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リアーナとレオンハルト  作者: 藤崎七奈
〜 鵯上戸 〜

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④.三日月と星

このユレイオス王国の王と王妃には、それぞれ自分を表すものとして『モチーフ』を決めることが出来た。


自然崇拝(アニミズム)、自然のあらゆる物の中に神が宿っているという考えで、モチーフには自然の物を使うのが主流だった。


主に王は山や木、生き物なら象など大きくて長寿なもの(国が末永く続くように)。


妃は、花や蝶や小鳥など華やかなもの(国の豊かさを意味する)を選んでいた。


そんな中でレオンハルトは『三日月』を、リアーナは『星』をモチーフに選んだと今回発表していた。


すると2人のお披露目パーティーに参加していたアドルフが、そんな物をモチーフにするのはおかしいと言って反発したのだ。


実は初代の頃は皆、月が陛下(皇太子)、それに寄り添う星は妃、そしてそれらを見守る太陽は神を表し我々を見守っている存在としていたのである。


だがそこから時代が流れその考え方が薄れていき、今は個々でモチーフを選ぶようになっていた。


「2人が選んだモチーフは何らおかしくはない」


と事前にレオンハルトとリアーナから聞いていた宰相はアドルフにそう告げ、このモチーフを選んだ理由を代わりに説明した。


「太陽が神?聞いたことのない話だ」そうアドルフは指摘した。


「何を言っている、生きとし生けるもの我々を含め全ての生物は太陽の光の下で生きている。ならば太陽を神と例えるのはごく自然なことではないのか?2人はそのことを忘れていた私達に教えてくれたと思うが、違うかね?」と宰相はアドルフに尋ねた。


アドルフは王太子の座をレオンハルトに取られ、その腹いせに自分の方が優れいるとレオンハルトを馬鹿にするつもりだった。


しかし自身の勉強不足を指摘され、大勢の前で恥をかいてしまった。


* ✦ * ✦ *


一方、母のナビアは自分は無実だと言う抗議の文を何度も王に送っていた。


だが剣聖として名声のあるレオンハルトと、追放された元公爵夫人では王からの信頼に差があった。


そのためクロモンド公爵家には何の調査も行われなかった。


しかしその後ナビアの住む家に賊が侵入し鉢合わせた彼女は、帰らぬ人となった。


賊はナビアの身に着けていたネックレスなど金目の物を奪い逃走、犯人は未だ見つかっていなく一体どこから現れどこへ消えたのか解らないままだ。


噂では煩わしい存在となったナビアを、新しく王太子となったレオンハルトが消したのではという憶測が広まったが、真相は定かではない。


『何もせずあのまま黙って過ごしていれば援助金なんかより、もっと大きな恩恵が受けられたのに』


とナビアの死を部下から聞いたレオンハルトは思った。


✦ * ✦ * ✦


時を少し遡り、レオンハルトが王太子に選ばれたと知らせを受けた数日後のある夜まで戻る。


レオンハルトとリアーナは自身のモチーフとなるものを、何がいいかと考えていた。


リアーナは本を開きながら『やっぱ無難なのは植物だよね、自分の誕生花とか』と思った。


「あんま考え込むなよ、まだ時間はあるんだからな」


そんな悩むリアーナにレオンハルトは声をかけ、息抜きにテラスへと誘った。


「今後一生使うんだもの、素敵なものにしたいじゃない」


そう話しながらリアーナはレオンハルトに誘導されテラスへと出ると、手すりにつかまり星空を見上げた。


「俺はお前といられれば何だっていい」


レオンハルトは星空を見上げるリアーナの横顔を見ながら、そう声をかけた。


「何でもはダメよ、私達にピッタリなものにしなきゃ」


そう隣にいたレオンハルトと目を合わせ、リアーナは笑顔で話しかけた。


そんな夜空に光る星を背に、優しく微笑むリアーナを見たレオンハルトはあることを思った。


「なら星なんてどうだ?」

「星?」

「そうだ、リナにぴったりだと思うぞ」


レオンハルトはそう答えながら手すりを掴むリアーナの左手を取ると、自身の頬に当て目を見つめて語り出した。


それはレオンハルトがまだ戦場にいた時のことだった。


レオンハルトは先の見えない戦いに心が辟易していた。


『俺1人だと何も見えない、星もない』そう思いながら暗い空を見ていた時、『あるじゃん星』と言う声が聞こえ振り返ると、リアーナがぼんやり漂う光を指差していた。


そのまま2人で光を目指して歩くと、光はやがて夜空を輝かせる一つの星になった。


その小さく光る星がレオンハルトには何倍にも輝いて見えた。


星を見つめるリアーナの横顔を見ながら、自分の星は彼女だと思うと目が覚め、駐屯地にある兵舎で仮眠していたことに気付いた。


「私そんなに凄くないよ」


その話を聞いたリアーナは謙遜して言った。


「俺が勝手に思ってるだけだからリナはそのままでいい」

「なら私が星ならレオは月かな」

「俺が月?」

「いつもそばに寄り添ってくれて、心を暖かくしてくれるの」

「それはリナの方だろ」


そう言ってレオンハルトは目の前のリアーナを抱き寄せた。


『夜空を見上げれば必ずそこには星が輝いてる。どんな時も眩しいくらい俺を明るく導いてくれるリナに合ってる』とレオンハルトは思った。


『暗闇の中でも私を暖かい光で見つめ照らしてくれる月は、いつも私を優しく包んでくれるレオのイメージにぴったり』だとリアーナは心の中で思った。


するとリアーナは何かを思い出したかのようにレオンハルトから離れると部屋の中に戻り、本棚から一つの本を取り出した。


それはユレイオス王国の古い歴史書だった――――――

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