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第6回:熱い男、武市半平太
「おまんの覚悟をここで示してくれ!」
武市の熱弁が続く中、竜馬の膝の上でゴロゴロと鳴いていたのタマの目が突然ギラリと光った。
「ん!……戦国の軍師なら、ここで火攻めを仕掛ける頃合いだね」
タマが独り言と共に龍馬の太ももを引っ掻くと龍馬は「ひぃっ!」と飛び上がり、手元にあった熱い茶碗をひっくり返した。
「あちちちっ!」
のたうち回る龍馬の足が部屋の隅にある行灯を蹴飛ばす。行灯は回転しながら障子を突き破り、庭石の裏へと転がった。するとそこから、火達磨になった幕府の隠密が三人も飛び出してきたのだ。
実は、隠密たちは武市に吹き矢を放とうと潜んでいたのだが、転がってきた行灯の火が偶然にも草むらに燃え移り彼らを直撃したのである。
「おお……! 敵の忍びを察知し、行灯一つで炙り出すとは!」
武市が戦慄して平伏する横でタマは、冷めた目で龍馬を見上げた。
「……やれやれ。コイツは、ただ熱いお茶に驚いて暴れただけなのにね。武市半平太って、実はただのバカなんじゃない?」
龍馬は火傷した足を抱え、涙目でタマを睨むことしかできなかった。




