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リアーナとレオンハルト  作者: 藤崎七奈
〜 Le Lien 〜

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22/40

②.やっと会えた

リアーナが父に呼ばれたあの日「実はお前に婚約の話が来ている。だがあまり良い噂を聞かない人物なのだ」と告げられていた。


そのためこちらで調べたところ噂通り女性を常に連れ歩いてると報告を受けたと言い、そんな男とリアーナを結婚させたくないと父は正直に話した。


そして「どうするかはリアが決めなさい。断ってもいいから」と言われたのだ。


相手の家は伯爵家、貴族には逆らえない身分社会の中で相手側から来た縁談を断るのは失礼に値する、それを考えるとリアーナは困ってしまった。


そこですぐに父に領地へ行って考えたいと言うと父は承諾。


こうしてリアーナは久しぶりに領地へ向かったが、レオンハルトには会えなかった。


もしかしたら止めてくれるかもしれないと淡い期待を抱いていたが、そんな甘い考えだから会えなかったんだとリアーナは諦めた。


リアーナはレオンハルトのことが好きだった。


だが彼に会えなかったことでリアーナの心は固まってしまった。


家へ帰り婚約を承諾すると父に伝え「本当にいいのか?苦労するぞ?考え直せないのか?」と何度も言われたが、リアーナの心は既に決まっていた。


どうやら父は断るつもりだったようだ。


それから1度だけ先方の『ネシレウ伯爵家』で顔合わせをしたが、相手はリアーナに全く興味がないようだった。


「これは親が勝手に決めたことで俺の意思じゃない。当たり前だろお前は平民なんだから。そっちは嬉しいだろうが俺には何のメリットもない。なんで俺が平民なんかと…」


こう言って一切リアーナと目を合わせなかった。


婚約者の名は『ダグラス』、彼は一つ年上で学校も同じだったことから何度か廊下ですれ違ったが、リアーナは毎回無視をされた。


それどころか女の子と一緒にいるのを何度も目撃した。


父もそんなリアーナを哀れに思い、相手の親に抗議文を送ったりしたが何も改善することはなかった。


リアーナは手紙で婚約者のことをレオンハルトにいつも報告していた。


『もう何年レオに会ってないんだろう。全く会えてない女から毎回こんな愚痴みたいな手紙もらって、嫌になってないといいな』


とリアーナは書き終えた手紙を見ながら不安に思った。


“いつも私の話ばかりして、ごめんね。もし迷惑だったら返事はいらないから” と手紙の最後に付け加えた。


これでレオンハルトとの手紙のやり取りも終わりかなとリアーナは思った。


だが2週間後、レオンハルトから手紙の返事が届いた。


そこには “リナは俺にしか本音が言えないんじゃないか?俺もお前にしか言えないことが沢山ある。だからリナが手紙をやめたいと言っても俺はやめないからな” と遠回しに今まで通り何でも言ってくれて構わないと書かれているようだった。


リアーナはそれを読みとても嬉しかった。



________________



こうして月日は流れ、リアーナは16歳になっていた。


ある日、リアーナは久々に婚約者ダグラスの家に呼ばれ、どうせ大した用でもないんだろうと思いながら通された部屋へと入ると、ダグラスはソファーに腰かけその隣には『セーピオ子爵家』の息女である『ミレーヌ』という女性がいた。


ダグラスは相変わらずリアーナとは目を合わせず用件だけを言ってきた。


要約すると数ヶ月後、王城で行われる国王主催のパーティーで皆の前でリアーナを悪者にし婚約破棄をするということだった。


そうすればすんなり破棄出来るだろうとダグラスは考えたようだ。


自分も隣いる女性とそろそろ身を固めようと決めたそうだ。


それだけを告げられリアーナは呆れながら家へと帰った。


そしてことの全てを手紙に書きレオンハルトへと送ったのだ。 


* ✦ * ✦ *


それから数ヶ月、あっという間に王城で開かれるパーティーの当日となった。


朝目を覚ましたリアーナは、とうとうこの日が来てしまったかと憂鬱だった。


リアーナは身支度をすませ部屋を出ると、何だか家の中がいつもより少しだけ騒がしかった。


不思議に思って1階への階段を下りると、リアーナに気付いたメイドが興奮した様子で話しかけてきた。


「お嬢様、おはようございます。すぐにこちらへ来てください」


そう言われ案内された場所へリアーナが向かうと、そこには真新しいピンク色のドレスが置いてあった。


「こちらのカードと一緒に、今朝届きました」そうメイドに渡されたカードを見ると ”今夜、王城で待ってる” と、それだけが手書で書かれていた。


リアーナが起きたことに気付きそばへやってきた父は「お前を好いていないあのダグラス()が贈ってくるわけない」と言うし『いったい誰が?』とリアーナは疑問に思った。


ドレスはまるでピンクの少し大きな花弁を散りばめたようなデザインで、どこからどう見ても高そうな品物だった。


リアーナはそばにいたメイドにこのドレスを持ってきた人は、どんな人物だったかと聞いた。


「とても紳士的な方でした。『こちらを、そちらのお嬢様にお渡しください』とだけ話されるとすぐいなくなられて。ですがあの方を私は知りません。騎士のような雰囲気でしたが、この国の騎士の格好とは違います。もしかしたら異国の方では?」と話した。


それを聞いたリアーナは『私が今日パーティーに行くことを知っていて、ピンクの花弁のドレスを贈ってくる異国人。そこに添えられていた手書きのメッセージ』と考え、1人だけ思い当たる人物がいたが本当にその人がパーティーに来るのかリアーナには信じられなかった。


