①.手の温もり
実は今まで明言はしていなかったんですが2人が異世界と地球(時代はまちまち)を、交互に転移している設定で書いていました。
しかし地球(魔法がない世界)に限界が来てしまったので、今後は順不同になります。ご了承ください。
それではどうぞ(ノ◕ヮ◕)ノ*.✧
レオンハルトは『シャーヴァル王国』の第二王子としてこの世に生を受けた。
王妃よりも綺麗で教養があると噂されていた側妃との間に出来た子だったが、母はレオンハルトが幼い頃に謎の死を遂げてしまい、残された彼は皆から疎まれて育った。
だが我儘に育った王妃の子である3つ年上の兄よりも、レオンハルトの方が王太子に相応しいのではと臣下達から声が上がったのだ。
すると王妃はそれを妬み、レオンハルトの命を狙うようになってしまった。
レオンハルトが15歳になったある日、彼の腕を『毒の矢』がかすめ命からがら何とか追ってから逃げ切り、王都の街の路地裏で1人痛みに耐えていた。
するとそこへ1人の少女が現れる。
* ✦ * ✦ *
リアーナの両親は貴族だったが早くに亡くなり、父の友人だと名乗る女性『エステル』に育てられていた。
エステルは自身の好きだった男性と結婚したリアーナの母が許せなかった。
子供が出来て幸せに暮らす邪魔なリアーナの母を殺め、父を手に入れようとしたが母の亡骸にすがる彼の姿を見て手に入らないと諦め彼も殺す。
そして一人残された赤ん坊のリアーナを連れ去り、物心ついた頃から使用人のように扱った。
たがリアーナはこのことを知らず、父は事故で亡くなったと言われて育つ。
エステルは王都の外れで店を営みポーションを売っていた。
彼女の作るポーションはとても評判がよく、皆は親しみを込めて『魔女様』と呼んでいた。
そんな中、リアーナは成長と共に自身に不思議な力があることを知る。
それは『神聖力』と呼ばれる『治癒魔法』だった。
この力のことが母エステルにバレれば何をされるか分からないと感じ秘密にしていた。
リアーナは母が自分に冷たくし避けていることを直感的に分かっていたのだ。
リアーナはエステルのポーション作りのサポートのため薬草の種類や効能に自然と詳しくなったが、調合の立ち合いだけは決して許されなかった。
そこで母の目を盗み、自作で『回復薬』を作っていた。(※ポーション=回復薬)
危険な場所に薬草を取りに行くこともあるため回復薬が必要だったが、母は持たせてくれなかったからだ。
それからリアーナは治癒魔法を使うとすぐ疲れるため、なるべく使わないようにしていた。
✦ * ✦ * ✦
ある日リアーナは街に買い出しに行くと、どこからか血の匂いを感じた。
その匂いの痕跡をたどると、路地裏の奥で腕に傷を負った男性を見つける。
彼は壁に寄りかかって座り、荒い息をしていた。
見たところ傷口から毒が入り苦しんでいるようだ。
虚ろな目をしていた男の口元に持っていた小瓶を差し出し、リアーナは飲むように言うが「そんな得体のしれないものなど飲めん」と言われ、男は横を向いてしまった。
彼女が持っていた小瓶の中の液体の色は『黄色』だった。
回復薬(ポーション)は『緑』が常識だったため彼は飲むのを躊躇したのだ。
一向に飲む気配のない男性にリアーナは痺れを切らし、持っていたポーションを自身の口に全て含むと彼の両頬を両手で押さえ、口の中に液体を流し込んだ。
急なことで驚いた男は思わず液体を飲み込んでしまった。
「⋯お前!いったい、なに、を、飲ま⋯」
そう話しながら男は徐々に目を閉じリアーナの方へ倒れ込んだ。
リアーナは眠ってしまった男の怪我をしていた腕に、自身の持っていたハンカチを巻くと仕方なく膝枕をし彼の頭を撫でた。
