2話 親切な人
こんにちは。紫香楽宮 柴です。もう少し日が隠れてきています。餓死しそうです、ゾンビですが。と、空腹で変なことを言い始めた時、誰かに話しかけられました。
「こんにちはゾンビさん。どうしたの?顔色悪いけど」
話しかけてきたのは人間の女の子でした。制服を着ているので学生でしょう。
「顔色が悪いのはゾンビなんで元々ですね~。実はお腹が減ってしまって…」
「そうなの?なら食べる?」
肩に掛けていたバッグから人肉を差し出してくれましたが…
「人肉はちょっと…」
「ゾンビは人肉を食べるんじゃないの?」
「そうなんですけど…何故か食べられなくて…」
「好き嫌いはダメだよ!ちゃんと食べなきゃ!」
「いえ…好き嫌いではなく…アレルギー的な感じなんですよ」
「なるほど、じゃあダメだね。うーん…人肉が食べられないゾンビなんて大変そうだねぇ」
「はい…ホントに…」
グー と、音が鳴りました。私のお腹から聞こえました。ゾンビですが、まだ腹の虫は仕事しているみたいです。
「あら。ゾンビも音が鳴るのね」
「そうみたいです。はぁ…美味しいモノが食べたい…」
「じゃあうちにおいでよ!一緒にご飯食べよう!」
「なんですと!?いえ…でもお金も無いですし…悪いですよ」
「いやいや、こんなところで見捨ててそのままってのも後味悪いしね!ご飯だけに!」
…?何を言っているんだろう…というツッコミは何とか飲み込みました。私は空気も読めるゾンビなのです。それに、ご飯を食べさせてくれる人なんて、良い人しかいないに決まっています。
「ついてきて!美味しいモノ食べさせてあげる!」
「は〜い」
親切な人もいるものですね…と思いながら、ついていくことにしました。私は少し足が遅いのですが、合わせて歩いてくれました。
「すみません、遅くて。鍛えようかなとも思ったのですが、そもそも空腹でまともに動けないことに気付いて諦めました」
「だいじょうぶ!一緒にゆっくり行こうね!ところで名前を言ってなかったね。私は酔灯 高音、よろしく!」
「私は紫香楽宮 柴と言います。よろしくお願いします。名前は好きに呼んでいただけたらと」
「じゃあ…しーちゃんね!うんうん、良いネーミングセンスだ」
しーちゃん…昔、団栗につけていた名前もしーちゃんでした。ちょうどそれが椎の実だったからです。これも運命…なんでしょうか。
「と、自己紹介もお互いに終わったところで、タイミングよく着いたね!ここが私の家!」
スチールグレーの切妻屋根にモルタル壁を採用している、至って普遍的で平凡な家でした。そこまでひび割れとかは見られないので、建ててからそんなに経っているわけでもなさそうです。と、あまり人様の家をジロジロ見るのは良くないですよね。
「さぁどうぞ!」
「はい、お邪魔いたします」
玄関を通り抜け、入ってすぐ左にある客室に案内されました。と、入ろうとして気付きました。
「そういえば私、ゾンビになってからだいぶ経つんですけど、まだ一回も体洗ってなくて…」
「じゃあ先にお風呂だね。着替えはある?」
「ありません」
「おっけー、後で用意しておくから、とりあえずこっちきてー」
手招きされて、さっきの客室前より廊下を先に進んで右に行くとお風呂場でした。お風呂場はトイレと別になっている点と、天井からカベ、隅まで定期的にキレイに掃除をしているのがわかります。
「本当にお風呂までいただいて良いんですか?汚れちゃいますよ」
「いいのいいの!さっさと入っちゃって、一緒にご飯食べよ!」
「…ありがとうございます」
「どうしたの?泣いてる?」
「え…」
…もう干からびたと思っていたのですが…まだ、溜まっていたんですね。
「…いえ、気にしないでください。これはアレです。嬉し涙です」
「なるほど!でも、そっか…そんなに…ボソ」
「ではお風呂もいただきますね」
「、あ、あいよー」
バランスって難しい…なんか微妙なところで終わってしまった…まぁ次話は期待してください!お風呂回にご飯回ではっぴーはっぴー(^^♪なんでね…(予定)
これからものんびり自由に書いていきます。この調子だったら10話行くまでに1年かかりそうだけど。