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殺人鬼の少女は警察官に育てられる  作者: ありす・インザホーム
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記録0プロローグ

いのちって…なんだろう?

「ねぇ、おにいさん、そのおめめきれいだね!」


路地裏にて、長いツインテールの少女が話しかける。

話しかけられた男性は戸惑った。

急に自分の目をきれいだといわれても、反応の仕方に迷ったからだろう。

少女はさらに続けた。


「そのおめめほしいなー!ねぇ、もらってもいーい?」


男性は余計に戸惑った。

少女は男性が困惑しているのも知らずに、とても明るい笑顔で近寄ってくる。


「おかあさんがね、いってたの!ほしいものがあったら、もらえばいいって!」


男性はあまりの恐ろしさにその場から走って逃げようとした。

それに合わせるように彼女は男性に向かって軽やかな足取りで近づく。


「うわああっ!?」


男性は水たまりに滑って転んでしまう。

倒れこんだ男性に向かって、一つの刃が降った。



_____________


「両目をえぐられた死体、、」


11時36分、大通り付近の路地裏

通報があって出動した刑事、涼宮隆一(すずみやりゅういち)は、気味の悪い死に方をしている死体を見て顔をしかめる。


「刃物か何かで腹部を刺されたのちに両目をえぐられたのだと思います。」


現場に来ている警察官にそう報告される。

このような死体は12件目、ある死体は指の爪をはがされ、ある死体は髪の毛の一部が切られ、ある死体は四肢を切断されている。


「監視カメラは?」


大通り近くの路地裏なら、監視カメラの一つや二つありそうだと思い、そう聞いてみる。


「こちらに」


渡されたノートパソコンの映像を警察官二人とともに見る。

すると、昨夜21時45分に路地裏に入る男性がいた。


「なぜ被害者がこの時間に路地裏へ行ったのかはわかるか?」

「どうやら、この路地裏を抜けた先すぐに被害者の在住するマンションがあるようです。」


路地裏を通らずともいける道もあるが、この道を通ったということは、、


「近道しようとしたのか。」

「ですね。」


ちゃんとした道を通れば、きっとこんなことにはならなかったかもしれないというのに、、、

被害者の不運さを哀れんだ。


「あっ、刑事!ここ!」


警察官が映像を止めたシーンには、長いツインテールの少女が男性の後をついて行っているのが映っている。

解像度が悪く、正しいのかどうかは分からないが、手にナイフのようなものを持っているのも移されていた。


「なるほど、、こいつが犯人か」

「け、刑事、、、これ、、」

「、、、分かっている。おそらく、まだ7つの少女だ。」


警察官が唖然としている。

いままで監視カメラの点検の不十分さゆえに、解像度が悪いものが多く、不明瞭だったために断定ができなかった情報が、今確定された。

犯人はこの少女で間違いではないだろうが、警察官の顔が歪むのは、分からないことではない。


・・・まだ、幼き少女に殺しを教えた大人がいる。


私は、12人を殺害した少女より、殺しを少女に教えた大人を恨んだ。

7つともなれば、普通に生きているなら、小学校に入学して、楽しい学校生活を送っていた頃合いだろうに、、、


私は少女を救うために逮捕しなければ


そういう気持ちで、私はその場を派遣された警察官達に任せて一旦現場を離れた。



_____________________


「お疲れ様です。隆一刑事」


綾瀬凜が私の机にコーヒーの入ったマグカップを置く。


「あぁ、ありがとう。」


私はそういうと、コーヒーを一口飲む。

程よい苦さが私の口に広がる。

私はそのたびに、とても幸せな気分になった。


「大変そうですね。その事件」

「あぁ、、、」


ぼんやりとそう答える。

どうにもこの事件は、犯人の姿はわかるのに、犯人の行方が分からない。

都心部の子持ちの家族全員を漁っても見つからない、付近の監視カメラを漁っても見つからない。

消えたというのか?まさか、そんなわけ

あまりの非現実的さに非科学的なことを考えてしまう。


「その監視カメラに写ってる女の子が、今回の事件の犯人なんですか?」


凜が私のパソコンの画面を覗きこむ。

その映像で少女の顔を見た瞬間、凜はとても驚いた顔をした。


「ちょっ、、で、刑事!この子、公園で寝てた子です!!」


流石に私も驚いた。

連続殺人犯が公園で寝ている?まさかそんなわけ、、


「、、、あたまがおかしくなったのか?連続殺人犯が、そんなのんきに公園で寝てるわけないだろう?」


流石に聞いてしまった。失礼だっただろうか、

すると、凛は私を無理やり椅子から立たせようと手首をつかんで引っ張ると、


「ほんとですよ!今朝おにぎりあげちゃいましたし!!と、とにかく来てください!!」


あまりの慌てっぷりに、私は、咄嗟に椅子に掛けて置いたコートをとって凛とともに外へ出た。



____________________


本当にいた。


流石にこればかりは信じられないと思ってしまった。

犯人であろう少女は、公園の隅に植わっている木の下で、段ボールの上で、新聞紙を布団にするかのようにして寝ていた。

そばには凛があげたであろうおにぎりの袋と、雑に縛られたビニール袋が置かれている。


「刑事、この子、親に捨てられたみたいで、いつもここにいるんです。私も、この子を拾おうか考えたんですが、経済的に余裕がなくて、それで、仕方なく毎朝、ご飯をあげに行ってたんです。児相に連れていくっていう手もあったんですが、この子がどうしても嫌がって、、、なんか、児相の受付にいるおじさんが怖いって喚くんです。だから連れていけなくて、、、」


