フレンチ・トースト
庭から戻ると、ファミリールームにお茶の準備がされていた。
「ささやかですが、テスさんの右腕が治ったお祝いデス」
そう言って並んでソファに座ると、目の前に色んな果物や生クリームに囲まれたフレンチトーストの乗ったお皿が配膳される。
焼きたてなんだろう、ホカホカ湯気をたてる綺麗な焦げ目のついたその姿に、思わずゴクリと唾を飲み込んだ。
隣にいるノイたんをチラッと伺えば「どうぞ」といった風に微笑んでいる。
ならば遠慮なく、一口サイズに切って生クリームとベリーを乗せ口に運んだ。
美味い!ちゃんと食感がカリカリとしっとりとが2つあって、決してベショベショなだけではない。
卵と牛乳の元気が出る甘さに…生クリームもくどくないし果物もみずみずしい…あっ香りにシナモンを感じる、隠し味か!?
一口目の時点で興奮して唸っていると、ノイたんが蜂蜜の入ったピッチャーを差し出してきた。
かけろと言うのか。
この時点でもう満点美味いのにもっと足せ、と。
ありがとうございます。
グルッと回しがけし終えるやいなや一切れ頬張れば、蜂蜜の甘さと香りが追加されたフレンチトーストはまたさらに美味しくなっていた。
紅茶の時から思っていたが、ここで使っている蜂蜜は本当に素晴らしい。
ノイたんにもこの幸せのお裾分けをしたくて、一口分をフォークで「ほい」と差し出す。
「えっボクにデスカ!?」
「食ってみなよ、鬼美味いから」
「いえ…ボクは…」
「あっ嫌いだった?ごめんごめん」
ちょっと悪いことしたな、じゃあ果物のどれかにしとくかとフォークを引っ込めようとすると急に腕を掴まれ、そのまま差し出していた一口分を食べられた。
よっぽど焦ったのか少し顔が赤い。無理をしたんじゃないかと思って大丈夫かと伺えば
「熱くて…ドキドキしマス」
と口元を手で隠しながらそう言った。きっと美味しかったんだろう。
頷いて私も「なぁ〜めちゃくちゃ美味いよな!!」と同意する。