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第11回:勝海舟との出会い
「……おめえさん、人を斬りに来たにしては、ずいぶんと可愛らしい相棒を連れてるじゃねえか」
江戸、赤坂の勝邸。軍艦奉行、勝海舟は暗殺を企てて乗り込んできた龍馬を前にニヤリと不敵に笑った。龍馬の懐には、三本の尻尾を器用に畳んで丸まっているタマがいる。
「……鼻の頭に脂がのってるね、いいもの食べてる。多分お金持ちだよ、このおじさん」
タマが龍馬の耳元で密かに囁いた。
「……タマ、聞こえてしまうき。ちっと黙っちょれ」
勝が怪訝な顔をする。龍馬は慌てて口を塞いだが、タマは構わず勝の膝へ飛び乗り、その威厳ある鼻先をペロリと舐めてみせた。
「ハハハ! 気に入った。俺の鼻を舐めて挨拶したのは、この黒猫が初めてだ」
勝は豪快に笑い飛ばし、タマを撫で回した。タマは、相手の格を確かめるべく一舐めしただけなのだが勝にはその度胸がいたく響いたらしい。
「いいか坂本、猫に好かれる奴に悪い奴はいねえ。おめえ、俺の弟子にならねえか?」
龍馬の運命はタマの気まぐれな品定めによって、一気に水平線の彼方へと漕ぎ出すことになったのであった。




