どういうことだ?
「そんで啖呵を切ったはいいけどお前は何も考えていなかったと」
「はい…」
「人に殴るなとか何とか言っといて大して俺とレベルが変わんねーな!口だけじゃねーかよ!!」
「でも悔しかっただろ!少しでも化けの皮を剥いでやりたかったんだよ」
「まぁ確かにそこは同感だけどよ。でもどうするか、結局振り出しだぜ」
僕が今朝校門で珍しく相手に喧嘩を売ったことで悟は何かあると思っていたらしい、思い返せば僕が言ってから妙に静かだったから少しおかしいと思っていたがそういうことだったのか。しかし残念ながら何の策も無いただのはったりであることが今判明して二人で頭を抱えているところである。
「けど今朝の様子を見てもあいつが関係しているのは間違いないんだよな」
「それは間違いない、けど自分では何もしていない。これが面倒なんだよ、直接被害を受けてある程度事情を知っている僕たちならともかく見ず知らずの人達に話したところで信じて貰えるわけ無いだろ」
「それもそーか」
「とりあえずじっくりいこう。幸か不幸か僕とあいつは委員会で顔を会わせる事が多い、そこで様子を探るさ」
今は何を話しても無駄でこのまま学校にいても仕方がないということで帰ることになった。昨日の今日で同じ事はしてこないだろうと思って、一緒に帰ると言ってくれた悟の誘いを断った。学校を出て悟と別れ家に向かおうとした時、急に背後に気配を感じて慌てて振り返る。
「何よ、びっくりした顔して。こんなことなら遠野君に付き添って貰えば良かったんじゃない?」
一瞬昨日の出来事を思いだし焦ったが、背後に立っていたのは僕の幼なじみだった。
「奏か。背後に立つのは止めてくれ、びっくりする。てか話聞いてたのか?」
「遠野君が一緒に帰ろうかってところからね。あんたがなかなか学校から出てこないんだもん、こんな時間まで何してたのよ」
「えっと少し悟と話をしてたんだよ」
「男二人でこんな時間まで?」
奏が何か不審そうな顔してくるので話を無理矢理変える。
「まぁそこらへんはいいじゃないか。それより今の言い方だと僕を待っていてくれたみたいだね、ありがとう」
「なっ!?待ってなんかいないわよ!用事があって遅くなったらあんたを見かけたから声かけただけ!昨日みたいな事になったら気の毒だから当分はまた一緒に帰ってあげるわ」
「はいはい。ありがとう」
「もーだから違うんだから!」
僕は笑うと奏はむきになって怒る。本当に彼女は素直じゃないから、でもこんな顔をするのは僕以外だと彼女の両親くらいだから少し嬉しい。そういえば昨日救急車呼んでくれたのは奏だと言っていたな、ちゃんとお礼言っておかないとな。
「そういえば昨日はありがとう、救急車呼んでくれたんだろ?」
「え?私は呼んでないわよ」
「は?だってお前僕が意識が朦朧としてるときに駆けつけてくれたよな?」
「そうそう、昨日犬の散歩してるときに見つけた時は心臓止まるかと思ったわ。それで私その時携帯持ってなかったし、急いで家に帰って通報したのよ。そしたらあんたがいなくなってるから二度びっくり、近所の人に聞いたらもう運ばれたって言うから」
「どういうことだ?医者は通報してくれた幼なじみに感謝するんだなとか言ってたけどお前だとタイミング合わないよな」
「近所の人が通報してくれたのなら幼なじみなんて出てこないわよね」
「だよなー」
「でも運ばれたって知ってすぐに病院行ったからあっちで勘違いしたのかもね、幼なじみだから会わせて下さいって叫んだような気もするし」
「なるほど、そこまで心配してくれるとはちょっと照れるな」
「う、う、うるさい!忘れなさい!」
「あ、ちょっと痛い痛い。まだ一応怪我人なんだから優しくしてよ」
「うるさいうるさい!あ、ほら家着いたわよ、また明日ね!」
少しちゃかし過ぎちゃったかな、でも心配してくれたのは素直に嬉しかった。
それにしても気になったのは通報してくれたが奏じゃなかったって事だ。僕は奏以外見ていなかったからてっきり彼女だと思いこんでいたけど周りに誰かいたのか?でも僕の幼なじみを名乗る意味がいまいち分かんないんだよな~でも今は鈴木の方が最優先か、そっちの問題が片付いてからじっくり考えよう。
「ただいま~」
僕は幼なじみという名のお姫様に守られながら帰るというヘタレっぷりを発揮しながらも一日ぶりに無事我が家に着くことが出来た。
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