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作戦

 僕が暴行を受けてからそろそろ一ヶ月が過ぎようとした時に清水さんから少し気になる相談を受けた。


「何か鈴木君が最近変なんだよね~」

「いや、変なのは前からでしょ」

「それはそうなんだけど。前に増してっていうのかな、焦りみたいのがあるんだ~」

「焦り?」

「そ~前なら私がいるから強引に連れていこうとすることはほとんど無かったんだけど、最近はそんな感じが多くて遠山君達によく助けてもらってるよ」

「それも変な話だな、今までは余裕綽々だったのに」

「でしょ~」

「分かった、ありがとう清水さん」

「どーいたしまして」


 清水さんと別れた後、悟と大地と呼んでこの事を相談していた。


「最近の鈴木が焦っているって話本当か?」

「あぁ、俺も大地も呼ばれる回数が増えてきてたのは事実だ」

「それはタイムリミットでもあるって事なのかな、光はどう思う?」

「僕は大地と同意見だ。理由は分からないが焦らざるを得ない状況になったと思っている」

「なるほどなー二人は同意見ってわけか。まぁ俺も同じだけどな」

「それで今日集まってもらったのは二人に相談があったからだ」

「何か思い付いたのか?」

「あぁ、でもこの作戦はちょっと安全性に欠けるのが欠点でな」

「と言うと雪村さんも絡んでくるんだね」

「その通り、だから僕はもちろん二人にも全力で奏を守ってもらいたいんだけどお願い出来るかな?」

「「当たり前!」」

「本当にありがとう、もしもの時だからそんな事が起こらないのが一番いいんだけどね」


 そして一呼吸置いてから自分の正しいのかまだ分からない作戦を二人に話すことにした。


「鈴木は焦っているって話だろ?だから今あえて奏を一人にする。もちろんこっそり様子は見たままだけど」

「言い方はあれだけど雪村さんを囮に使うわけか」

「その通り、その日はうちの親が奏に用事を頼んでいる日だから誘われても行けない日なんだ。あいつはこれがラストチャンスだと思って必ず奏に寄ってくる、それで無理だと分かってもすぐには引き下がらないだろう」

「そこで俺達が駆けつけるわけか」

「そうだ、でも前の件があるし危険が無いわけじゃないから迷っていたんだよ」

「でもやるしか無いよな、待ってたぜこんな展開。逆になんでここまでやらなかったのか不思議なくらいだ」

「こらこら、これは遊びじゃないんだぞ。光も雪村さんが大切だからギリギリまで残しておいた作戦なんだから」

「そんなわけでこの作戦でいきたいんだが二人の意見は?」

「俺は文句無しだ、何があっても全員絶対守ってやるよ」

「俺も悟と同じで賛成でいい。手数は多い方がいいだろうし」

「ありがとう二人共。じゃこの作戦は明後日に実行することにするよ」


 次の日この作戦を行う事を清水さんにも伝え、無事了承してもらった。


「これで良くも悪くも状況は変わってくる、絶対に成功させるから」

「うん、分かった。でも気を付けてね。私は奏だけじゃなくて、皆も心配なんだから~」

「うん、ありがとう」




 作戦当日になり、各自が役割をこなしていく。清水さんは予定があると言って奏を一人にした。そして用事を頼まれている奏もそろそろ学校から帰る頃だろう。


「きたっ!」


 思惑通りに鈴木が奏に近付いてきた。奏は用事があるから今日は無理な事を伝えているようだが全く鈴木が引き下がらない、そして少しだけ時間を取ることにしたらしく学校近くの喫茶店に寄っていくようだ。


「ここまでは光の作戦通りの展開だな」

「そうだな、でもここからは展開が読めない。もしもの時は頼むぞ悟」

「おうよ!」

「俺も頼ってくれよ」

「分かってる、頼りにしてるよ大地」


 僕たちもその喫茶店に入り、奏達から見にくいがこっちからは見えやすい丁度いい席を見つけてそこに座った。話の内容までは分からないが、あまり良い雰囲気とはお世辞にも言えない。そもそも用事がある奏を無理矢理引き留めてる時点で雰囲気は最悪なんだが。


「あいつら何か口論になりそうな感じだな」

「人前では外面がいい奏をイラつかせるくらいだ、よっぽどしつこいんだろう」

「えっ?普段の雪村さんって猫被ってるの?」

「今の問題はそこじゃないだろう。集中して見ておかないと後で後悔することになるぞ」

「おっと雪村さんが立ち上がった」

「そろそろ準備しておくか?」

「そうだね、これ以上奏を不安にさせたくないし」


 そんな時、奏の苛立ちが最高潮に達したのか声のボリュームが大きくなってこっちにまで聞こえてきた。


「だから今日は用事があるんです!さっきから下らない話ばっかりして、もう帰らせてもらいます!」

「そんな、真面目に話しているんだよ。もうちょっとだけ」

「いやっ!離して!」




「マジでヤバくねーか?早く止めに行こうぜ!」

「そうだな、行こう!」


 僕たちが奏のところに向かおうとした時、鈴木が何か呟き始めているのが見えた。


「僕は悪くない僕は悪くない。言うことを聞かないこいつが悪いんだ!おい、お前ら!この女捕まえて早く車に乗せろ!」


 鈴木が叫ぶと、どこから出てきたのかヤバそうな見た目をした連中がぞろぞろ出てきた。ここまでくると店側としても放置は出来ないのか店員が出てきて話をしようとするが、あっという間にボコボコにされてしまった。それで店内はパニックになり、一斉に逃げていく。

 そんな中で僕は奏の近くに見覚えのあるグループを見つけた。


「前に僕を殴って病院送りにしたときのやつらが混じってる」

「本当か!?それならそいつらが鈴木と絡んでる動かぬ証拠になるぜ、絶対逃がすなよ!」

「えっ?僕が相手するの!?」

「どのみち相手の人数が多くて俺と大地はそっちで手がいっぱいになるからな」

「雪村さんを助けたいんだろう?」

「せっかくのリベンジマッチだぜ、男見せてこい!」

「分かったよ!負けても時間は稼ぐくらいは粘る!」

「そのマイナス思考、光らしくていいね!」

「冷静に分析しただけだよ、早く奏を助けに行こう!」



 その言葉を合図に僕達は逃げる客とは逆方向に向かって走り出した。大切な人を守るために。




読んでいただきありがとうございます。何か打ちきり漫画の最終回みたいになりました笑

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