あの店のラムネ
しっかりとした物語構成にはなっておりません、ご了承ください
しゅわしゅわしゅわ
しゅわしゅわしゅわ
からん
「おばあちゃんラムネもう一本ちょーだい」
「はい、90円ね」
「ん、ありがと!」
「膝の絆創膏、何かあったのかい」
「それがさぁ、小学校で友達と喧嘩して転んじゃって…」
「それは痛かったろうねぇ」
「でもここのラムネとおばあちゃんに話聞いてもらったからなんか元気出てきたかも!ありがとね!」
しゅわしゅわしゅわ
しゅわしゅわしゅわ
からん
「おばあちゃん、妹の見舞い行くからラムネ二本くれる?」
「はいよ。お大事にね」
「妹ここのラムネ大好きだからすぐ元気になるよ!ありがと!」
しゅわしゅわしゅわ
しゅわしゅわしゅわ
からん
しゅわしゅわしゅわ
しゅわしゅわしゅわしゅわしゅわ
しゅわしゅわしゅわしゅわしゅわしゅわしゅわ
からん
「ラムネのビー玉最初に取れた奴が勝ちな!」
「いいぜ!よーいどん!」
しゅわしゅわしゅわしゅわしゅわしゅわしゅわしゅわしゅわ
からんっからから…
「ラムネふたつ。」
「冷たくて気持ちい…」
ごくっ
しゅわしゅわしゅわ……っ
「10年前と、変わらないな」
変わったのは、人だけ。
昔はこの店にいた子供は僕だけだった。
店番をしていたのは優しいおばあちゃんだった。
ここのラムネは、悩みを優しく聞いてくれた。
甘くてしゅわしゅわしててすーって溶ける。
ビー玉の転がる音は心を落ち着かせてくれた。
小学校であったこと。
病弱な妹の体調。
普段の何気ないことも全部。
ここのラムネが聞いてくれた。
夏休みの自由研究はおばあちゃんと一緒に完成させたし、読書感想文だっておばあちゃんのおすすめの本にした。
友達と遊ぶ約束がない日はおばあちゃんが話し相手だった。
いつでも優しく笑ってるおばあちゃんとしゅわしゅわ弾けるラムネが大好きだった。
妹も、ここのラムネが大好きで、お見舞いに持っていくと喜んだ。
だから僕は
あの日と変わらないラムネを
あの日と違う店番のお姉さんから
あの日と同じように二本買って
あの日と違う道を通って
あの日と同じ人へ逢いに行く
からんと同じ音をたてて
炭酸をしゅわしゅわ言わせて
あの人の前へ置いた
あの人はもう笑って受け取ってくれないけど
あの人と僕が大好きなおばあちゃんの話はもうできないけど
あの人はきっと喜んでくれるから
おばあちゃんが大好きだったポピーを添えて
今は亡き妹よ
『あの店のラムネだよ』
大切な人(10年前に亡くなった妹)へ大切な人(10年前店番だったおばあちゃん)からの贈り物
10年前と変わらない、ラムネの味に思いを馳せて____