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リアーナとレオンハルト  作者: 藤崎七奈
〜 Diamond 〜

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⑥.妙な気配

ここ最近王都では人がいなくなる事件が多発していた。


特に若い女性ばかりが姿を消していたことから、レオンハルトはいつかリアーナも巻き込まれてしまうのではないかと危機感を覚えていた。


「レオは考えすぎ、私がいなくなるわけないでしょ」


先に家に帰っていたリアーナを見たレオンハルトは安心したのか帰るなりすぐに抱き締めた。


「明日から行きと帰り一緒に行動しよう」

「もうレオは心配性なんだから」

「リナがいなくなったら嫌だ」


それを聞いたリアーナは一度離れ離れになったことで、レオンハルトの不安が増したのだろうと思った。


「もしかして人がいなくなる原因が何か分かったの?」


レオンハルトは今回のこの事柄の情報を得て不安に駆られたのではとリアーナは思った。


「少しだけな」と言い、レオンハルトは聖騎士団が得た情報を話してくれた。


* ✦ * ✦ *


王都から少し離れた森の奥にはニ百年程前から『鬼ばば』が住んでいると噂があった。


その噂によると彼女は禁術である『黒魔法』を悪魔から借り長生きしているといわれ、その不気味な噂から鬼ばばと呼ばれ恐れられ森には長い間誰も入っていなかった。


だが最近その森の麓の村にゾンビが頻繁に出るようになり、王都で行方不明者が多数出た時期とゾンビが現れた時期が近いことから近々本格的に森の麓の村の調査と、鬼ばばの存在確認が行われることになった。


元々あちこちの町で行方不明者やゾンビが出たという話は、前々からあったとレオンハルトは話した。


「じゃあその鬼ばばが関係してるってこと?」

「さぁな。俺はそんなん信じてねぇけど、パレジオンが黒魔法に手を出してる奴の気配を森から感じるっつーから、そうなのかもな」


この世界には神から人々に与えられた魔法『白魔法』が、そして悪魔から力を借りて得られる『黒魔法』の2つの魔法が存在した。


しかし神を崇める人間にとって神の敵である悪魔から力を得る黒魔法は禁術とされていた。


* ✦ * ✦ *


そこから数週間後、森の調査へと向かった聖騎士達が帰還予定だった日を過ぎても一向に帰えらず連絡もつかなかった。


そのためもう一度聖騎士を派遣したが、その者達の行方も分からなくなっていた。


「だから今度は俺の部隊が行くことになった」


家に帰ったレオンハルトはそうリアーナに説明をしていた。


「ならこっちからも一緒に同行した方がいいかもしれないわね」


するとレオンハルトの話を聞いたリアーナが魔法師も同行した方がいいと言った。


「まさかお前まで来るって言うんじゃないだろうな?」

「もちろん私も行くわよ」

「そう言うと思ったから伝えるか迷ったんだよな…」


レオンハルトはリアーナを危険なことに巻き込みたくはなかったが、自分が森へ行くと言えば正義感の強い彼女も付いてくると言うんじゃないかと予想もしていた。


✦ * ✦ * ✦


1週間後、森の調査に行くことが決まったリアーナとレオンハルトはおめかしをして城へときていた。


今日は王に森へ行くことの報告をしにきたのだ。


謁見の間で2人は王に会いレオンハルトは部隊長として森の調査に行くことを、リアーナも魔法師として同行すると報告した。


「そうか、危険を伴うかもしれん。気を付けて行ってくるのだぞ」


すると王はレオンハルトに無事に帰ってきたら褒美をやると言い何が良いかと聞いた。


どうやら王はレオンハルトのことを気に入っているようで、時々こうして顔を見せ近況報告しろと言っていたようだ。


するとレオンハルトは褒美はいらないので彼女(リアーナ)との結婚を認めてほしいと言った。


「それでわざわざ余の所に連れてきたのか。お主、名はなんと言ったかな?」


と王は微笑みながらリアーナに名前を聞いた。


「私はリアーナ・カリスタと申します」とリアーナが答えると「あのカリスタ卿の娘か。確かに1人娘がいたと言っていたな。よく見れば顔立ちが似ている。奴は優秀な人物だった。惜しい人材を失ったと思ったが、そうかお主が娘か。奴の娘なら何の問題もないだろう。レオン、無事余の下に戻ってきた暁には2人の婚約を認めよう」


と王は感慨深いように話し2人は頭を下げてお礼を言った。


謁見の間を出るとリアーナは「いきなり結婚なんて話、私聞いてないわよ」とレオンハルトに詰め寄った。


だがレオンハルトは悪びれる素振りもなく「ここに来たのは最初からそれが目的だった、リナを驚かそうと思ってな」と言った。


いつかはしたいと思っていた結婚の話をされリアーナはどこか照れた表情になった。


レオンハルトはそんなリアーナを抱き寄せると「帰ろう」と言い2人は長い廊下を歩き出した。


すると途中の廊下で壁に寄りかかった人物がいた。


どうやらリアーナとレオンハルトが来るのを待っていたようだ。


「もしかしてシオン?」リアーナはその人物の顔を見るなりレオンハルトから離れ近付いて話しかけた。


「シオンもお城に来てたの?」

「まぁね」


するとリアーナの後ろにいたレオンハルトが険しい顔つきでシオンに言った。


「いい加減、正体を言え。つーか人間に化けるなら、どう考えたってお前はガタイのいいおっさんだろ。なんで細身の若い男なんだよ」

「何に変装しようが僕の勝手でしょ。というか僕、男だなんて一言もいってないけど」

「はっ?」


するとシオンは目の前のリアーナの髪に触れながら言った「まぁリアーナが望むなら僕はそれでも構わないけれど」


そう話したシオンにリアーナは驚いて「シオン、女性だったの?」と聞き、そう聞かれたシオンは彼女に微笑んだ。


レオンハルトは慌てて彼女を後ろから抱き寄せシオンから離すと「女だろうが関係ない、リナに触れるな。パレジオン」とレオンハルトは言い、リアーナはその言葉にさらに驚いた。


