決意
「勿論きちんと伝えるつもりではいますし、咲さんの話も十分分かっています。ただそれでももう少しだけ自分の中で頑張るための時間が欲しいんです」
咲さんに僕が今話せる精一杯の気持ちを伝えた。
部屋の中に重い沈黙が流れる。
「…そんなにまっすぐ見つめられると照れちゃうわね」
「ちょっと!こっちは真面目に話してるんですけど!」
「冗談よ。そこまで言うならこちらも何も言わないわ。2人が仲良く過ごせるのが一番だしね。」
ほんと咲さんには弄ばれる。。だけどふざけながらも要所で真剣に伝えてくる言葉はすごく心に響いてくる。
「まぁ今のかなちゃんの様子を見てるとそもそも伝えるタイミングとかもう関係ないような気もするけどね…」
ボソッと独り言のように囁いた。
「え?今何か言いました?」
「なんでもなーい。それはそれとしてただ私の可愛いかなちゃんを待たせるわけじゃないわよね?いつまでも待ってくれてると思うと痛い目みるわよ」
「そうですね、いつまでも待ってもらうわけにもいかないですし。。とりあえず少しずつ実績を積んでいきたいと思っているので、今の目標はまず球技大会で優勝を目指そうと思ってます。」
「目標ちっさ!!」
「小さい言わないでください!」
「いやいや黙って見守るつもりだったけどこれは無理!気が遠くなるわよ。というか実績を積むって恋愛の中で出てくるワードじゃないし」
「うっ。確かにそうかもしれないですけど…」
「それに実績を積むって自分の中の話でしょ?全国大会とかならいざ知らず、たかだか校内の球技大会ごときで優勝してそれが何になるって言うの?」
容赦のない咲さんの言葉が心をグサッと突き刺さしてくる。ここまで言わなくてもいいのに…
「決めた。今回の球技大会で優勝したらかなちゃんをデートに誘いなさい」
「はい?デートですか??」
「そうよ。あなたのペースで話を進めていたら永遠に進まないわよ。」
「でもそんなの断られる可能性もあるんじゃ…」
「でもじゃない!そこは断られないように誘うのよ!」
咲さんの圧の前では昔から僕は無力である。それに咲さんの言っている事は全面的に正しい事は間違いない。少しずつとか日よっていた自分が悪い、とにかく覚悟を決めよう。
「分かりました、全力で頑張ります。そして奏をデートに誘ってみせます」
「そう、それでいいのよ」
そう言った時の咲さんの表情は、してやったりと満面の笑みをしていた。
「そんなわけで今回の球技大会絶対に優勝したいんだよ」
所変わって現在は悟の家にきていた。
今置かれている状況を簡単に説明して、改めて協力してもらうためだ。
「そういう事なら俺も全力で頑張るさ」
「ありがとう。そう言って貰えると助かるよ」
悟なら受けてくれると思っていたが言葉にして貰えるとやっぱり安心する。
そう思っていたら悟が話を続けてきた。
「ただ問題は二つほどあるんじゃないか?」
「問題って?」
「一つ目は球技大会自体の問題だ。いくらお遊びの大会と言っても部活組から参加するやつから勝つのはなかなか難しいだろ」
「あれ?球技大会って部活に所属している人は別競技に参加するようなってるんじゃなかったっけ?」
「それはあくまで原則であって制限されているわけじゃない。数は多いわけじゃないが現にテニスも隣のクラスで部活組が参加するペアがいたはずって野球部の連中が言っていたぞ」
全然規則を理解してなかった。。
過去に経験があるからというのがアドバンテージになると踏んでいたが、そんな甘い話は無かったということか。
あれ?というか問題は二つあるって言っていたな。
「悟?ちなみに後一つは?」
「仮に大会に優勝できたとしてお前がスマートに彼女をデートへ誘える未来が見えない」
「………」
なんて失礼なやつだ。だが否定も出来ないあたり悔しいがその通りであるかもしれない。
そっちの問題はひとまず置いておいて今後の話を続ける。
「何にせよ優勝しないと全ては始まらない。部活現役組はそこまで多くないとはいえ、しっかり練習した方がいいな」
「そうだな。俺は野球部の練習があるから全て充てる事は出来ないが、合間を見つけてテニスの練習もやっておくよ。自分で言うのもなんだが運動神経は悪くない方だからお荷物にならない程度には仕上げておく」
「忙しいなかほんとありがとう。僕は今部活やってないからジョギングとかして基礎体力をまず戻す事から始めるよ」
競技大会まではそこまで時間は長くない。ただ走るだけじゃなくて素振りや壁打ちとかラケットを使った練習も数をこなして早々に勘を取り戻しておかないと。後はテニスにエントリーしている選手の情報を集める事も必要だ。
とにかくやる内容が一気に増えて大変だけど、絶対にこなしてみせる。きっかけをつくってくれた咲さんのため、急な話にも関わらず協力してくれる悟のため、なにより自分のために絶対に優勝して奏をデートに誘ってみせる!
過去編から現代に戻ってきました。球技大会の話に続きます。




