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私の過去


 私が先輩に会ったのは中学の初めの時です。その頃の私は今と全然違って髪も顔が隠せるくらい長くて性格もとても暗かった。本当ですよ?中学に上がった時、周りにうまく馴染めなかったんです。もともとそこまで話が得意ではなかった私は周りの子たちが話している内容に追い付いていけなかった、その子達が異国の言葉でも話しているじゃないかって思ったほどです。


 入学当初にそんな出来事があったから当然なかなか友達もつくれず、いじめられるほどではないにしてもそのクラスでの私の存在なんて無いに等しいくらいのものでした。

 うちの学校は部活が強制でしたから今考えるとそこできっかけをつくって少しづつ友達をつくっていけばよかったのかもしれません。けれど未だ初めのショックが抜けきれない時に選択の期限が来てしまって、私はほとんど活動が無いと聞いていた美術部に入部してしまったのです。


 親には友達と仲良くやっている、部活も楽しいと嘘をつき続ける毎日。部活をやっているはずの時間は家からも学校からも離れている公園でベンチに座ってボーっとして時間をつぶしてから家に帰っていました。そんな生活を続けてもう桜が散ってしまう季節になった時、いつもと変わらないと思っていた生活に変化が起きました。


 「そんな所で一人で何してるの?」


 いきなり後ろから男の人に声をかけられたのです。不審者かと思い大声を上げる準備をしました、そうしたらその人は慌てて


 「待って待って!?別に怪しい人とかじゃないよ!」

 と言ってきました。当然それを聞いたところで私が信用するわけがありません

 「不審者はみんなそう言うのです。大体こんな時間帯のこんなところで女子中学生に声をかけてくる時点で怪しさ全開なのです」

 「だからこんな時間帯にこんなところで一人じゃ危ないだろうから声をかけたんだよ!心配で!!」


 心配、その言葉で初めて後ろを振り返りました。見ると学ランを着ていて私よりは少しだけ大人っぽい中学生くらいの男の人が立っていました。


 「やっとこっちを向いてくれた」


 そう言ってホッとしたように笑う彼。それが私と先輩との出会いでした












  

 変な出会い方だったこともあってすぐには信用出来なかったのですけど少しずつ、少しずつと会っていくうちに今の学校生活を相談する仲にはなれました。そうしたら先輩、いえその時は光くんと呼んでましした。それはともかく、光くんまるで自分の事のように一生懸命悩んでくれて色々アイディアを出してくれるんですよ。その当時それが本当に嬉しくて、話しているその瞬間が楽しくて、私が光くんに惹かれていくのにそこまで時間はかかりませんでした。

 

 それからの時間はあっという間に過ぎていきました、楽しい時間は過ぎるのが早いっていうのは本当だったんですね。光くんのアドバイスを受けて髪を切ったり、話題についていけるよう努力したりなどを実践したらちょっとずつ友達も出来るようになって三年になった頃には入学当初に夢見ていた学園生活を送れるようになっていました。


 しかしそれは同時にあの公園に行く時間も減っている事を示していました。当然と言えば当然です、もともと友達がいないからあの公園に行っていたのですから友達が出来て充実した毎日が送れている以上行く必要が無くなってしまったのですから


 でも私が何とか時間を見つけて公園に行ってみても会うことは出来ませんでした、そもそも時間を決めて会っていたわけでは無かったので私が来なくなったから光くんも来なくなったのでしょう。

 連絡先も交換してないのでもう会う手段が無いと頭を抱えていたら、あることを思い出しました。会わなくなる少し前に珍しく光くんから相談を受けたのです、それは進路の相談で志望校も言っていました。


 もちろん光くんがその高校に合格したのか、そもそも受けたのかどうかも分かりません。だからこれは賭けだと考えました。私が先輩の当時の志望校に合格して光くんがいなかったらきれいさっぱり忘れる。けれどもし、万が一光くんがいたら、会えたら今までのことのお礼を言って告白しようと。


