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眷属少女のブーケット  作者: クダミ
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真祖と眷属


  

 部屋に戻って荷解きをしていると、ノックも無しにドアが開いたかと思えば「テスさん!今暇デスヨネ!?」と豪快にノイたんが入って来た。

 ニコニコしているあたり、かなり機嫌が良さそうだが何かあったのだろうか。

 


「両親と話す時間が取れたましたから、今から紹介しマスネ」

「りょ」

 


(今なんてった、両親?)

 


 うまく飲み込めずに固まっていると、サァサァと手を取られ半ば引きずるようにノイたんに連行される。

 

 脳内でやっと反芻できるようになった頃にはもう応接室前に到着していて、ちょっと待って服とか今着てるやつで良いのかと聞く間も無いまま「戻りました」と室内に声をかけて入る彼に引っ張られた。

 

 ソファにはうっすらと半透明の人影が2人並んで座っていた。

 影のシルエットからして、オールバックの男性と長髪の女性であることがよくわかる。

 テーブルを挟んだ向こう側のソファに同じよう腰掛けつつ、ノイたんのご両親は幽霊だったんだなぁと考えていれば「【ホログラム】という魔法デス。遠くにいる相手の顔を見ながら会話ができるんデスヨ」と囁くように教えてくれた。

 

 ということはご両親は実際にここにいるわけでなく、どこか別の場所にいるのか。

 


「お父さん、お母さん、紹介します。この人がテスさんです」

「はじめまして、テスタ・オールです」

 


 ご両親相手に流石に「よっしく」とは言えないので、丁寧に頭を下げる。

 

 息を呑んだ、気配がした。

 


「本当に人間の…眷属っ」

「ノイ!!貴方、自分が何をしたかわかっているの!?」

 


 なんというか、反応が全くよろしくない。

 お父さんの方は頭を抱えているし、お母さんの方にいたっては一度立ち上がるほど怒っている。


 

「はいわかっています。この方が都合が良いと思って」

「思って、じゃないでしょう!禁術よ!!」

「そもそもお前、きちんとそのテスタさんに許可はとったのか?詳しい説明は?」

「あ、すみません。私その眷属?にされる時死にかけで気絶してたので許可はし無かったんですけど、眷属になるのってそんなにマズいんですか?」

「「あああ……」」

 


 私の問いに、2人ともソファから崩れ落ちた。

 それほど返答に困る質問だったのかと、ノイたんの方をうかがえば、苦笑いを返される。

 


「眷属、というのは」


 

 ヨロヨロと、ソファに座り直しながらお父さんが口を開く。

 


「別の生物を我々【魔人族】の中の【真祖】に従属する存在【眷属】へと作り替えたもの。というのは流石に聞いているかな?」

「はい、でもそのまず真祖ってのも魔人族もわからなくて」

「そうね…じゃあまずテスタさん、貴方は魔法使いやドラゴンや妖精、信じる信じないは抜きにしてそういう存在については知っているかしら」

「一応そういうのが出て来る本は何度も読んだことがありますが」

「なら説明しやすいわ、魔人族はさっき挙げた中で言う魔法使いに相当するの」

「そして真祖はその魔人族の中でも最初に産み出され、一族を率いることを任された存在」

「魔法使い…」

 


 なるほど。魔人族と聞くと去年古本屋で購入した小説『千一夜』のイメージがあったけど、魔法が使える人だから魔人族なのか。

 


「ほぁー…てことはひょっとして真祖は人間で言うとこの、王族みたいな立ち位置なんですか?」

「それよりももっと宗教的な意味も含んでいるけど、概ねそう思ってくれて良い」

「じゃあ皆さんもんのすんごく偉い方々なんですね」

「他人事みたいに言ってマスケド、テスさんもボクのお嫁さんとして一族に加わるんですから貴女も偉くなるんデスヨ」

「あっ」


 

(そうか…そうなるのか。でもさっきまでの説明だと、眷属って逆にもんのすんごく下の位置にいる存在になるのでは)

 


 先輩・同期のメイド達もよく「いつか貴族の方に見初められて人生一発逆転!」と鼻息を荒くしていたけど、実際にそんなこと貴族方からしたら良い迷惑だろう。

 だからこそ皆んな語り合うだけに済ませていたのに、まさか自分が迷惑をおこす側になるとは。



「待ちなさい。そんな結婚、認められないわ」

 

「はぁ?」

 


 寒い、を通り越して痛いほどの冷気が走った。

 驚いてノイたんの方を向くと、いつもの綺麗な紫陽花色の瞳の色が光も反射しないほど真っ黒に染まっていっている。

 思い出してみると、確かガルボン邸に帰ることを告げた時と全く同じだ。

 一瞬だったので見間違いかと思っていたけれど、ひょっとすると彼が強い不快感や怒りを感じているサインなのかもしれない。

 


「何故」

 

「何故ですって!?そんなの、どう見ても対等な結婚じゃないからよ!」

「真祖は自分の眷属に対して『どんな理不尽な命令でも従わせる』ことができるんだぞ。それはお前も知っているだろう」

「それにテスタさんの存在が【大お祖父様】に知られたら、命の危険だって」


「ア゛ァ〜〜〜〜じゃあなんですか、つまり2人してボクからテスさんを取り上げる気なんですか」

 

「っ」

「そ、れは」



 何か。話の中で聞き捨てならないことがあったかと思えば、完全にノイたんが殺気立ち始めた。

 薄暗い影がかかり始めた横顔からは、憎悪が溢れ出ている。

 

 正直会話が3人の世界すぎて途中から全くついていけなかったのだが、雰囲気から察するにいつもの親子喧嘩とかではなく今はかなり危険な状態なんだろう。

 


「ノイ!少し落ち着きなさい!」

 

「ボクが怖いから遠ざけているくせに、あの男の命令しか聞かないくせに、今さらまともな───エゥッ!?」


 ドンッと脈絡も無く、ノイたんにもたれかかる。

 一か八かだったが、それだけで彼から突き刺すような殺気が消えた。

 


「てててテスさん!?」

「お腹空いたね」

「Ee?」

「ここで話し始めてからもうとっくに昼ごはんの時間すぎてるからかな」

「確かにそう…デスネ」

「肉とか魚とかトマトで煮込んだやつ、食べたいな〜でもな〜煮込みは時間がかかるから、それこそ魔法でも使わん限り無理なんだろうな〜ひやあああああああ残念残念っ!」

「っ!すぐに!!すぐに用意して来マス!!」

「お願いします。あとパプリカとキュウリとタコのマリネとバゲットとデザートにカボチャプリンとかあると嬉しいねぇ。代わりに晩ごはんはノイたんのリクエストにするからね」

「ハイ!」

 

 そしてなんと今回は勢いのまま、ドアを体当たりでぶち壊して出て行った。

 何ごとも無かったかのようにドアは静かに再生したけれども、私もノイたんに勢いよくぶつかられたらああなるのかもしれない。

 気をつけないと。

 


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