「えっ、パレジオン?」


そうシオンの正体はレオンハルトと契約するドラゴンのパレジオンだった。


人間の姿に変装し時々リアーナのことを見守っていたのだ。


そして男装をしていたが実は女性(メス)だった。


「で、何の用だ?」

「特に用はないよ、リアーナの綺麗な姿を見ようと思っただけさ」

「ならもう見ただろ、帰るぞ」


そう話しレオンハルトはリアーナを連れシオンから離れた。


そんなレオンハルトとリアーナの後ろ姿を見ながらシオンは思った。


『何か妙な気配を感じる、2人になにもなければいいけれど』


* ✦ * ✦ *


数日後、レオンハルトの部隊員の半数である50名が、それから魔法師20名(もちろんリナが今回の部隊長)が聖騎士団本部前に集まっていた。


そんな中、レオンハルトが整列していた皆に向かって「出発前にお前らに力をやる」と言うと、ドラゴンであるパレジオンが上空に現れ、聖騎士と魔法師達に向かって青白い光を降り注ぎ何処へと姿を消した。


「これで攻撃力が上がったはずだ」とレオンハルトが言うと一斉に歓声が上がった。


それを見たリアーナは「なら私からも」と言うと前に出て皆の方に振り向き、両手を地面に向けて前に出し目を閉じた。


すると聖騎士と魔法師達の足元に大きな魔法陣が現れ黄色い光で一人一人を包んだ。


目を開けたリアーナは「これで怪我がしにくくなったはずよ」と言った。


リアーナは皆に防衛力を付与したのだ。


ドラゴンの膨大な力を要するレオンハルトと、魔法の才がずば抜けているリアーナ、この2人が同行する今回の編成に皆はとても心強いと思った。


この辺りから2人は一目置かれた存在となる。


それからそれぞれが馬に跨り森へ向けて出発した。


そして2人は自分達の関係がどこからか漏れるくらいならと思い周囲に隠さないことにした。


だがレオンハルトが魔法師の女性と噂になっていたことから並んで前に立つ2人の後ろ姿を見ながら噂の魔法師はリアーナなのか、それとも別の女性なのか、そして薔薇の花束の女性とはどうなったのかと聖騎士達はヒソヒソと噂話をしていた。


そんな聖騎士達の後から1人の聖騎士が声をかけた。


「邪魔」


そう冷ややかな口調と目つきで言い放った彼は、まるで噂話を遮るかのように真ん中を堂々と進んでいった。


「あんな奴、聖騎士にいたか?」

「部隊長の推薦らしいぞ」

「なら強いのか?」

「どう見ても俺等より年下だよな」


彼は先頭にいた2人の所に追いつくと躊躇なく間に入りリアーナに声をかけた。


「リアーナ、何かあれば僕を頼ってね」


それは聖騎士の制服に身を包んだシオンだった。


「ありがとう、シオン」

「お前は何でその格好なんだよ」

「この方がリアーナのそばにいられるからだよ」

「よく似合ってるわよシオン」

「ありがとう、リアーナは今日も綺麗だよ」


2人と気兼ねなく会話をする見慣れない顔の聖騎士はいったい何者なんだと皆は思った。


森まではまだ少し距離があり、今日は途中の道すがら野営することになった。


それぞれでテントを張りリアーナが中に入ると後を追うようにレオンハルトが一緒に中へと入ってきた。


「一緒に寝よう」そう言ってレオンハルトは2人が余裕で入れるくらいの大きさの寝袋をその場に敷いた。


「リナと寝るために大っきいの持ってきた」

「準備いいんだから」


2人は共に寝袋に入りレオンハルトはリアーナを腕枕しながら近くに抱き寄せた。


「今日少し肌寒いからレオと寝たいと思ってた」


そう言ってリアーナは目の前のレオンハルトに抱き着いた。


自身にくっついてきたリアーナがレオンハルトは愛おしくてたまらなかった。


どんな所でもリアーナとこうして寄り添えるなら幸せに変わるとそう思いながら、その夜レオンハルトは眠りについた。


✦ * ✦ * ✦


『待てリナ!どこに行くんだ?!』


気付くとレオンハルトは薄暗い暗闇の中で前を歩くリアーナを追いかけていた。


後ろから声をかけられ振り返ったリアーナは無表情で言った。


『私はアンタから離れたいのに何で追いかけてきたの?もうそれ以上近づかないで』


そう言ってリアーナはまた前を向いて歩いて行ってしまった。


レオンハルトは何故かその場から動けずリアーナが自分から遠ざかっていく後ろ姿をただ見ていることしか出来なかった。


レオンハルトが目を開けると心配そうにこちらを見ているリアーナの顔があった。


「どうしたの?うなされてたよ?」


と目を開けたレオンハルトの頬をリアーナが撫でると、レオンハルトは思わず目の前のリアーナを抱き締めた。


「怖い夢見た」


そう話たレオンハルトの身体は少し震えていた。


「大丈夫、私がそばにいるよ。レオのことは私が守ってあげる」


そう言ってリアーナはレオンハルトの頭を何度も優しく撫でた。


『そうだ、リナがいなくなるわけない』


とレオンハルトは思い直し、身体の震えもいつの間にか止まっていた。

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