 そして私は一生懸命勉強して無事に合格することが出来ました。ですが私にとってそこは大した問題ではありません。光くんがいるのかいないのか、そればかりが気になっていました。入学式が待ち遠しくて通学路を通ってみたりして、いつもより遅くなってしまった帰りの事です。なにやら騒ぎ声も聞こえるしパトカーの音も聞こえてきました。怖くなって早く帰ろうとしたら誰かが倒れています、少し近づいてみると思わず悲鳴を上げそうになりました、なぜならその人は私がずっと会いたいと思っていた人だったからです。


 突然の事態に慌てながらもなんとか救急車を呼び一緒に病院に行ったところまでは覚えています。パニックに陥りながらも何とか病院に連れて来れたという安心感からか、それ以降の記憶は曖昧で光くんとの関係も聞かれたような気がしますが少し適当に答えてしまった気もします。

 そしてそのあと光くんが目を覚ます前に病院から帰りました。なぜかというと私が病院に着いたあとにすぐ可愛い女の子が光くんを探して駆け込んで来たからです、あぁきっと彼女さんなのかなと思った私は邪魔をしてはいけないと考えてそっといなくなりました。

 

 着ていた制服から光くんが私と同じ高校にいっていたことは分かって本来なら泣いて喜ぶところなんでしょうけど、あの女の子が頭から離れないでとても喜ぶ気にはなれません。私の賭けは勝ったはずなのに負けになってしまいました、光くんに恋人が出来る可能性もあることを完全にスルーしていたこっちの思い上がりが生んだミスでしたけど。


 しかし今さら行く高校を変えることが出来るわけがないし、高校自体のレベルは低いわけではなくてむしろ高い方なので光くんのことは忘れて高校生活を楽しむことにしました。


 そして高校にも慣れてきた頃、妙な話を聞く機会がありました。光くんが倒れていた出来事は学校近くだったこともあって新入生の中でも話題になっていたのですが私が気になったのはあれは光くんが問題を起こしたのではなく、巻き込まれたのではないかという話です。


 しかもの原因はあの時病院で見た女の子だったというのです。その子は学校でもファンクラブが出来るほどの有名人で、何やら恋愛絡みの問題で女の子の彼氏である光くんが狙われたという話でした。


 その話が本当なのか自分でも確かめたくなって色々調べることにしたのですが、こっそり休み時間に二人のいる教室を覗いてみたりしたのですが、どうも付き合っているにしては二人が仲良く見えません。

 それどころか光くんは嫌われているように見えます。それで不思議に思い、他の先輩に話を聞くと衝撃的な事をそこで聞きました。光くんとその女の子は付き合ってないというのです。


 それを聞いたとき嬉しさと同時に不安になりました。先輩たちが二人の関係を彼氏彼女の関係ではないというのを知っていて今回のような出来事が起こってしまうのです、もしかしたらこれからもっと光くんに危険が降りかかるかもしれません。そんなことを考えると不安でいっぱいです、だから私は光くんにアタックすることにしました。彼女でないと分かった以上は遠慮することは無いですもんね。それに私が彼女になれば彼への危険も間違いなく少なくなるはずだと思いました。


 教室に会いに行った時はまた何かに巻き込まれてしまったのか入院してて彼とは会えなかったので、ちゃんと光くんと会ったのは新入生歓迎会の時です。

 久々の感動の再会になるはずでしたがどうやら私のことは覚えていないみたいでした、髪型も雰囲気も当時とはまるで違うので仕方ないことかもしれません。

 

 そしてすぐに当時の事を話そうかと思いましたが、当時の事を話しても思い出してもらえなかったらとてもショックなのでもういっそ話さないことにしました。大事なのは現在の関係ですから新しくつくっていけばいいと考えたので。


 そしてこの物語は現在に至るわけです。


 雪村先輩も光くんが大事なのは分かりました、けれどはっきりしない行動が気持ちとは逆に彼を傷つけることになっていることを自覚すべきです。


 間違った事を言っていますか?雪村先輩。


 


 

 

 


 

読んでいただきありがとうございます

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