第24回:薩長シェイクハンド
ついにその時が来た。西郷隆盛と木戸孝允が揃い、同盟の条件は整った。しかし、いざとなると長年の仇敵同士。二人の間には、理屈では越えられない意地の壁が立ちはだかりお互いに握手の一歩が踏み出せない。
龍馬が冷や汗をかきながら仲裁しようとした時、懐から這い出したタマが二人のちょうど中間地点へ堂々と陣取った。
(……やれやれ……意地を張るのは勝手だけど早く帰りたいから、さっさと終わらせよっと)
タマはすっくと立ち上がると二人の鼻先の間に二本の尻尾を突き出した。そして、メトロノームのように正確なリズムでその尻尾を左右交互にくるくると回し始めたのだ。
「……お、おいタマ? 何をしよるんじゃ」
龍馬の制止も耳に入らない。西郷と木戸は、吸い寄せられるようにその尻尾の動きを凝視してしまった。
「……あなた達はだんだん、握手したくなーる。仲良くしたくなーる……」
タマがブツブツと唱えながら尻尾の回転を早めると二人の瞳は、トロンと虚ろになり意志とは無関係に右手がゆっくりと上がっていった。
「……あ、握手したか……」
「……不思議と……そんな気が…してきた……」
ガシッ!と、二人の手が正面から重なり合った。龍馬が「成った!」と叫ぶとタマは即座に催眠を解き、知らん顔で毛繕いを始めた。
正気に戻った二人は、握った手の熱さに驚きつつも「これぞ天意!」と互いの覚悟を認め合ったのである。




