二話 【以外な才能!?】
いよいよ学校生活も二日目、ヴェニットたちが通うアドニス高校の入学式の日だ。
ヴェニットはまだぎこちない制服姿に身を包みサクラの舞う中学校へと向かう。
登校中に魔法に関する道具、魔導書が売っている店をちらりと見た。
若い二人組が杖やらローブやらを手に取り楽しそうに会話をしている。
いいなー俺も将来ああなれるのかな
埒もない事を考えつつも学校へ到着だ。
教室に着き荷物を置きホームルームが始まる。
担任の簡単な挨拶が終わり体育館に向かう。そう入学式だ。
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「君たちは入試に合格しました。なので、君たちは魔法の習得、勉強等に手を抜かず真面目に取り組む事が出来る生徒だと思っています。今は様々な不安があると思いますが――
――では今日から君たちはこのアドニス高校の生徒であることに誇りを持って行動をしてください。」
どこの校長を話しは長いのだろうか。これは校長から生徒へのある種の嫌がらせかな。
なんて事を思いつつ話しを聞き流す。
カリーロは昨日に懲りず爆睡だ。
終わったな…こいつ
そういえば昨日生徒手帳の校則を読めって言われたな。ヴェニットは長い校長や主任の話しを聞き流しながら手元の生徒手帳の校則を確認する。
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1、学校生活に不適切な服装は控え、高校生としてふさわしい言動をすること。
2、校内における犯罪行為、及び危険行為を禁止する。
3、魔法を使った実技訓練をする場合は教員の許可をとり、安全面に気を付けて行うこと。
4、生徒のみでの決闘を禁止する。
5、校則を破った場合、その他の迷惑惑行為、遅刻、無断欠席等を行った場合は随時罰を下す。
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といった感じだ。
わりと自由な方だろう、それにしても実技訓練ってなんだろうか。
しかも決闘も教員が居ればOKなのか。
決闘ってなんか物騒だな、しかも校則を破った時の罰ってなんだろう。
校則について考えている間に入学式も終わりだ。
早速今日から授業があるので生徒たちは皆ワクワクしている。
「ねぇ、さっきから何ニヤニヤしてんのよ?」
ワクワクがニヤニヤとなり顔に出てたようで冷静なフィエスタに引かれた。
「いや、だってこれから魔法使えるようになるんだよ?ワクワクするでしょ?」
「そんなのいきなり使える訳ないでしょそれにそんな事言ってる人に限って剣術とかをおろそかにするんだからっ」
それもそうだ、焦りはミスを誘う。戦場では決して焦ってはいけないのだ。
常に冷静なり最善策を考える。
そうしないと例えば戦争が起きた時に生き残れない。
ヴェニットはいつでも冷静を心掛けるようにした。
でもならカリーロも少しは冷静に考えた方がいいのでは?始業式で寝るなんてねぇ?
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教室では早速魔法の授業が始まる。
担任が魔法を学ぶ際の注意点を説明した。
「まず皆さんには攻撃系魔法の中で風から覚えて貰います。火と水を最初にしない理由は簡単です。
慣れないうちは魔法を上手くコントロール出来ないので、火では火事になりますよね。校舎燃えちゃいましたじゃ済まされないです。
水も同様に校舎が水びたしにされても困るので、最初は風からです」
「では始めましょうまずはお手本です。」
すると担任おもむろに落ち葉と台を取りだし落ち葉を台に乗せる。
「せいっ」
掛け声の直後、落ち葉が吹き飛ばされる。
おおすごい。さすがせんせー
「魔法というのはイメージの具現化です。脳でイメージした事を魔力を通して現実の物にします。わかりましたか?」
ふむふむ、さっぱりわからん
とりあえず脳でイメージ→魔力を注入→具現化と、言ったとこだろうか。
でもそれなら魔力は無限なのか?イメージなら何でも出来るの?