少女の手には、被害者のものであろう眼球が大切そうに握られていた。

まさか親に捨てられていたとは、、、

少し少女に同情してしまいそうになったが、こいつは殺人犯だ。逮捕しなければいけない。

そう思い、コートのポケットに入っている手錠を取り出そうとした瞬間だった。


「ん、、、ぅ、、?」


少女が目を覚ました。

少女は、日本人だと思うが、それにしては珍しい赤色の目をしていた。


「んぇ、、?あ、、おねーさん、、、だぁ、、おはよぉ、、、」


少女はとても眠そうに瞼をこすりながら、凛に挨拶をした。

凛はそれをとても苦しそうに、悲しそうに見つめた。


「おねー、さん、あのね、、!おにぎり、、おいちかった、、よぉ、、!」


少女は起きたばかりだからか、とてものんびりとした声で凛に話しかけた。


「そのひとはぁ、、だぁれ、、?」


少女は私に視線を向けると、こてん、と首を傾げた。

私は、少女にこう聞いた。


「その手に持っている眼球はどうした?」


少女は、頭に?マークを浮かべたような顔を見ると、自分の手を見て、にこっと笑った。


「がんきゅー、、?あ、、えっとね、これ?、これね、きのーね、きれーなおめめだなぁって、おもってね、もらったの!」

「貰った、、?」

「そーなの!それでね、きれいだなぁってね、おもってね、だいじにしまってたんだけど、しらないひとが、もってっちゃったらね、いやだからね、だいじにもってたら、ねちゃったの!」


少女はそれをとても楽しそうに語った。

私はそれを信じられないというような目で見ていたと思う。


「…人の命を奪ったことには、何も言うことは無いのか?」


私がそう聞くと、少女は首を傾げ


「いのちってなぁに?」


と、私に聞いた。

凜はそれを聞いて唖然としている。

無理もない、この少女が命という単語自体知らないということに私も1番驚いている。


「お前は命の尊さについて何も知らないということか?」


そう聞くと、少女は


「いのちってなぁに?とうとさってなぁに?」


と無邪気に聞いた。

学校に行っていない事が原因なのか、はたまた、少女が親に捨てられたことが原因なのか、或いは少女の親がまともな教育を施さなかったのか、

この回答に、私は、虚無感のあるような驚きの感情を覚えた。


「…そうか」


私はその一言を言い放つと、少女の前にしゃがみ込み、小さな手を握る。


「お兄さんと、一緒に来る気はあるかい?」


少女はその言葉を聞くと、目を輝かせながら


「いいの!?」


と言って、ぴょんぴょんと兎のように可愛らしく飛び跳ねた。

私はシワのある顔を引きつらせるように笑い、少女を車に乗せた。



_________________


「で、刑事、その子は…?」


私が少女を抱えて仕事場に戻ると、同僚の佐藤が人攫いを見るような目でこちらを見てきた。


「…連続殺人犯だ。」

「はぇーそうですか連続殺人犯…連続殺人犯!?!?」


顔芸をするかのように表情を変える佐藤

まぁ、その反応を見るのが面白いのだが


「連続殺人犯を逮捕した。これから、殺人犯は私が育てる。」


まるで当たり前かのようにそう言うと、佐藤が開いた口が塞がらないと言わんばかりに大きな口を開けて


「刑事…そういう趣味が…」


と、表情とは全く逆な言葉を話す。

私はその様子を見てため息をついた。


「ロリコン、ではない。私は殺人犯を救おうとしたまでだ。」

「救う…?刑事…いつからそんな人に…」


だからロリコンではない。

佐藤の額に軽くデコピンをする。

「でっ!?」と、緊張感のない悲鳴を上げると、痛そうに額を抑えた。


「ん……ふゆぅ…ゅ……」


少女が寝息を立てる。

彼女は車の揺れが心地よかったのか、さっきから眠ったまま起きない。

幼児を車に乗せるとすぐ眠ってしまうという話は本当のようだと実感した。


「仕事が終わったら私の家に連れて帰る。それまで見張っといてくれ、殺人犯は学がない。殺しも、命の意味も分からないような幼子だ。変な言葉を教えることが無いように」


全体に向けてそう言うと、バッ、という音を立てて、皆が敬礼する。

私はその様子を見てから、コートを少女にかけてから、仕事場へと戻った。

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