『身なりからして貴族か何かよね。年は私と同じくらいかしら?気持ちよさそうに寝ちゃって。何だか私も眠たくなってきちゃったな』
男の穏やかな表情を見ているとリアーナも眠気に襲われ、そのまま後ろの壁に寄りかかって眠ることした。
『俺の頭を撫でる、この手は誰だ?』
レオンハルトは夢心地に、自身の頭に触れる手の温もりを感じながら目を覚ました。
近くでは見知らぬ少女が目を閉じでいた。
それを見たレオンハルトは慌てて起き上がり、周囲を見渡すと夜が明けようとしている事に気付いた。
『まさか一晩ここにいたのか?』
と思い隣いた少女を見ると、目を擦りながら話しかけてきた。
「起きたの?」
と言い目を合わせてきた女に「お前は誰だ、なぜ俺とここにいる」とレオンハルトは聞いた。
「なぜってあなたが私の膝で寝ちゃうから動けなかったのよ」と彼女は答えた。
それを聞いたレオンハルトは「俺は人前で寝たことはない、嘘を言うな」と言うと、少女は何処か呆れたような顔をした。
とりあえず状況を整理しようと立ち上がろうとしたレオンハルトは、すぐにふらつき地面に膝をついた。
それを見たリアーナは「すぐに動いちゃダメよ、まだ毒が抜けてないんだから」と言い、レオンハルトを支えようと手を差し伸べた。
レオンハルトは『毒だと?』と思い、昨日の出来事を思い返そうとしていると「殿下、ここでしたか」と馴染みのある声が聞こえてきた。
その声の主に「キース、肩をかせ」とレオンハルトが言うと「はいはい」という声と共に、彼は騎士のような格好の男性に腕を組まれ路地裏から抜け出し、止まっていた馬車の方へと歩き出した。
だがレオンハルトはふと立ち止まり横を見ると、先ほどの少女はすでに道路の反対側を歩いていた。
「殿下?乗らないんですか?」
と聞かれレオンハルトは目の前の馬車に乗り込んだ。
* ✦ * ✦ *
1ヶ月後、レオンハルトは侍医と2人きりで自身の部屋で話していた。
「先日仰っていた件ですが」と言い侍医は語りだした。
この世界に出回る回復薬の色は主に『深緑』で味は苦く後味が残るものだった。
いわゆる下級ポーションと呼ばれるものだ。
そこから少し質がいい物は『緑色』で、苦いが後味は残らない(中級ポーション)。
さらに全回復をする上級ポーションは、大量生産が難しく市場にはめったに出回らない高級品だった。
色は『黄緑』で苦味がなく飲みやすい。
その3種類の回復ポーションしか侍医は見たことがなかった。
だがレオンハルトに頼まれ『黄色いポーション』について調べるように言われていたのだ。
そしてある文献を見つけたと侍医は語った。
それは秘薬(特級)と呼ばれる幻のポーションで全回復と能力の向上が見込まれ、上級ポーションに神聖力を付与することで秘薬になると書かれていたそうだ。
そして味はほのかに甘みがあると。
「神聖力?」
「そうです、聖女様だけが使えるとされる治癒魔法です。もしや心当たりがおありで?」
「なぜそう思う?」
「先日の殿下のあの怪我はいくら上級ポーションでも完全回復までには時間を要します。ですが殿下はたった1日で回復されました。それに殿下の身体からは今まで感じたことのない魔力の流れを僅かながら感じました。あれが神聖力だと言われれば全てに納得がいきます」
「そうか、このことは内密にしてくれ」
「もちろんでございます」
侍医が部屋を出るとレオンハルトは椅子から立ち上がり、テーブルの上に置いていたハンカチを手に取った。
綺麗に折り畳まれたそのハンカチの隅には『Rihanna』と刺繍が施されていた。
レオンハルトはその刺繍に触れると近くの窓から、外の城下街を見下ろした。
(※ここで出てくるポーションは現代で言うところの薬と似たような扱いです。なので効き目は遅いです)




