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流れゆく時に花束を  作者: 南戸由華
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エルとハリム

短めです!すみません…!


「お前、エルか!?どうしてここに!?」


ハリムは驚いてエルに駆け寄った。


「てか、お前今までどこいってたんだよ!」


「いや、その、ちょっと…」


予想外の再開にエルは動揺した。

光り輝くハリムの翼が近づいてくるほどに、エルの心の中に雲がかかっていく。


先ほど会いたくないと思ったばかりの人物にまさか会うとは。


「お前、なんで人間界にいるんだ?まさかやっぱり最終試験受ける気になったとか?てか、なんで一言も言ってくれないんだよ?俺がどれだけ心配したか…」


「ちょ、ちょっと待て!」


矢継ぎ早に質問するハリムに、エルが手の平を向けてそう言うと、ハリムは怪訝そうに黙った。エルはさっと周りを見渡す。

幸い近くに人はおらず、川のせせらぎが聞こえるだけだ。ただ、あまり大声で話すのは得策ではないだろう。


「…ハリム、悪い。」


「…何だよ?」


「ちょっと、事情があって…俺は今…その…天使じゃないんだ。」


「…!?どういうことだよ!?」


エルの予想通り、ハリムは非常に驚いている。まあ、何も知らないからそうなるだろう。


「事情はこれから話す。だから、ちょっとそこの川のそばに行かないか。ここで大声で話していると目立つし…周りの人間には俺が馬鹿みたいに独り言を言ってるみたいに見える。」


エルはもう天使でないので人間から姿が確認できるが、ハリムは人間には見えない。

既にアトラの手伝いとして働いている以上、エルが道端で立ち止まって、変な独り言を長時間話しているような変人だと噂されてしまったら、彼女にも迷惑だろう。


「…分かった。」


少々納得のいかない顔をしながらもハリムが了承し、2人は川の側に行き適当な木陰に腰掛けた。


ここなら周りの人間からは単にエルが1人で木陰で休憩しているように見えるし、川のせせらぎで少しはエルの声も聞き取りづらくなるだろう。


「…で、どうしてお前は天使じゃなくなって、人間界(ここ)にいるんだ?…なんで急に寮を出ていったんだよ。」


急にいなくなったエルに対して怒っているのだろう。質問する声に少し怒りの色がある。


エルはふぅと息を吐き、まだ動揺している心を少し落ち着け、口を開いた。


「…天使じゃなくなったのは、俺が大罪人だからだ。それで翼を切られ、人間界に追放された。」


「え…人間界に追放って、1番重い罰じゃないか!お前、一体何を…?」


ハリムはまさか目の前の友人が罪人だとは思ってもなかったのだろう。目に見えて動揺している。


「…悪い、こういうことを言うと怖がられるかもしれないが、その、俺は…人を殺したんだ。」


「嘘だ。」


間髪入れずハリムは言った。


「それは嘘だ。お前は人を殺すようなやつじゃない。」


ハリムの言葉にエルは黙り込む。


「人間界に追放されるような大罪がどういうものかは知らないけど、お前は人を殺してない、そうだろ?」


エルはハリムから目をそらした。

自分を疑うことのない瞳を直視することができなかった。


ーーなんでそう言い切るんだ。お前は俺の何を理解してるつもりなんだ。


「違う、殺したんだ。俺は…人を。」


きらきらと輝きながら流れている川を見ながら、エルはぼそりと言った。


隣りのハリムもこの川と同じようにきらきらと輝いているようにエルは思った。

澱んでいるのは自分だけだ。

これ以上醜い自分を彼に見せたくなかった。


ハリムはエルが黙り込んだのを見ると、小さくため息をついた。


「そうか…でも、お前、執行官になるのが昔からの夢だって言ってたじゃないか。やっと三次研修が終わって、後は最終試験だけこなせば晴れて執行官だったのに。」


エルは黙ってハリムの言葉に耳を傾ける。

何も言えない。もう、胸を張ってそれを夢だと言えなくなってしまった。


「まさか、夢を叶えることより、そいつを殺すことの方がお前にとって大事だったのか?」


「…違う。嫌になったんだ。執行官になるのが。」


「なんで急に…」


「なんでもだ。そう思ったんだからしょうがないだろ。」


ぼそりと、エルはそれだけ言った。

もうこれ以上はこいつに言えない。


「…分かった。もう、お前とは会えなくなるんだな。」


暗いため息混じりのハリムの言葉は胸にちくりと刺さった気がした。

もう会いたくないと思っていたのになぜだろうか。


「はぁー、全く、出ていく前に一言くらい何か言えっての。」


「悪い。」


「俺達一応1番近しい友達…親友って奴だろ。俺ってお前にとって相談もできないようなやつなの?」


エルは思わずぱっと顔を上げて、ハリムの目を見た。


「…違う!俺はお前のことをちゃんと…良い友達だと思ってる。」


親友、とは言えなかった。

エルは再び俯いた。


「ただ、事情があって言えなかったんだ。」


「それは、今でも?」


顔を見なくても、声色でハリムが裏切られたような顔をしているのがなんとなく分かった。


「…悪い。」


謝ることしかできない。


「…そうか。言えないことなら仕方ないか。」


ハリムの諦めたような声が心をえぐる。


「本当にすまない。」


「もういいって。誰でも言いたくないことはあるさ。」


ハリムは明るい声でそう言ったが、エルの心は全く晴れなかった。


「…で、そんなお前に頼みがある。」


唐突なハリムの言葉にエルが顔を上げた。ハリムを見ると、彼は困ったような笑顔をしている。


「道案内、してくれない?」



お読みいただきありがとうございます。

短めですが、これ以上書くといい終わり方が分からなくて…

未熟者で申し訳ないです。


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