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らしさ

 「と思い立ったはいいけど悪い事をされているわけでは無いし何て言ったらいいものか」

 「お前は本当に馬鹿だなーそんなこと言ってるうちに本命に逃げられても知らないからな」


 同じ事を延々悩み続けている僕に流石に悟は呆れてしまったようで、もうお手上げという顔をして自分の席に戻ってしまった。

 でも今日はっきりと彼女に自分の気持ちを伝えて断りをいれようと改めて決心した。





 「今日来ないな彼女」

 「あぁ、今日来たら言おうと思ってたんだけど何かあったのかな」

 「お前がいつもと違うから今日は避けたとかじゃないか」


 悟が真顔でそんなことを言うものだから怖くなってしまう。


 「何か用事があっただけだろう、ともかく早く食べようぜ」

 「そうだな、今日来ないからって決心鈍らせるなよ」


 本当に心配してくれているんだな悟は…本当にありがたいよ。


 「分かってるよ、明日会った時に話すことにする」

 この調子で待っていると昼休みが終わってしまうのでとりあえず食べてしまうことにした、悟と二人で食べる昼食は久々に落ち着いて食べることが出来たが最近が賑やかだったせいか少し物足りない感じもした。今まではこれが普通だったのにこんな感情を抱くということは良くも悪くも彼女との出会いは知らず知らずのうちに僕の日常に変化を加えていたらしい。しかし、だからこそはっきりと僕の気持ちを言わないといけないと強く思った。










 「ねぇーどうしよう七海ー。最近の私の行動酷すぎるよね…」

 「私は奏が自分でそこまで分かってるのに凪野君の前でツンツンしちゃうのか理解出来ないなぁ~」

 「ぐっ、まぁそう言われても仕方ないわよね」


 昼休みになったので私はいつものように七海と一緒に学食に来ていた。そして最近の自分の行動について相談に乗ってもらおうと思ったのだが思った以上にはっきり言われてしまい何も言い返すことが出来なかった。

 そもそも何でこんな気まずくなってしまったのかと言うとやはりあの後輩の子の存在が大きい、この前の事件で少し昔の雰囲気に戻りかけていた時に突然現れたライバル。単にお礼や心配をするだけでも恥ずかしくなってしまいツンとした態度をとってしまいがちなのに目の前であの子があいつに自分の気持ちを素直に伝えてるのを見ると余計にひねくれてしまい今の悪循環を招いている。


 「そもそも私にはここまで素直に言えてるのに何で本人には言えないかな~」

 七海が心から不思議という顔で首を傾げながら私に聞いてくる。

 「そんなこと言えるわけないじゃない!七海に言うのと本人に言うのとだと重みが違うのよ言葉の重みが!」

 私が顔を真っ赤にしながら叫ぶと七海はまだ理解不能という顔をした。

 「私だったら言えるよ、だって好きな人に好きって言う事は何も恥ずかしい事じゃないじゃない?素敵なことだよ~」

 「はぁ~。私も七海みたいなマイペースと言うかのほほんとした性格になりたいわ、そうすれば少しは楽なのかしら」

 そんな事を言ったあと七海の顔を見ると何故かこわばって見えた。マズイ事を言ってしまったことはすぐに分かったので何て謝ろうか考えているうちに七海の方から話しかけられた。


 「ねぇさっき奏が言った私の性格って私らしいと思う?」

 七海が何を言ってるのかすぐには分からず戸惑ってしまったがとりあえず何とか自分なりの考えを出して答える。

 「まぁ私の主観ではあるけどそう思ったから言ったわね」

 それを聞いた七海はやはりいつもと違う雰囲気で続けてきた。

 「これはあくまで私の考えなんだけどね普段みんなが何気なく言う『~するとか、~言うなんて○○さんらしいよね』とかって必ずしもあってるとは限らないの、自分の性格なんて本当のところ自分にしか分らないし『~らしい』って決めつけないでほしいって結構思ったりするのよ」


 いつもとは違う、いや今の話だとこう思ってしまうのが決めつけになっていまうのか。とにかく私が知らないの雰囲気の七海に私は圧倒されてしまった。


 「えっと…」

 「なんちゃって~結局のところ友達から自分では気づかない性格の一部とかを教えてもらうこともあるわけだし性格とか『らしい』とか誰も分からないのかもね~」

 だが雰囲気が違ったのはほんの短い時間の事ですぐに私の知っている七海のテンションで話しかけてきた。

 私はこの件には深追いせずいつも通り昼食を楽しむことに決めた。何となく軽く聞いていいことでは無いと悟ったからだ。そこからはいつもと変わらず過ごして教室に戻ることになると思っていたが今日は違った。


 「あ、ねぇ奏。こっちに誰か向かって来てるよ~」

 「ん?誰かな?綾乃?美咲?」

 同じクラスの友達の名前を挙げていくが七海の表情を見る限りどれも違うようだ。

 それじゃあ誰?と聞こうとした時不意に声をかけられた。


 「こんにちは雪村先輩、ご一緒してもよろしいでしょうか?」


 そこに立っていたのは私の今最も会いたくない人物で同時に私の恋敵であった。


 

 



読んでいただきありがとうございます

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