多くの疑問が残る。
と、ここで誰が質問するようだ。
「はーい先生質問です。」
「何ですかオフェリア君?」
金髪で博識がありそうな彼はオフェリア
ハカセっぽい見た目だ。
あだ名はハカセで決定だな
「ここで言う魔力はとは何ですか?」
「魔力はですね。イメージした事を具現化するためのエネルギーです。しかしこれは聞かなくてもわかりますよね?オフェリア君が聞きたいのは使い勝手や一度に使える量の事ですね?」
「魔力は有限であって無限です。一度に使える量は一定ですが時間が経過すれば回復します。魔力を貯める器が皆さんにあると考えて下さい。器が空になっても少しづつ注がれるように」
「魔力の使い勝手は様々なものがありますね。
今見せた風魔法などの攻撃魔法。傷や病気を治す回復魔法。肉体の能力を一時的に高めたりあるいは弱める補助魔法。
などなど魔力は何にでも変換出来ます。全てはイメージ出来るか否かです。」
「最後に魔力は増やす事が可能です。器が大きくなればそれだけ大きくの魔力が一度に使えます。体力と同じように鍛えれば、魔力も増えていきます。」
やるじゃんハカセ
なるほど大体分かったがならイメージさせすれば空を飛んだり何でも出来るのではないだろうか?
よし、意欲を見せるついでに質問しちゃおう。
「パリス先生ーなら魔法で生き物を召喚したり空を飛んだり出来るんですか?」
「いい質問です。生き物を召喚と言うのは魔方陣を使えば呼び出す事が可能です。しかし世界の何処かから呼び出すのでどちらかと言えば転移でしょう。」
「次に魔法で出来る事についてですが、魔法にもイメージして具現化しやすいものとしにくいものがあります。空を飛んだりするのは少し難しいと思います。どんな事が具現化しやすいかなどは未だに謎が残っています。」
なるほどね。何でも出来る訳ではないと、じゃあ基礎というのは具現しやすい魔法の事か。
「まあ百聞は一見に如かずです。実際やってみて下さい。」
よし。やってみよう
風か、風をイメージして、なんか注いで、どうだ!?
………なにも起きない。
どうやら失敗だ、周りの生徒を見ても皆失敗ばかりだ。
いきなり成功なんてそうそう出来ないのか。でもイメージさえ掴めば!
その時、突風で筆記具をぶっ飛ばしてる生徒を見つけた。
しかも一発で。
多くの生徒の視線の先にいた生徒は…
え?カリーロ?
まさか集会ごとに寝てるようなカリーロが成功されるなんて思ってもいなかった。センスがあるのだろう。
「お、カリーロ飲み込みが早いな。」
パリスせんせーも誉めている。やはり一発は線が良いのだろう。
何よりもカリーロ自信が一番驚いているに違いない。
「カリーロ、折角だからその魔法に名前をつけるといい。」
「え?で、でも風魔法って名前があるじゃないですか?」
「魔法のイメージの仕方は十人十色だ。自分だけの名前をつけた方がイメージを出しやすい。」
かなり動揺していたカリーロだが良い名前が浮かんだのか、いつものニヤリとした笑みを浮かべ命名した。
「じゃあ、風がでるから『扇風機』だ!」
なんて馬鹿なんだ…しかも扇風機ってお前は正真正銘馬鹿なのか?
時間が経つに連れて段々と微風を出せる生徒が出てきた。しかしカリーロのような満足の行く風力を出せたのは彼だけだった。
これが才能か、ちきしょー
ヴェニットも負けじと取り組むもこの日は少し微風が出たぐらいで魔力が無くなってしまった。
他の生徒も皆魔力切れを起こしていた。
まぁ魔力は使えば使うほど体力みたいに増えるし帰ったら母さんにでもコツを聞いてみようかな~
カリーロが出来た事で皆に活気が出た。今日の魔法習得はこれで終了。
明日こそは策を練ってみようかな。




