②.自覚した想い
父と話した後、学校(小中高一貫校)へ向かったリアーナはレオンハルトを探していた。
昨日の出来事を話そうと思ったからだ。
すると廊下の先でレオンハルトは目の前から歩いてきたリアーナに気付くなり、後ろを振り返り走って逃げてしまった。
そのためリアーナは慌てて追いかけた。
「レオ持って!話を聞いて!お願い!」
と必死に後ろから呼び止め2人は学校の庭園へと向かった。
しかしレオンハルトは既にリアーナが兄のジークベルトと婚約したことを知っているようで、不貞腐れた顔をし目を合わせとしなかった。
リアーナはすぐにジークベルトとの婚約など知らなかったと話し、このことを父が陛下にも説明すると言っていたと話した。
そんな必死な様子からリアーナは嘘をついてないとレオンハルトは思った。
「父さんにも話すって言ったのか?」
「そうよ、だから信じて。レオと喧嘩したくない」
そんな今にも泣き出しそうに語るリアーナにレオンハルトは気付いてしまった。
『俺がお前を好きなように、リナも俺のことが好きなんだ。だがその様子だと、自分の気持ちに気付いてないな』
そう思いながらレオンハルトは少し微笑み「分かった、お前を信じる。だから約束も俺は諦めない」そう言って彼はリアーナのことを決して諦めないと心に誓った。
それを聞いたリアーナは微笑んで安堵したように「よかった」と話した。
そんな優しく微笑む目の前のリアーナがレオンハルトにはとても可愛く見えた。
一方リアーナの父は自分が間違っていたことを陛下に正直に話した。
リアーナが好きなのはどうやらジークベルト王子ではなく、レオンハルト王子の方だと妻が言っていたと話た。
だが陛下は婚約はこのまま継続し子供たちの様子を見ようと、もちろん本人達が望まないのであればすぐに解消することにし他言もしないことにした。
それからレオンハルトはリアーナの気持ちが自分にあると気付くと遠慮なくいつもそばにいた。
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あれから時が経ち、リアーナは16歳になっていた。
レオンハルトは変わらず大好きなリアーナのそばにいつもいた。
今日はリアーナと歌劇場に行き2人で鑑賞するつもりだ。
レオンハルトはリアーナの家に馬車で迎えに行くと、エスコートしながら歌劇場のロイヤルボックス席に入った。
この席はボックス席(特別席)の中でも王室の人間とその同伴者しか入れない、更に特別な席だった。
『これで誰にも邪魔されずリナと2人きりだ』
と思い、レオンハルトは嬉しさから左隣に座る愛しいリアーナの顔を覗いていた。
不意に隣からの視線に気付いたリアーナがレオンハルトの顔を見つめると微笑まれ、それを見たリアーナも微笑み返した。
リアーナはレオンハルトを好きなことを自覚し、そして自分達はきっと想い合っていると思っていた。
「さっきから何を見てるの?」
「リナの顔、可愛いなと思って」
「それはいいから舞台を見たら?せっかく来たんだもの」
「そうだな、舞台見てるリナを見る」
「もう」
2人が見つめ合いながら楽しく会話をしていたそんな時だった。
急に後ろのドアが開きジークベルトとカールハインツ、それからフィリップがぞろぞろと部屋の中へと入ってきたのだ。
先頭に立っていたジークベルトは「やっぱりここだったか」と言って、リアーナの左側の座席に座った。
どうやらおめかしをして何処か嬉しそうに王宮を出るレオンハルトをジークベルトは見ていたらしく、カールハインツとフィリップに事情を聞き、知らないと答えた2人と共にレオンハルトの居場所を探していたようだ。
ジークベルトはリアーナの隣に座るとレオンハルトを見つめてニヤッと笑ったが目は笑っていなかった。
そんなジークベルトの視線に気付いたレオンハルトは「ちっ」と舌打ちをし背もたれに寄りかかった。
こうして5人仲良く?鑑賞していると、しばらくしてから舞台は休憩に入った。
するとドアの向こう側が騒がしくなり人の揉めている声が聞こえたかと思ったら、また急にドアが開いたのだ。
ドアを勢い良く開けたのは、褐色の肌に露出の高い服装をし隙間から鍛えられた筋肉が見えている、この国では見慣れない風貌の男性だった。
皆は突然のことで呆気にとられ言葉が出てこなかった。
男性は振り返って自身を見ているリアーナ達に陽気な感じで話しかけた。
「本当に人がいたとは思わなかったな。誰も使ってないなら俺がこの部屋を使おうと思ったんだ。悪気はなかった、失礼した」
と言ってリアーナ達5人を一人一人舐めるように見たあと、もう一度リアーナの方を見て「また会いましょう、綺麗なお嬢さん」と言ってドアを閉めた。
閉められたドアを見ながらレオンハルトは「今のは何だ?この部屋に入れるのは王族だけだ、俺はアイツを知らないぞ」と近くにいたジークベルトに話しかけた。
この部屋へ来るにはボックス席(特別席)専用通路を通ってしか来られなかった。
ジークベルトも分からないという表情になり「確かにこの部屋は王族しか使えないはず、スタッフが間違えて通したのか?」と言って考え込んだ。
「スタッフの制止を聞かず、そう簡単にここまでこれますか?」とカールハインツが言うと、皆の話を聞いていたフィリップが言った。
「あの格好、もしかしたらオルレギス帝国の者ではないですか?」
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その頃、先程リアーナ達のいたロイヤルボックス席に来た男性は歌劇場の出入り口へと来ていた。
そこから外へと出ると慌てた様子で隣に駆け寄って来た男性に声を掛けられた。
「殿下、勝手な行動は困ります」
「あ〜悪い悪い、だが王子達は見てきたぞ」
どうやらこの男性は別のボックス席から舞台を見ていたらしく、たまたまそこからロイヤルボックス席にいるリアーナ達を見つけ、その目で見たいと思い従者の制止を振り切り適当な理由をつけロイヤルボックス席へ向かったようだ。
「弱そうな奴らだった、だがあの公女はいい。国に連れて帰りたいくらいだ」
「駄目ですよ、それは許しません。アナタには既に正妃がいるではないですか」
「ふん、お前は見てないからそんなことが言えるんだ。あの綺麗さは他にはない」
「そう言って今まで何人の女性を国へ連れて行きましたか?結局飽きて全て捨てましたよね?」
「今度は本当だ。正妃が無理なら側妃はどうだ?」
「駄目なものは駄目です」
殿下と呼ばれた男性は、リアーナを国に連れて帰ることを従者に否定され不機嫌になって馬車に乗り込むと、わざと座席にドサッと腰を下ろした。




