら炭鉱のようだ。
地上と違い、外からの侵攻に怯えることなく暮らすことが出来る。だからこそ、住民の顔からはあまり悲壮な雰囲気は感じられない。それには、軍本部からの放送に『事態は収束に向かい、後一年も経たずに戦争は終わるだろう』とあったことによる安心感も少しは作用しているのだろう。
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「さて、戦況の報告を開始しよう」
軍本部大将フォーマルハウトの号令により、集められた軍の重鎮たち。それぞれが一人一つ以上の戦場を指揮している。
「先ずは東部戦線の報告を致します。ドワーフによる戦車大隊がビーストの歩兵大隊と小競り合いを開始。観測隊五組十人のうち、敵砲弾により三組が死亡。さらに残り二組も片足切断の重傷者一名、捻挫二名、脳震盪による意識不明者一名の被害が出ております。しかし、我々の存在は気づかれては居ないようです」
「そうか」
敵勢力は人を機械の燃料にするマッドサイエンティストと、狩るのがらくだからと言う理由だけで戦争中の食事を近くの人間の集落で賄おうとする野蛮人共にここがばれたら恐ろしいことになる。犠牲者は二桁では足りないだろう。
「次に南部海岸線で起こった吸血鬼と鬼の小競り合いの報告です。余談ですが、奴等共に鬼がつくのに仲は良くないようですな」
「全くだ。只でさえ厄介な連中がつるんでみろ?我々の胃に、穴どころかブラックホールが開きかねない」
「それでは報告を。人間の山賊の集団が、釣りのために海岸線に出たところ……」
会議に集まった全員が絶句する。
この大戦中に長閑に釣りをするために海岸線に出た?
アホか、と言わざるを得ない。
「それを見つけた吸血鬼と鬼が、どちらの昼食にするのかで言い争いを始めました」
酔っぱらい共の喧嘩か?と思ったが、それとはレベルが違いすぎる。
「その戦闘の余波に巻き込まれ、十人の内の三人が肉塊に。二人が吹き飛ばされ海にいたイカに引きずり込まれ溺死。おいしく頂かれたようです。残りは二人づつ分けて、最後の一人は半分こすることにしたようです」
「言い方は可愛いもんだが、内容が物騒だな」
「観測は大天使ガブリエル様がなさったようです」
「なるほど。他に気になったことは?」
「はい。盗賊の一人が洞窟国家の浮浪者らしく、場所の情報が盛れる可能性が……」
そこまで言い終わった瞬間に、いきなり指令部の扉が開く。
入ってきたのは埃にまみれた軍人。階級章が、通信兵の下士官であることが分かる。
「ここは指令部だ。入り方を知らないわけでは無かろう」
表には会議中の札が掛けられている。そもそも、下士官は指令部への入室にかなりの制限をかけられている。
「申し訳ありません!しかし、緊急の報告のために参りました!」
「だが、それは上官を通して行われるはずだ。何故そのプロセスを通しての報告をしない?」
「はい。オーガの軍勢が洞窟国家の目の前まで迫っております!我々警備隊は23名の犠牲をもってこれらの約3分の1の数まで減らすことには成功。しかし、進軍は止まらずにすぐ目前まで迫っております!」
「それを早く言わんか!」
説教を始めたのは自分なのに何故かキレるフォーマルハウト大将に、全員の痛い視線が集中する。
「それで、洞窟国家に来るまで後何分だ?」
「もうそろそろ来ます!」
何と二話目のプロローグです!
今までプロローグを二話続けた人間は居ただろうか?
まあ、次回からは普通に本編始めます。
ノリが軽いのは今回までです。次回からは真面目なテンションでいきます。




