11話
「ユイ!?」
ユイの姿が透けて見えた。目の錯覚じゃなかった。別れの時なんだと思う。覚悟したはずだ。公園でも決めたはずだ。でも、それでも……。
「やっぱり無理だ。好きなんだよ。ユイと離れたくない。短すぎるんだよ。急に現れて、急に消えるなんてずるいだろ!」
縋るように俺は彼女を抱き締めた。いつの間にか、ユイはサンタクロースの姿だった。
「……」
「なぁ、やっぱユイがいなくなることないだろ。ずっといろよ。いたらいいだろ」
「……」
「何で……黙ってんだよ。何か言ってくれよ。声、聞かせてくれよ……」
それまで黙ってユイが口を開いた。唇は震えていた。頬を涙が伝っていた。
「……誠一君。無茶、言わないでよ……」
「ユイ…!?」
「私も、誠一君が大好き。ありがとう、さよなら……」
それがユイの最後の言葉だった。彼女はもう、消えてしまった。抱き締めていたはずなのに、この腕には何もない。
カンッと音が響いた。それはさっき買ったばかりの、ペアリングの片割れだった。
「ユイ、忘れていくなよ……」
俺はユイの指輪を拾った。掌に乗せて指輪を眺める。
「ユイ、ユイ……ユイ……ぅあぁあ…あぁああぁあーー!?」
泣いた。随分と久し振りに泣いた。失って初めてわかるなんてよく言ったものだ。こんなにつらいなんて思わなかった。




