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第28回:霧島の新婚旅行

タマの実力で窮地を脱し、その後はお龍の献身的な看護を受けた龍馬は傷を癒やすべく霧島の温泉宿へと辿り着いた。

ようやく訪れた平穏なひととき。部屋に入るなり、龍馬は「素晴らしい眺めじゃ!」と窓辺へ駆け寄った。その隣では何処からか見つけて来た小さな浴衣を粋に羽織ったタマが当然のような顔で上座に居座り、お龍が淹れた茶の香りを嗜んでいる。

「ちょっと龍馬さん、その猫……自分を人間だと思ってない?」

お龍の至極まっとうな呆れ顔を無視し、タマは目を細め前足で器用に茶菓子を転がしていた。

龍馬は「タマも大事な家族じゃき!」と笑い、庭にある名物の手水鉢へ手を伸ばした。ところが、その拍子に袖が石の角に引っかかり龍馬は庭の飛び石を派手に踏み外した。

その一歩が、偶然にも庭園の古い庭石を絶妙な角度でずらしたのだ。

「……お、おおっ!?」

庭石がずれた地面から温かな湯がドッと湧き出し、あっという間に庭を白い湯煙が包み込んだ。

「お龍、見てみよ! わしが歩けば新しい湯が湧くぜよ!」

大喜びする龍馬を、タマは部屋の中から冷ややかに見つめていた。

「……やれやれ。歩くだけで温泉を引き当てるなんて。ま、日本初の新婚旅行なんて浮かれた真似をした男の記録としては、これくらい不思議なことが起きる方が後世の語り草には丁度いいのかもね」

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