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夜の12色の虹②

そう、全て起こりうる最悪の事柄の中で

あの虹は咲いたのだった。そして全てが

光に包まれ、やがては世界が姿を変えた...

                   絵本、幸せの虹より。



すっかり時間を忘れてしまい、時計を見た絵美理は顔を真っ青にしながら素っとん狂な声を出した。


「ひょえ~!!もう夜の六時?!」


「うわ、ホントだ...どうすんの?門限まで間に合う?たしかここからは30分かかるんじゃね?」


「間に合わないよ!どうしよう...母さんに怒られる...おやつ抜きにされるよぅ!!」


しかたがない。そう言って鈴は携帯電話を取り出し、絵美理の家へとかけて「今日、泊り込みで勉強会するから絵美理は帰りません」という言い訳をご両親にいった。


「さすが親友!恩にきるよ!でも~、嘘はいかんよ君ぃ!!」


「どっちだ。あ、それと嘘じゃないから。」


「え。」


「受験勉強。あんた絶対サボってるだろうから。」


「ギク!あ、あはは!やだな~!そんな訳ないでしょ?!」


モロばれ。結局夜の11時まで勉強した二人だったが、窓から外を眺めておかしいことに気がつく


「あれ?何だアレは?」


「ん~?ホントだ。あの小さいのなんだろ?人...かな?小人??」


よく見てみると、あの小さいのは今朝見たチッコイおっさんではないか。これには鈴も絵美理も驚いた。しばらく見張っているとドンドン人気のない所へいく。その先は、さすがに窓際じゃ見られない。二人は家を出て、そいつの後をコッソリつけることにした。

光る街灯のともし火が届くか届かないかの街中で、そのチッコイおっさんはピタリと動きを止め、後を着けている二人のほうを見ながら小声で、しかしハッキリと言った


「お嬢さん方、私には色々やる事があるのだが、私に何か用かね?」


その言葉を聞いて二人は影から姿を現した。


「ねぇ、あんたって、今日の朝に...」


「おや、あの時のお嬢さんか。」


と、その時、目を輝かせながら絵美理は大声でワクワクしながら話に割り込んできた


「ね、ね!貴方はもしかして絵本に出てるシュールオジサンですか?!」


「エミ?突然興奮してどうしたの?」


「おやおや!貴女はもしや、幸せの虹と言う絵本を知っておいでで?これは光栄だ。知っての通り私の名前はシュール。久々に幸せの虹が現れるので、力を分けてもらうためにハルバル、チコット村から来たのだよ。私以外にも色々なモノたちがここへ来ていてね。人間にばれないようにそこらへんに潜んでるはずさ。」


「じゃあ、今朝見た奴等、全員が...」


「へ~。大変なんだねぇ~。」


おいおい、なんか会話が成立してるぞ。


「って、ちょっと待った!!なんで幸せの虹に力を分けてもらうんだよ?てゆーか、あんたら一体何者?」


「この世界に共存してる者です。アナタ方が今まで気ずかないでいただけですぞ?ある時突然、見え始めるものです。世界とは、必ずしも同じ形と言う訳ではありません。日々姿を変えます。私にとってもアナタ方の生きる世界は奇妙であり、とても興味深い。」


「だから読んでたほうがよかったじゃん絵本。あのね、この世界の中の世界たちに生きる人達(不思議な生物も含む)は、幸せの虹がこの私たちの世界に現れるようになってから、争いや、人の妬み、恨み、全て浄化してくれちゃって、しかも、生きる力や和ませる力もあって、その日から彼らの戦争はパッタリと無くなっちゃたんだよ。」


「何年に一度、こうして現れる虹の力を借りるために我々は来るのですよ。町によっては場所も時間帯もばらばらですので、現れる直前まで時間をつぶすのが当たり前でしてね。」


「ああ、なるほど、その時間つぶしがこのあたし達の世界の観光だと」


「はい。」


一通り話し終えた三人はそのまま幸せの虹が現れるであろう場所へ移動する事となった。絵美理はもう目をキラキラさせながら鼻歌まで歌っている。鈴はまだ夢のような気分だった。信じたくないけど、今目の前で繰り広げられている摩訶不思議を見たら信じるしかない。


道中出会う訳の分からんものや、可愛いものを見つめながら、結構自分たちが運のいい奴だと絵美理は言い始めた。なんのこっちゃ。と鈴が言うと真面目に語り出す


「だってさ、そうでしょ?何人の人がこんなイベント見つけられる??何人の人がこう言う人達と喋ったり、姿を見たりできる???限られた人間だけだよきっと!!!」


「そう...だよな...仮に見つけたといっても、なーんだ。とか、目の錯覚だとか言って無視するもんな。」


そう、一体何が切っ掛けで見え始めるのかはまったく解らないが、忙しい日々を過ごす人は中々見えないのである。見えたと思ってもすぐに自分のいいように解釈して忘れてしまう。


「着きましたぞ。」


そう言ってシュールは足を止めた。他の皆もだ。辺りはすっかり暗闇で、蛍っぽい光が当たり一面にフワフワ浮いている。まさにこの世の風景とは思えないほどである。


「この現象が、虹が出る直前の知らせです。きれいでしょう?」


「うん。すっごいきれ~い!!」


「ああ。なかなかいいな。きて良かった。」


少しして、フワフワした物がいっせいに空へ集まり始めた。辺りは歓声でいっぱいになっている。そんな中、一気にあたり一面光に包まれたかと思ったら次々と空にデカイ太い色が着いている線が引かれていく。その一本一本が色とりどりの光で覆われていて―――...


「綺麗すぎだよぅ...」


「凄すぎだよ...なにこれ...」


辺りはその虹が出てきただけで和やかなムード。ココロが洗われるようで、徐々に体が軽くなっていった。


「これが、夜の12色の虹です。これで解ったでしょう?何故私たちが来たがるのか...」


二人とも言葉を発しないでコクリとうなずいた。


「あわよくば、この出来事は誰にも話さないでもらえると、ありがたいのだが...」


「ん~、話そうとしたってどうせ信じないだろうしな...皆周りが見えないほどに働いたり勉強したりしてるし...」


「話してなにか都合の悪い事があんの?」


「人間の皆様の中には、いいものを悪用しようとする者達がいるので...」


「...そう、だよな...」


「ワリとめんどくさいよね。人間ってさ~。」


「どうでしょう?約束していただけますかな?」


二人ともばらす気はまったくなかった。なので


「「いいとも。約束だ(よ)!」」


そうして、仲良く皆してその虹を拝めつずけ、だんだんと意識が遠のいていった。目が覚めればそこは鈴の部屋で...


「え?夢??」


隣ではまだ絵美理が寝てたので思いっきりたたき起こした。二人してやっぱり今までの事は夢だったのかと言い合うが、何だか納得が出来ずにいると、窓を小さくノックする音が聞こえてきた。


「あ!あんたは!!」


「お早うございます。シュールです。実はおふた方のお名前を聞くのをすっかり忘れていまして。」


「そうか~、それで戻ってきたんだねぇ~。うん、私はね、加藤絵美理って言うの!」


「あたしが志村鈴。」


名前を聞き、シュールは姿がどんどんと消えていき


「また貴方達とお会い出来る日を心より楽しみにしています。」


そうポツリと言い残し、風と共に去っていった。


「「夢じゃなかった!!」」


と大喜びする二人がいたとか、いなかったとか。


終わり。


次は絵本のストーリーです!!次で完結します!!

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