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彼女はサンタクロース?  作者: 神谷優
11/12

11話

「ユイ!?」


ユイの姿が透けて見えた。目の錯覚じゃなかった。別れの時なんだと思う。覚悟したはずだ。公園でも決めたはずだ。でも、それでも……。


「やっぱり無理だ。好きなんだよ。ユイと離れたくない。短すぎるんだよ。急に現れて、急に消えるなんてずるいだろ!」


 すがるように俺は彼女を抱き締めた。いつの間にか、ユイはサンタクロースの姿だった。


「……」

「なぁ、やっぱユイがいなくなることないだろ。ずっといろよ。いたらいいだろ」

「……」

「何で……黙ってんだよ。何か言ってくれよ。声、聞かせてくれよ……」


 それまで黙ってユイが口を開いた。唇は震えていた。頬を涙が伝っていた。


「……誠一君。無茶、言わないでよ……」

「ユイ…!?」

「私も、誠一君が大好き。ありがとう、さよなら……」


 それがユイの最後の言葉だった。彼女はもう、消えてしまった。抱き締めていたはずなのに、この腕には何もない。

 カンッと音が響いた。それはさっき買ったばかりの、ペアリングの片割れだった。



「ユイ、忘れていくなよ……」


 俺はユイの指輪を拾った。掌に乗せて指輪を眺める。


「ユイ、ユイ……ユイ……ぅあぁあ…あぁああぁあーー!?」



 泣いた。随分と久し振りに泣いた。失って初めてわかるなんてよく言ったものだ。こんなにつらいなんて思わなかった。




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