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ねぼすけマンドレイク

魔物を滅ぼすべく、着々と勇者が近づいてくる魔王城。

僕はそこで、運び屋として働いている。


ここは、魔王城地下にある大倉庫。

武器や、城中の食料など様々なものが保管されている。

「今年も豊作だな。」

眼の前には大量の、木箱に入ったマンドレイク。

昨日収穫したばかりのものだ。

マンドレイクとは引き抜くときの叫び声を聞くと倒れてしまう、厄介だがとても効果のある薬草だ。

城の畑でたくさん育てているため、城中の魔物が収穫を手伝う、恒例のイベントになっていた。

唯一問題があって、毎年、数人が耳栓を忘れて場内の病院に運ばれて行くのだ。

「そう言えば、今年誰も運ばれてなかったな。」

一緒に運んでいたガイコツのホネさん(あだ名)が言った。

「俺昨日、ドクターの助手やってたんだけどさ、誰も来なかったんだよ。」

「珍しいな、毎年一人はいるはずなのに。」

珍しいこともあるものだ。と、思いながら手に持っているマンドレイクを見てみると、

「ねえホネさん。今これ動かなかった?」

「まさか、だって引き抜いてから一日経ってるんだぜ?動くわけがないさ。」

「だよね。疲れてるのかな。」

もう一度箱の中を見る。

………ウニョ。

「動いた動いた動いた!!!」

「おわっ、急におっきい声出すなよ。ほら、持ってもびくともしてないだろ。」

ホネさんが持っているマンドレイクを見る。

「確かに動いてな…」

…ウニョウニョウニョウニョ

「「ぎゃああああああああ!!」」

ふたりともマンドレイクを投げ出して倉庫から飛び出た。

「うわっ、どうしたんだふたりともそんなに慌てて。」

「ま、ま、魔王様…う、動いた。動いた。」

「マンドレイク、マンドレイクが…」

必死に訴えるが、やはり冗談だと思われたのだろう。

「何言ってるんだふたりとも。昨日収穫したマンドレイクが動くわけないだろ。今日はもう休め。手に持ってるマンドレイクは俺が片付けておくから、な?」

”手に持ってるマンドレイク”?

ホネさんの手を見るとさっき持ち上げたマンドレイクがガッチリくっついていた。

………パチッ。

マンドレイクと3人の目があう。

まずい。3人は瞬時に防音障壁を展開した。

「ギャーーーーーーーーーーー!!」

近くを歩いていた数人がバタバタと倒れていく。

数分後。叫びが消え、魔王様は、巻き込まれた魔物たちを医務室に運び、二人は大人しくなったマンドレイクを手に、もう一度倉庫内へと戻った。

中のマンドレイクも大人しくなっている。

「だから、当日倒れる人が居なかったのか。」

「本当なら引っこ抜かれたときに叫ぶはずなんだけどな。」

テキパキと箱にマンドレイクを詰めていく。

「この中にまだ、寝坊してるやつがいたりして。」

ホネさんが面白半分にそんな話をした。

その後二人は箱を薬草棚にしまって、出口に向かう。ホネさんが端の方にマンドレイクが落ちているのに気がついた。それを拾って僕の方へ持ってきた。

「これ、ずっと見てると可愛く見えてくるよな。」

「ああ。なんとなくわかるかも。」

和気あいあいとした雰囲気。その中で、静かに目を覚ましたマンドレイク。

気づいたときにはもう遅く、マンドレイクは精一杯に叫んだ。

「ギャーーーーーーーーーーー!!」

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