新入生歓迎会
「退院おめでとう!」
「ありがとう悟」
「あれだけやられて一週間なんだから結構体丈夫だよな」
「だからって出来れば二度と体験したくないけどね」
「そりゃそうだ」
僕はあの後無事に退院して今日学校に登校することが出来た。問題も片付いてこれからは落ち着いた生活が送れるだろう、そう思うと少しは学校に行くのも楽しくなりそうだ。
「やぁ退院おめでとう」
「ありがとう大地、何か久しぶりだね」
「うん、最近は忙しくてね。体調はもう大丈夫なのか?」
「おかげさまでもう大丈夫そうだよ」
「それは良かった、これからは光の手も借りたいほど忙しくなってくるからね」
「何かあったっけ?」
「お前は委員会に所属していることをすっかり忘れているな?そろそろ新入生歓迎会なんだよ。準備も終盤に差し掛かっているし出来れば今日から合流してもらいたい」
「そんなこともあったな…分かった、今日から合流するよ」
「よし、じゃまた放課後に」
要件を伝えると大地は自分の教室に帰って行った。
「退院してすぐに仕事とは、大変ですなぁ副委員長は」
「そう思うなら手伝ってくれてもいいぞ」
「俺は部活があるからな。今度は自分で頑張れ」
「そうだな」
二人で話をしていると奏と清水さんが教室に入ってきた。こちらをちらっと見ると片方は嬉しそうに、もう片方は嫌々という顔で近づいてきた。
「おー退院したんだ、おめでとう~」
「ありがとうね清水さん」
「いえいえ~ほら奏も何か言いなよ」
「えっ!えーっととりあえず退院おめでとう」
「奏もありがとう」
「べっ、別に当たり前の事を言っただけだから!」
顔を赤くする奏に清水さんがからかって奏が怒り出す光景を見て、いつもの生活に戻って来たことを感じていたら何か思い出したような顔をして奏が話しかけてきた。
「そういえば今新入生歓迎会の準備が忙しくて手伝ってほしいって話聞いてる?」
「うん、さっき大地に聞いたよ」
「準備自体はほとんど終わってるんだけど細かい雑用が残ってるのよ」
「分かった。てか歓迎会っていつやるんだっけ?」
「そんな事も知らなかったの?もうすぐ、明後日よ」
「明後日なの!?本当に僕準備に参加してないんだな」
「場合が場合なんだからそこは気にしなくてもいいのよ、今日頑張りなさい」
「そうだね、頑張るよ」
今日も一日が終わり放課後になって僕は生徒会長や他のみんなに謝ってから頑張って残りの雑用を手伝った。みんなは全てを知っているわけではなさそうだったが、僕が入院していたことや鈴木がいなくなっていることから何となくは分かっているようで優しく接してもらえて嬉しかった。
実際にやった作業は話に聞いてた通り残っていたのは雑用だけだったのでそこまで辛いものでは無かった。そして歓迎会の流れを聞いたら新入生と在校生がレクリエーションを行ってそれなりに打ち解けた後に各自話しやすい先輩に学校で気になることや心配事を相談する時間を設けることになっているらしい。
「そうなると二年生は全員参加なんですか?」
少し疑問に思った事を生徒会長に聞いてみた。
「原則そうなっている、だがこの準備に参加したメンバーはレクリエーションは免除になっているんだ。もちろん参加したいものは参加で構わないが負担が大きくなってしまうのでな」
「なるほど、確かにそうかもしれませんね」
「だろう!だから君も相談会からの参加で構わない」
「えっ?でも僕はそんなに準備に参加してないし…」
「他に大変なことがあったんだろう?サボりでなく正当な休憩時間だ、ゆっくりしてから参加するといい。私がいいと言っているんだ、誰にも文句は言わせないさ」
「会長、ありがとうございます」
「このくらいどうってことないさ、私と大地は司会だから出ずっぱりだけどな!」
会長は笑っていたが大地は死にそうな顔して力なく手を振るのが精いっぱいみたいだ、大地であの調子なんだから会長はやっぱり只者ではないらしい。
日付が変わって歓迎会当日。僕は会長の言葉に甘えて相談会からの参加にしたのでいつもよりゆっくりめの登校だ、そしていつもよりゆっくり学校に着いたときに見覚えのある後ろ姿を見つけて僕は駆け寄る。
「おはよう奏」
「おはよう、そっちもゆっくりだったのね」
「うん、会長が気を使ってくれたから」
「ま、いいんじゃないの?」
「そういえば体育館行ったらどこ座る?今から行くと中途半端なとこになりそうだよね」
「それなんだけど七海達が席取っといてくれてるらしいわ」
「だったら安心だ」
そんな会話をしながら体育館に入ると休み時間に入っているようで中は人でごちゃごちゃしていたが、悟が大きく手を振ってくれたのでスムーズに席に着くことが出来た。
「どうだったレクリエーションは?」
「どうもこうも特に問題は起きなかったし、交流も出来たし上々ってとこじゃないか」
「なら良かった、それでこれから相談会か」
「今ので話をしやすくなってるし全く相談が無いってことはなさそうだぜ」
「へぇ、じゃ悟がどれだけ人望が集まったかはこれから相談に来る人数で分かるんだな」
「ちょっとそういうの止めてくれよ!清水さんもいたんだから二人の人望だろ!?」
「おや?自信が無いのかね~?」
「清水さんはこっち側でしょ!勝手にそっち側行かないで!!」
「あら?そろそろ始まるみたいよ」
「何!?誰か一人は来てくれよー…」
悟がぶつぶつ言っているうちに相談会が始まったようだ。新入生がバラバラに座っている先輩の所に行って相談するという一見なかなか相談しに行きにくいように見えるが、先ほどのレクリエーションで知り合いが出来た人も多いのか新入生達が固まりながらも動き始めた。
「ほら始まったぞ悟」
「いや、流石にすぐは…あっと誰か来たぞ」
「マジか!?」
こっちの席に近づいて来るのは複数で固まって動いている新入生が多い中で珍しく一人で来た小さな女の子だった。
「いや、女の子だから清水さんかな?」
「うーん、私ではないけどどこかで見たような~」
「もしかしてこの前の放課後に教室に来た子かしら?」
「それだ!!」
何やら三人で盛り上がっているが僕が休んでいる時の出来事だったらしく何の事かさっぱり分からない。とりあえず相談に来てくれた子を孤立させるわけにはいかないので話しかけることにした。
「えっと相談しに来てくれたんだよね?どんなことかな?」
「あなたに会いにきたの。凪野光先輩」
「えっ?」
そう言って無邪気に笑う彼女に僕は呆気に取られてしまい、他に言葉が出てこなかった。
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