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神様の贈り物

作者: ことは
掲載日:2026/05/07

「もういい!出ていく!!」

これが、僕が聞いた彼女の最後の言葉だ。


ひなを怒らせてしまった理由は、今でも覚えている。

付き合って3年目の記念日に、僕は職場の忘年会に参加していた。

一次会で帰る予定だったんだ。

だけど、二次会を断れる雰囲気じゃなかったし、新卒の僕が断れるはずもない。

いや、そう思い込まないと、この後の全ての言い訳ができなくなる。


泥酔して朝帰りをした僕に、ひなは涙目で怒りをぶつけてきた。

記念日のパーティーの準備をして、ずっと待っててくれたんだ。

怒るのも当然だ。

それなのに僕は、酔っ払ったまま、へらへらと笑いながら謝ってしまった。


そんな最低な会話が、僕たちの最後の会話だなんて、情けなさすぎて、涙も出なくなる。

ひなは、着替えもせずに、本当に出ていってしまった。

もしかしたら、すぐに帰ってこようとしてくれてたのかもしれない。

本当は、すぐに追いかけてほしかったのかもしれない。

もう何も確かめることは出来ない。

あの時、すぐに追いかけていれば、間に合ったのかもしれない。

全ての予想も選択も、後悔でしかなく、いくら考えても、あの事故を無かったことにする事はできない。


ここに居続けることが辛すぎて、二人で暮らしたアパートを引き払うために、遺された、ひなの遺品を整理していると、あの日プレゼントしようとしてくれていた手編みのマフラーと手紙を見つけた。

その手紙には、出会ってから今までの二人の思い出と、僕への想いが詰まっている。


「ごめん…。」


ひなを失った日から、初めて出した声は、掠れていた。

あの日から過ごしたクリスマスの華やかな彩りも、年末の慌ただしさも、お正月の賑わいも、全て灰色に染まっている。

耳に入る全てが、ただの雑音に聞こえる。


それでも、前に進まなければならない。

そう言い聞かせて外に出ても、何一つ変わらない。

そのままフラフラと人の流れに身を委ねていると、初詣で賑わう神社にたどり着いた。


神様、ひなに会わせてください。

ひなの居た世界に、帰してください。

それが無理なら、この命を奪ってください。


目を強く瞑り、願いというよりは、縋るように繰り返した。


急に周りが静かになり、僕はゆっくりと目を開ける。

そこには、ひなが居た。

あの日の光景が、目の前にある。


ついに幻覚を見るようになったか。


「ねぇ、私、怒ってるんだよ?」

それでも、いい。

僕は、優しく抱きしめた。

「ごめんね…、愛してる。」


違う…。

この声、この香り、この温もり、愛おしい人、全部、大切な真実。

神様がくれた、大切な宝物。

もう二度と、離したりはしない。


ひなを包む手が、熱く強く鼓動を届ける。

囁き合う吐息だけが、二人の頬を伝う雫を溶かした。

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