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襲来


「とりあえずまとめるとこういう事なんだよ、お願い出来るかな清水さん?」

「うん、事情は何となく分かってたし了解だよ~」


 僕たちはあの後近くのファミレスに場所を移動して例の件の話をした。清水さんも薄々は分かっていたようで快く承諾してもらえた。


「清水さんに協力してもらえて本当に助かるよ」

「何言ってるの、友達が困ってるんだもん。それは助け合うのが同然でしょ~」

「ありがとう清水さん」

「それにしても愛されてるな~奏は」

「止めてよ、そんなんじゃ無いから」

「いや~変な意地を張っちゃダメだよ、あとで後悔するのは自分なんだからさ~」

「…確かに幼なじみだし、僕にとって特別な存在ではあるよ」

「うんうん、それでいいんだよ~奏にも聞かせてあげたいくらいだ」

「ちょっと!?絶対言わないでよ!」

「もちろん言わないから大丈夫~」

「良かったー」

「…でも愛してくれる人がいて奏は羨ましい」

「ん?清水さん何か言った?」

「何でも無いよ~それよりこれからどうしていくか考えようか」

「そうだね」



 事情をある程度理解しているだけあって話はスムーズに進んだ。清水さんには普段は出来る限り奏と一緒にいてもらうことにして鈴木が強引に二人きりになろうとした時は僕か悟、または大地の誰かを呼ぶという形にすることになった。


「うーん、今考えられるのはこんなとこかな」

「そうだね~他に何かあったらすぐ連絡するよ~」

「うん、本当にありがとう」

「いやいや、どういたしまして~」

「後は鈴木が奏に何であそこまで執着するのかが分かれば多少は対策が立てられるんだけど」

「やっぱ好きなんじゃないの~一年の初めの頃告白してるわけだし」

「やっぱ恋愛関連なのか。ってちょっと待って、今何て言った!?」

「やっぱ好きなんじゃないの~って」

「その後!」

「一年の始めに告白してるんだよ、鈴木くんは奏に~」

「本当に!?それにしては奏は気づいてない感じだったけど」

「それはしょうがないかも~告白したとき相手が名前言う前にフッちゃったわけだし、見た目が今と全然違うもん」

「今と違う?」

「うん、今は髪も染めてちょいチャラくなったけど昔は眼鏡かけて短めの黒髪で真面目な感じだったよ~」

「そうだったのか」


 じゃあ鈴木は一度振られたけど容姿を変えてまで奏にまた近づこうとしてるってことか。ますます状況が分かんなくなってきたぞ、単純に諦めきれないってだけなのか。


「この事は知らなかったよ、貴重な情報ありがとうね、今日はもう遅くなっちゃうから解散にしようか」

「いやこちらこそ力になれれば良かったよ~また明日学校で」


 清水さんを駅まで送ったあと僕は駅のベンチで一人で今までの情報をまとめていた。そして気がついたら辺りがすっかり暗くなっていたので急いで家に帰ることにした。

 家に帰る途中で、明らかに一般とは違うガラの悪い人達が歩いていた。どこかでケンカでもしていたんだろうかと思いながら絡まれるのは怖いので回り道をしようと思ったとき。


「お前凪野ってやつか?」


 何故か急に絡まれてしまった、しかも名前知ってるってどういうことだよ。とりあえずごまかさないと。


「違いますよ、人違いじゃないですかね。急いでますんで僕はこれで」

「ちょっと待てよ!話に聞いてる見た目とお前が一緒なんだよ。嘘つくな」


 話に聞いてるって何だ?誰に?でもそんな事を考えてる場合じゃない、逃げるしか無いと思い僕は走り出した。


「おい、待て!お前らあいつ捕まえろ!」

「でもあいつ速いっすよ、このままじゃ逃げられちまう」


 そのまま逃げ切れると思って曲がり角を曲がったとこでいきなり視界が揺らぐ。少ししてから自分が殴られたことを理解した。


「ナイスだぜ!周りを囲んでおいて正解だったな」


 そこから先はあまり正確には覚えていない。周りを囲まれて、ひたすら殴られて蹴られ続けた。



「いや~こいつ弱いな。こんなやつボコるだけであんだけ金貰えるんだからいいバイトだよな」

「確かにこれは楽でいいな、しかも多分こいつだけじゃないだろ。もう少し儲けられそうだぜ」

「あのガキに最初話しかけてきたときは何かと思ったがこれは当たりだ」


 こいつらの言い回しだと誰かに頼まれたみたいな感じだな、てかそろそろ本当にヤバい。意識が…



「おい、何かパトカーこっちに来てないか!?」

「やべぇ、逃げろ!」


 急にやつらが逃げ始めてどんどんいなくなっていく、助かった?でも何で。


「ちょっと大丈夫なの光!?」

「…誰?」

「私よ、奏!」

「家の近くで騒がしいと思ったらケンカだし、誰かと思ったら光だから慌てて110番したのよ!」

「そっか、ありが…」

「光!?しっかりして!」




 薄れゆく意識の中で彼女からの呼ばれ方が昔と同じだったことにやっと気が付くことが出来たが、そこで僕の意識は途切れた。










読んでいただきありがとうございます。

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