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剣と迷宮と異世壊と  作者: 橘 乙人
序章 新しい恩人
9/10

9話『俺と才女と天才と』

「内装も豪華ですね」


「これは凄いなぁ。うちの村で一番でかい教会でもこんなに豪華じゃないぞ」


 細部まで拘った内装が俺達の視線を奪う。まるで教会のような雰囲気を漂わせる大広間をゆっくりと歩き続けている俺達と先導する受付の女性。しばらく歩き、大きな石像の前でその歩みを止めた。


「では初めての方への説明をいたします。我々は組合(ギルド)と呼ばれ、未踏の領域、迷宮(ダンジョン)を探索する人々を支える組織です」


「存じ上げてます」


 アーサーさんが優しげに相槌を打ち、それに同調するべく俺もアリナさんもゆっくりと首を縦に振った。それを見て女性は話を続ける。


「ダンジョンには魔物だけではなく、高濃度の瘴気が充満しており危険とされています。そこでギルドの登録作業のひとつとして()()を授ける儀式があります」


 そう言いながら女性は3枚の紙を取り、こちらに各1枚ずつ手渡した。


「こちらにお名前を書いてください。それが終わったらこの像の前に紙を置き、力を込めるイメージで紙に手をかざしてください」


 その説明を受けて、俺達は黙々と自分の名前を紙に記入する。

 最初に終わらせたのはアリナさん。跳ねるような足取りで紙を指定された台に紙を置いた。


「アリナ・イヴァルさん。それではこれより、加護の儀式と登録作業を行います。ゆっくりと手を前に出して、かざしてください」


「はい!」


 そう言ってアリナさんが可愛らしく片手を伸ばすと、像の中心部に彫り込まれていたなにかの紋章らしき部分が怪しく光る。


 その光がゆっくりと、まるでアリナさんを照らし出すかのようにゆっくりと伸びていく。


「おお……なんかくすぐったいです!」


「え、あれ物理的に干渉してくるの!?」


「なんか……緊張してくるね」


 時間にして約数十秒。怪しい光りの照射が終わるとアリナさんはゆっくりと目を開ける。

 アリナさんの眼の前には、多くの文字が書き込まれている紙があった。

 本来名前しか書いていないはずだが、あの光が文字を書き込んだということだろう。筆記魔法は俺でも聞いたことがある。

 

「アリナ様は……まあ! 治癒魔法の適正が!? それに魔力量もかなり高い。久しぶりにここまでの数値を見ましたよ!」


「へ〜! そこまで分かるんですね!」


「はい。我々ギルドもこういった情報をもとに適切な探索アドバイスを行う事ができるんですよ。そちらのお二人もお願いしてよろしいですか?」


 その言葉を聞いてアーサーさんも像に近づく。入れ替わるように戻ってきたアリナさんは俺の隣に駆け寄ってきた。


「あれ凄いですよ! ちょっとくすぐったいですけど」


「ああやって客観的に評価されるのはわかり易い反面、評価されなかった時が怖いですよね……」


 などと雑談をしていると、視界外から謎の叫び声が轟いた。


「これはぁー!? 剣術適性最高値のみならず、魔力量も膨大……もしかして()()()()の再来……!?」


「おぉ〜! ……凄いことなんですよね? 喜んでいいんですね?」


「凄いですよ! この数値はうちで登録されてる中でも1人しかいません! なんならすぐにでもS級に登録したい数値です!」


 アーサーさんに向けて熱弁する受付嬢の姿を、俺達二人は関心の眼差しで見守る。強いとは思っていたが期待通り――いや、それ以上の結果と言っていい。


「アーサーさん凄えなぁ。本気で最強じゃん」


「兄様流石ですけど……こうやって目に見える形で評価されるとなんて言ったら良いかわかりませんね」


 圧倒という言葉が俺達二人の間に漂う。すべてを終わらせたアーサーさんが姿勢良くこちらに戻ってくる姿を見ると拍手すらしたくなる。


「この後にやる俺の気持ちにもなってくださいよ」


「こんなの僕が調整できることじゃないだろう?」


 それはそうだがいい加減にしてほしい。俺は二人より劣るのだろうから。


「自信持て。キミは強いよ、僕が保証する」


「ヴェルトさん、私も応援してます!」


 優しく俺の背中を叩いてくれるアーサーさんと、両腕を胸の前で揃える可愛らしいポーズを見せるアリナさんに勇気づけられる。


「あざっす。行ってきます」


 呼吸を整え、像の前まで歩を進める。どんな結果でも受け入れる所存だ。大丈夫、もう荷物にはならない。

 ゆっくりと書類を指定の台に置き、合図をする。


「お願いします」


 ひとり小さく呟いたあと、翳した右掌に力を込める。はたから見ていた怪しげな光に包まれる。なるほど少し身体が痒くなる感覚がする。

 光の照射が終わり女性の合図で瞼を開く。さぁ…俺は一体どれくらいの力を持ってるのだろうか。首を左右に傾けて柔軟しながら、分析結果を待つ。


「こ……これは……」


「どうでしょう? 流石にアーサーさんほどでは無いとは思いますけども……」


「こんなの見たことない……! ()()()()()()()なんて!」


「お……?」


「それどころか()()()()()!? これはとんでもないこと……」


 なんだろう。アーサーさんの時以上に盛り上がっているようだ。そんなに凄いことなのかと少しだけ期待してしまう。


「なんか凄いこと……だったりして?」


「凄いですよ! だって……」


 そう言って女性は紙に向けていた視線をこちら側に向け直してひとこと言った。


「魔力も技能適正もゼロ! スッカラカンですから!」


「へ?」


 それがどういう状態を指すのかは分からないが、取り敢えず罵倒されているということは理解できた。

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