練習
やはりこの子と光は昔会っていたんだ、会っていただけでなく当時は親密な関係であることが分かった。分かったけど
「それでも私は引くつもりは無いわ」
私の言葉に宮下さんの表情が変わる
「なんで!?どうして!?あなたは何がしたいんですか!私の方が先輩の事を笑顔に出来るのに!あなたみたいに困らせることもないのに!」
「…そうかもしれないかもね」
「じゃあ何で!?」
「これは私のただのわがままよ。今は無理かもしれないかもしれないけれど必ず彼を振り向かせる。必ず約束も思い出させる」
彼女は私の言葉に呆気に取られたようであった。
「なんなんですかそれ?わがままですか?」
「そう、わがまま。私は彼が好きだから、誰にも取られたくないから。」
目をそらさずはっきりはっきり言うと彼女は諦めたように苦笑いしながら答えた。
「その言葉本人に言ってあげたらどうですか?」
「まだ駄目よ、まだ今はね」
「うちの学校のお姫様はわがまま姫だったんですね、他の人が聞いたらショックを受けてしまいますよ」
「あら?お姫様はたいていわがままなものよ?」
「個人の見解を押し付けないでください!」
そう言ったあとなんだか可笑しくなってしまって二人で顔を見合わせて笑っていた。
「こんな幼稚な人に気を張っていたなんてバカらしくて泣けてしまいますね」
「あなたが勝手に気を張っていただけよ?私は何も変わっていないのだから」
「ほんっとに憎たらしい人ですね」
「褒め言葉として受け取っておくわ」
私の返事に彼女は苦い顔をしたがすぐに気を取り直して私に宣言してきた。
「私の事は全て話しました、あなたの気持ちも分かりました。だからこそ負けません!今はまだ…とか調子乗ってる人には負けませんから!」
彼女の宣言にちょっとびっくりしながらも私も答えた。
「私も負けない!」
この出来事は後にも先にも他の誰に話される事の無い、二人の出来事。お互いの気持ちをぶつけ合った二人だけが知っている出来事。
初めて春ちゃんと会ってしばらく立つ頃には、僕が知らないうちになにやら問題?は落ち着いていたようで平和な日常が戻って…
「せんぱーい、おはようございます。今日もいい天気ですね!」
「腕にしがみつくのに天気は関係ないでしょ?離れなさい」
平和な日常が戻って…
「なんですか嫉妬ですか?見苦しい」
「なっ!違います」
戻って…こなかった。てかこれ関係悪化してない?
「モテる男は辛いね~」
「光ばっかり羨ましいぞ」
いやいや清水さんも悟も助けてくださいよ。
そんなこんなでギリギリで教室に着き、すぐに担任が入ってきた。
「おはようー今日は朝のうちに来週にある球技大会の種目を決めてしまおうと思う、朝だけで終わらなかったら放課後もやらざるをえないから朝決めてくれ。放課後は先生もめんどい」
昨今教師に関する問題が後を絶たない中で外面だけ良くても駄目だと思ったのか、はたまた少し怒っただけだったり自分が悪く無くても責任を取らされる時代に嫌気がさしたのか、うちの担任は適当放任主義だ。これはこれで面白いから気に入ってるんだけど
「じゃー女子は雪村、男子は凪野が中心になって決めてくれ。先生は寝てるから」
前言撤回、あんなやつ別の先生に寝てるとこ見つかって死ぬほど絞られるといい。
そんな呪いをかけながら僕も仕事をすることにしよう。えっと、男女共通はバレーボールにバスケ、テニスか。それで女子だけがソフトボール、男子だけがサッカーと野球ね。
「とりあえず希望聞こうか、バランス悪ければじゃんけんか何かで調整するっていうことで。それじゃまずバレーボールの人手を挙げてー」
チーム分けは滞りなく終わった、初めからバランスが偏ることなく決まってくれたので調整をする必要が無く助かった。調整することになると絶対納得しない人が出てきて行事が始まる前から問題が起きてしまうからね。ちなみに先生は僕の呪いが効いたのか学年主任に連れていかれた、「違うんですよ、これは放任主義ってやつでね。あっそんなに引っ張らないでー!」と言いながら引きずられて行った。親ならともかく学校で、しかも放任主義で寝られてたまるものか
そんな事を考えているといつも固まっている男子のグループから質問が来た。
「これって放課後集まって練習とかしないの?」
練習か、確かにこういう行事は放課後残って練習するのが定番だったりするよね
「練習してもいいかもと言いたい所だけど、これってそこまで重要視されてる行事じゃないんだよね。体育祭も別にあるわけで部活も普通にあるわけだから練習場所が無いかな。もしやりたければ個人でってことになっちゃうね」
「なんだーつまんねー男女合同で練習しようと思ったのに」
なるほど、そういうことね。どーりで普段はこんな行事やる気じゃないのにやる気だと思ったら女子が目的なわけか。まぁよっほど親しくない限りはこういう時じゃないとなかなか放課後会えないもんね
そんな事を考えているうちに女子も終わったようで時間的にも大丈夫だったようだ、さて今日も一日頑張りますか
そして昼休みになった、最近は春ちゃんも友達との方が忙しいようで来る回数が減ってきている。少し寂しいといえば寂しいが口にしたら絶対怒られるので口にはしない、だから今日は悟と二人で食べていて話題は球技大会になった。
「そういえば悟はテニスで良かったの?ずっと野球やってたのに」
「まー今回のはお遊びみたいなものだしな、それにテニスも嫌いじゃないし」
「それならいいけど。僕も一緒に出来て楽しそうだしね、ペアとしてよろしく」
「おう!」
そう僕も参加するのはテニスだ、中学の時に部活でやっていたし久々にやってみたくなった。ちなみに今回の球技大会のテニスは進行の都合上ダブルスオンリーとなっている。
「何々凪野君たちもテニス~?」
後ろから清水さんが話しかけてきた、背後には奏もいる
「そうだよ、僕たち二人はテニス」
「奇遇だね~私たち二人もテニスだよ~」
「えっ?奏も?」
僕の言葉に奏がムッとした顔をする
「何よ?悪い?」
「あっ!違う何か意外で」
僕の言葉に清水さんが笑って答えてくれる
「実は最初は別の選んでたんだけどなかなかバランス合わなくてね~仕方なくテニスにしたのよ~」
「ちょっと七海余計な事言わないで!」
なるほど僕がやっかいだと考えていた問題は女子の方でしっかり起きていたようだ。男子の方では起きなくて本当に良かった。
「それでね凪野君経験者なんでしょ~?奏の練習に付き合ってあげてよ~」
「「え?」」
清水さんの思わぬ発言に僕と奏は顔を見合わせて固まった。
遅くなってしまい申し訳ありません。読んでいただき本当にありがとうございます。




