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【連載版】貴方はこの結婚生活の終わらせ方を知っている  作者: 新井福
あなたにとっての幸福は、私には少し痛かった
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【おまけ】二人の日常

お読みいただきありがとうございます。

 開けた窓から心地の良い風が吹く。

 アリアシネ侯爵家夫人のエリーゼは椅子にかけながら、夫が自分の髪を結んでくれるのを頬を緩め堪能する。骨張った手は、細いふわふわした髪を優しく解き結っていく。

「ハーゲン様ハーゲン様」

「なんだ?」

 二つに結われた髪に藍色のリボンが巻かれていく。ふぅと達成感の息をつく夫――ハーゲンの服の裾をチョンと引いた。

「わたしも、ハーゲン様の髪を結びたいです!」

「? いつもしているだろう?」

 代わりばんこに編むのが二人の日課だった。金髪のエリーゼの髪をハーゲンが編み編み。黒髪で長いハーゲンの髪をエリーゼが編み編み。

 いいえいいえ、エリーゼは首を横に振る。

「わたしと同じ髪型にしたいのです!」

 にぱー、屈託のない顔に、だがその口から発せられた言葉に表情が凍りつく。無意識に櫛を背に隠した。

 エリーゼは今二つ結びである。

「エリーゼ、私は、男だ」

「知っておりますよ?」

 大事なことを一言ずつ区切って言ってみたが、サラリと肯定される。

 エリーゼは自分のリボンが何本も入った箱からしゅるりと二本引き抜く。両手にリボンを構え、期待に満ちた眼差しを注いだ。

 うっ、とハーゲンは呻く。

「ぜひ」

「…………」

「似合うと思います」

 元来押しに弱いハーゲンだが、それでも力を振り絞り沈黙を貫く。

「ハーゲン様……」

「…………………………少しの間だけだ」

 覚悟を決め櫛のバトンを渡し、今度は椅子に座る。

 むふ、とエリーゼが櫛を構えた。

「きゃーっ! ハーゲン様すっごくお似合いです!」

 数分後。エリーゼの歓喜の声が部屋を満たした。

「……ありがとう」

 二つ結びにされたハーゲンの表情は対照的に暗い。

 エリーゼはその姿を見て、余計なことは言わないように口元に手を当てる。

 ――嫌そうなお顔。でもお揃い嬉しい〜という心中を隠した。

 にこにこ微笑むエリーゼの顔を横目に見る。

 わざとらしいため息をつき、これでこんなに喜んでくれるなんて随分と安上がりだと揶揄した。

 もう暫くはこのままで良いか、と彼女が座るための椅子を引き寄せた。


文学フリマ東京42(5月4日)にて発売いたします。ブースはきー17です。

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