でももしも本当に会えるのだとしたらと考えたら、リアーナはメイドに言っていた。


「白いコスモスの花を用意して、庭に咲いてたはずだから」


そう言って庭の花壇に咲いていたコスモスを用意させると、リアーナは髪飾りとして頭に挿した。


「嬉しそうだな」夕刻になり馬車に乗ると、向かいに座った父がどことなく嬉しそうなリアーナの顔を見て言ってきた。


「気のせいですよ」

「まぁ、今日はいろいろあるだろうが、お前は何も心配いらない」


宰相である父は今日のパーティーで何が起こるのか、まるで全てを知っているかのような口振りだった。


「最初からこのドレスを贈ってきた人物が誰なのか知ってるということですか?」

「いや、それは知らなかった」

「それは?」


リアーナの問いに父は口を濁らせ、それ以上は話さなかった。


会場へと到着すると馬車を降りた父はすぐにリアーナから離れた。


1人残されたリアーナは、招待され既に来ていた学校の友達のそばへと向かった。


「そのドレスとても素敵ね、頭のコスモスも可愛い。私も花を挿せばよかったわ」とリアーナは今日のコーディネートを友人達に褒められた。


その後、少し経ったあと国王夫妻が登場しその傍らには宰相であるリアーナの父の姿もあった。


そして国王がパーティー開会の挨拶をした。


するとすぐにダグラスが例の女性を連れリアーナの前へと現れると声を張って言った。


「皆の前で宣言する、俺はお前と婚約を破棄する。理由は言わなくても分かるだろう?」


リアーナはいきなり始まったダグラスの婚約破棄宣言に驚いたが『合わせなきゃいけない感じ、だよね?』と思い、戸惑いつつも「何のことだか、私には分かりません」と皆に注目されながら答えた。


わいわい賑わっていた会場は静まり返り、何が起きたのだろうと皆がリアーナ達を見つめていた。


するとダグラスはリアーナのその言葉を待っていたとでも言うような表情をしたあとに「とぼけるな、ここにいる女性ミレーヌと俺の仲を疑い酷いことをしただろ?忘れたとは言わせない。俺を愛しているのは分かるが、嫉妬は見苦しいぞ」とまるで何か小説の一文でも読んでいるかのように話すダグラスに、リアーナは徐々に自分の心が冷めていくのを感じた。


『私、なんで浮かれてたんだろう。彼がここに来てるかもしれないなら、この状況も何処かで見てるかもしれないじゃない。皆んなの前で悪者になる姿を見せたくなかったな…』とそんなふうに思ってしまった。


「そこまでだ!」


その時、会場の後方から誰かの声が響き、皆が振り返って注目した。


すると声を上げたと思われる人物が人をかき分け、リアーナ達のそばに少しずつ向かって歩いてきていた。


自身の方へ近づいてきた男性の顔を見た瞬間リアーナは思わず「…レオ」と愛称で呼んでしまい、慌てて頭を下げ「失礼いたしました。レオンハルト皇太子殿下にお目にかかります」と言い直しスカートを摘み挨拶した。


するとリアーナのそばに来た彼は「頭をあげろ。いつも通りレオでいい、な?リナ」と言い、リアーナの頭を上げるように声をかけた。


リアーナはそれを聞き頭を上げ目の前のレオンハルトと目を合わせると優しく微笑まれたので、思わず自分もつられて微笑んだ。


2人は見つめ合いながら『やっと会えた』と互いに心の中で思った。


それは6年ぶりの再会だった。


久々の再会で見た目や背丈が変わっていても、2人は互いをすぐに認識出来た。


「先に行かせてすまない、国王に挨拶していた。ところで何か絡まれていたようだが、俺の連れに何かようか?」


と言ってレオンハルトはダグラスの方を見ると鋭く睨んだ。


突然、隣国である『ラノワ帝国』の皇太子の登場と、リアーナを『俺の連れ』だと言って睨まれたことでダグラスはパニックになり、目を見開きながら口をパクパクさせた。


レオンハルトはリアーナが着ているピンクのドレスと揃いの色のネクタイをし、胸にはリアーナと同じ髪飾りの白いコスモスの花を挿していた。


そう2人はまるで事前に揃えてきたかのような格好だった。


そして先程お互いを愛称で呼んでいたこともあり、会場にいた人達もそれに気付いていた。


「いったいどうなってる?!」と言って皆一斉に驚いた様子だ。


だが1番驚いたのはリアーナだった。


突然のことが多すぎて頭が付いていくのがやっとだった。


そのため何が起こっても、とりあえず平常心でいようと心掛けた。


『ねぇレオ、私を助けようと登場してくれたのかもしれないけど、このあとどうするの?』とリアーナはレオンハルトの目を見つめながらそう思った。


すると不安げに見つめてきたリアーナに『心配いらない、俺に任せろ』と思いながら見つめ返し、レオンハルトは口角を少し上げた。


そんな彼にいったいどうやってこの場を収めるのかとリアーナが思っていると、まずはダグラスから語りだした。


「…あの皇太子殿下、先程連れと仰いましたが、それは私の婚約者です」


と遠慮がちに話しかけ、するとまた予想外の言葉がリアーナの耳に飛び込んだ。


「いや違う、お前ではなく俺の婚約者だ」とレオンハルトは話し「は?!そんな話聞いてないぞ!」とダグラスは思わず声を荒げた。


そんな興奮するダグラスに、レオンハルトは落ち着いた面持ちで言い放った。


「あぁ、今初めて公表したからな」

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