第27回:タマの大活躍
混乱に乗じて寺田屋を脱出した龍馬だったが暗闇の中、裏の材木小屋へ逃げ込む際に派手に転んでしまった。運悪く転がっていた錆びた鋸で手首を深く切ってしまい、皮肉にも捕吏に斬られるより酷い深手を負う羽目になったのである。
外には数百の捕吏「坂本、神妙にしろ! 出てこい!」と怒号が飛び交い、鋭い槍が壁を何度も突き抜けてくる。龍馬は激痛に顔をしかめ、震える手で拳銃を握り直した。
「……タマ、これまでじゃ。おんしゃあ逃げろ。わしはもう、引き金も引けん……」
龍馬が死を覚悟したその時、懐のタマが「やれやれ」と溜息をつき外へ飛び出した。
タマは隙間から槍を突き出す捕吏の手元へ飛びかかると鋭い爪で手の甲を激しく引っ掻き、次々と槍を奪い取った。さらに材木の山を軽やかに駆け上がり、頭上から大きな木片をパシパシと敵の脳門へ叩き落としたのである。
「うわあああ! 化け猫だー!」
「目が、目がやられたー!」
暗闇での黒猫の連続攻撃にパニックを起こした捕吏たちは、互いにぶつかり合いながら退散していった。
「……助かった。死にゆくわしの気迫が、敵を追い散らしたのか……」
龍馬が呆然と呟くと、タマは血のついた爪を丁寧に舐め、何食わぬ顔で懐に戻った。
「……気迫なわけないでしょ。滅多にない大サービスなんだから、後で最高級の煮干しを山ほどもらうからね。感謝してもらわないと困るよ、まったく」




