4-1.「本日は学習日和」
私だって学習する。
生きとし生けるものの大半には脳みそなんてものがついているのだから。
ご多分に漏れず、勿論、私にも付いている。
だから、私はそれを有効利用して、魔王様のお心に適うようにと日夜考えているわけだ。
「・・・で、これか?」
腕組みをした魔王様は私を見下ろした。
「これです」
私は重々しい頷きを返す。
「よく、考えに考えを重ねた結果か?」
「勿論です、魔王様」
私は自信に満ち溢れた笑みで魔王様を仰ぎ見た。
「このかぼちゃパンツ、どうですか!?魔王様ですからね、王様っぽさを狙ってみました!色もそれっぽく、艶のある黒地に可愛らしいピンク色でお名前を刺繍で入れておきました。落としてもわかるように。拾った人が届けてくれる優れもの機能ですよ。ハートマークはオマケです!」
今度こそお褒めいただけるだろうと、期待に満ちあふれた視線を魔王様に向けた。
いっぱい褒めて下さってもいいんですよ?
そんな私の輝く視線をものともせずに、魔王様はにっこりとお笑い遊ばして、
「たわけーーーー!!そんなもの、お前以外は落とさんわー!寧ろ、そんなものを届けられたら大恥だバカめ!魔界に恥をばらまく気か!脳みそ入れ替えてこい!!」
ぺいっと私ごとかぼちゃぱんつを部屋から放り出した。
美しい放物線を描いた割には着地は痛くはない。
「あーあ、この生地最高級の素材を使っているんですよーー!?」
べしゃりと床につぶれた姿勢のまま、閉じられた扉の奥へ向かって声を張り上げてみるが、魔王様はうんともすんともおっしゃらない。
仕方なくパンツを抱えて立ち上がると、居室へ向かう道をとぼとぼと歩き出した。
ああ、どうしてお気に召していただけないのだろう?
私は首をかしげながら、艶のある光沢の最高級布地を撫ですさり、その感触に心ときめかせつつ、魔王様に気に入っていただけなかった理由を、ああでもないこうでもないと考えたのだった。