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リアーナとレオンハルト  作者: 藤崎七奈
〜 Dark Red 円熟した優雅さ 〜

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⑤.ダイヤ型のブローチ

数日前この世界にやって来た伶緒は右も左も何も分からず孤独に苛まれていた。


ここはいったい何処なのか、自分はなぜ此処にいるのか、そしてこの身体は誰なのか、いくら考えても答えは出なかった。


とりあえず身体が覚えていたことを頼りに騎士として生活をし、そのため不自由はなかった。


だが前の世界でせっかく大好きな凛香と一緒にいる幸せを手に入れたというのに、あの時に見たことが現実ならば自分も彼女ももうこの世の何処にも存在しない。


そう考えると食事の味もしなかった。


『凛香は何処にいるんだろう、もう会えないのか?』そう伶緒は1人虚しく思っていた。


(実は2人が転生した時タイムラグが発生し、伶緒の方が数日こちらへ早く来ていた)


そしてこの世界で凛香と再会しやっと今自身の腕の中に収めることが出来た。


しかし伶緒は気付いていなかった。

凛香も同様にこの世界で1人の寂しさに耐えていたことを。


『お前も俺と同じだったんだな』と伶緒は心の底から思った。


その後2人は凛香の部屋で共に食事を取ろうとテーブル着いた。


昨日の帰り際に食事に行こうと伶緒に誘われていたことを思い出し、凛香はサンドイッチなど手軽に食べられる物をメイドに多めに用意させた。


家へ帰ってきたエマはフレデリカが部屋に籠もって出てこないと聞き、やはり自分と王太子のことがショックなのだろうと思い嘲笑っていた。


「その2人、もう身体の関係あるんじゃないか?」

「私もそう思った」


凛香は部屋にやって来た伶緒に今日の出来事を話し、エマと王太子は既に肉体関係があるのではと2人は考えた。


「凛香にそんな態度取るのが許せない。エマって女は性格歪んでるし王太子はクズすぎるし、どうなってんだ。初めからこんな話なのか?」

「ううん、私が読んだ話と少し違う気がする」

「なら裏の性格なのか?」


と伶緒は怒り、そんな彼を凛香はなだめながら目の前の食事を食べようと促した。


「美味しい」そうサンドイッチを手に取り嬉しそうに頬張る凛香を見た伶緒は、自分も同じように手に取ると一口食べた。


「…うまい」そう一言、呟いた伶緒は何かを考え込むように黙った。


伶緒はこの世界に来てから初めて食事の味がしたのだ。


それは今まで自分の目の前に何か見えない妨げていたものがあったのが、一瞬で消えたような感覚だった。(具体的には伶緒の曇っていた心が愛しい凛香に会ったことで晴れた)


食事が終わりそろそろ伶緒は騎士団へ戻ると言い、別れ際に凛香にを抱き締めると彼はそのまま凛香を離そうとしなかった。


「伶緒?帰るんじゃなかったの?」

「あぁ、帰る」


そう伶緒は囁くとさらに腕の中にいる凛香を強く抱き締めた。


「全く」凛香はそう呟くと片腕を伸ばし伶緒の頭を撫でた。


「離れたくないの?」

「離れたくない」


そう返した伶緒の上半身を凛香は起こし、目を合わせると片手で彼の頬に触れた。


「もう少しだけ待ってて、必ず伶緒と一緒にいられるようになるから」

「必ずだぞ」

「うん、約束する」


そう話した凛香に伶緒は軽く口付けた。


「拒否んないのか?」

「今のは一緒になる約束のキス」

「ならもう一回」


そう言って2人は再びキスをした。


* ✦ * ✦ *


その日の夜、騎士団の寄宿舎で寝ていた伶緒は不思議な夢を見る。


幼く両親を亡くしたレオポルドは父から爵位を継ぎ、城で開かれる園に当主として参加。


だが綺羅びやかな装いの大人達の中に入ることが出来ず、庭園に1人で佇んでいた。


すると両親についてきていた子供達数人と出くわした。


「何だこいつは」

「今の流行はそんなんじゃないぞ」

「デザイナーくらいまともなの雇えよ」


と言って子供達はレオポルドの身なりを馬鹿にしてきた。


彼の着ていた服は父が以前用意してくれていた物を仕立て直していたため、今の流行ではなかったのだ。


レオポルドはいくら伯爵とはいえ領地のない名ばかりの貴族。


新しい服を買う金銭的な余裕がなかった。


すると子供達の後ろから声が聞こえてきた。


「自分の着たい服を着て何が悪いのよ。それに流行りなんてすぐ変わるでしょ」


そう言い放った声のする方に皆が振り向くと『白いドレス』を着こなした、まだあどけなさの残る侯爵令嬢であるフレデリカが立っていた。


彼女は真っ直ぐ進みながらレオポルドのそばへ近寄ると「あら貴方の服格好いいじゃない。それに比べて」と言ってフレデリカは振り返ると、子供達の方に向き直り1人1人を見渡した。


「いくら流行ってても似合ってなきゃ意味がないわよ。あなた達の服のデザイナー変えた方がいいんじゃない?」


そう言ったフレデリカの身に着けていた白いドレスは明らかに高級そうな代物で、華やかさもありながら上品さもあり綺麗な顔立ちの彼女にとてもよく似合っていた。


レオポルドを囲んでいた子供達は悔しそうな顔をしながら一斉に何処かへいなくなり、フレデリカはレオポルドの方に向き直った。


「その服本当に似合ってるわよ。だけど、そうね」


そう話すとフレデリカは首元に着けていた青いダイヤ型のブローチを外ずし、目の前のレオポルドの左胸にそれをつけた。


「この方がもっといいわ」と言いニコッと笑ってみせた。


その笑顔が目に焼きついたまま、伶緒は目を覚ました。


『今のってこいつがフレデリカを好きなった理由か?』


そう思いながら身体を起こし、テーブルの上に置いていた青いダイヤ型のブローチの方を見つめながら、伶緒は苦笑いした。


『恐らく凛香とフレデリカはよく似ている。そしてそれは俺とお前もだって、そう言いたいんだろ?レオポルド』

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