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優柔不断

 「今日から本当に昼飯食べに来ると思う?」

 「じゃ賭けるか?俺は必ず来るに一票」

 「僕も来るに一票」

 「それじゃ賭けにならねぇじゃねーか!」

 「しょうがないだろう、聞いてはみたものの多分来ると思ってたんだから」


 そんなことを話しているとクラスがいつもより少し騒がしくなった。


 「どうやら噂をしてたら来たみたいだぜ」

 「マジか…」


 クラスメートから注目を浴びながら僕らの席に向かってくる女の子がいた。


 「こんにちは先輩!」

 「こんにちは、相変わらず元気だね」

 「そりゃせっかく先輩とご飯を一緒に出来るんですもん、元気にもなりますよ!」


 ちなみにこんな会話をしてる時にもクラスメートの視線が突き刺さる。可愛いとかどっちの彼女なんだとかのこそこそ話が耳に入ってくる、どうせ小さい声で話すならこっちに聞こえないようにしてくれよと内心で思った。

 あと流石に二人で食べるのはきつかったので悟にも同伴してもらっている、あいつからしたらいい迷惑だろうけど後で何かおごることを条件に我慢してもらっている。


 「あのー春ちゃん?」

 「なんでしょう先輩?」

 「ご飯一緒にって毎日食べるわけじゃないよね?」

 「いやご一緒されてもらう予定ですけど」

 「それだと友達関係が大変じゃないかな、入学したてでこれからの時間が大事になると思うんだけど」

 「それはご心配なく。友達からは頑張ってくるように言われてますから!」

 「そっかぁ…」


 何とか毎日は避けようとしたんだけどそれは厳しいみたいだ、てか友達も容認とかもう逃げようがないんだけど…


 「諦めろ、世の中諦めも肝心だ」


 考えていることが顔に出ていたようで悟が慰めているのか微妙な言葉をかけてきた。

 そしてご飯を食べ終わったので三人で雑談に入る。


 「そういえば今日はあの女の先輩はいないんですか?」

 「あー奏の事かな?あいつは友達と学食行ってるよ」

 「そうなんですか、少しお話ししてみたかったな」

 「いや、当分はやめてもらっていい?」

 「なんでですか?」

 「まぁ色々あるんだよ、いいかな?」

 「先輩が言うなら、分かりました!」

 「良かった、これ以上機嫌悪くなられても困るし…」

 「何か言いましたか先輩?」

 「いや、何でもないよ」

 「そうですか、じゃちょっと学校のことで聞きたいんですけど」


 「これ本当に俺ここにいる意味ねーな」


 悟の呟きは誰に聞かれることなく消えていった。








 「これでとりあえず質問には答えられたと思うんだけど、どう?」

 「はい、ありがとうございました!」

 「もうそろそろチャイム鳴りそうだしクラスに戻った方がいいよ」

 「今日はありがとうございました、また明日です!!」


 お礼を言って春ちゃんは元気にクラスからいなくなった、本当に台風みたいな子だよ。


 「やっといなくなったか」

 「あ、ありがとうね悟」

 「ホントだよ、あいつがお前とばっかり話すから一緒にいるの気まずいわ!」

 「でも頼むから二人にはしないでくれよ」

 「これが毎日だと流石に俺でもキツイものがあるぞ」

 「そこをなんとか!」

 「しょうがないから今月は様子見るけど本当に来月も続きそうなら適当に理由付けて断ったらどうだ?」

 「やっぱそれしかないよな」

 「当然だろう、中途半端な優しさは後に人を傷つけることだってあるんだ。今の感じだとあの子のために優しくしているというより自分のために優しくしているって感じだからな。そこんとこ勘違いするなよ」

 「分かってる、でもやけに具体的なアドバイスだな。何か自分で体験したみたいだよ」

 「えっ!?まぁそこはいいじゃないか!」

 「うーん。気になるんだけど」

 「そこはまた今度な!今は自分のことだけ考えとけって!」

 「それもそうか、また後でゆっくり聞かせてもらうことにするよ」

 「そうしてくれ、というかまだ不機嫌なんだな」

 「何のことだ?」

 「後ろ後ろ」


 後ろを振り向くと不機嫌オーラ全開の奏が立っていた、ヤバい見られていたのか…


 「良かったですね、可愛い後輩とご飯ご一緒出来て」


 ニコニコと笑顔で話しかけてくるのが怖すぎる。


 「いや、そんなことないよ!」

 「そうは見えませんでしたけどね、では私はこれで」

 「えっ?もう?」


 僕の言葉を聞き終わる前に席に帰ってしまった。これは本当に迅速に対応しないと取り返しがつかない状況になりそう。


 「もう取り返しもつかない展開になりつつあるんじゃないの~?」

 「わっ清水さん!僕声に出してた!?」

 「なんとなく表情で分かったよ~」


 表情で分かるとか怖すぎるよ、それよりやっぱ状況はひどくなってるよなぁ。


 「ようは優柔不断なんだよね、じゃ私も席に戻るね~」

 「あ、はい…」


 優柔不断か、その通りだけど実際言われるとグサッとくるな。


 「まっ事実なんだから落ち込んでる暇があったら今の現状を改善出来るよう努力しろよ」

 「ありがとう悟」


 ん?今の何かおかしくない?


 「ねえ悟、今僕声に出してたっけ?」

 「いや、表情で分かった」

 「マジすか」


 清水さんといい悟といい表情だけで内容読み取りすぎでしょ、ってそんなこと考えてる暇は無かった。誤解を、いやこの状況だと誤解にならないかもだけどともかく離れてしまった奏との距離をまた縮められるよう努力しよう。


 「その通りだ!」

 「だから勝手に心を読むな悟!!」



 


 

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