【漫才】お弁当屋さん
「はいどうも~。大学の先輩後輩でコンビ組んでます『マツタケ』です。よろしくお願いしまーす」
「ぐわ~まいった、降参だぁ!!」
「ゲーセンのモグラ叩きでめっちゃ高得点を叩き出した時にモグラが言いがちなセリフを再現する時間じゃないです今」
「モグラ叩きやのに『叩き出した』ってツッコミややこしいやろ! お前なんか豆腐ハンバーグの角に頭ぶつけて死んでまえ!!」
「角なくなっちゃってますけど」
「凶器で思い出したんやけど、俺バイトしてお金貯めたいんやわ」
「凶器の話なんかしてないです。貯めた金で何買う気ですか怖いな」
「オレ相撲が大好きやから、行司…………お弁当屋さんのバイトがしたいねん」
「お弁当屋さんどっから出てきたんですか。せっかく言いかけたんですから行司のバイトでいいじゃないで…………いやバイト募集してないですよ行司。まあいいや、じゃあ僕お客さんやりますんでお弁当屋さんやってください」
「キスミー」
「誘惑してないで早くコント入ってください。あっ、こんなところに新しいお弁当屋さんできてる。夜ごはん買ってこ。ウィーン」
「よくぞご無事で」
「帰還兵か僕は。そんな重々しい接客いらないんで、普通に『いらっしゃいませ』してください」
「いらっしゃいませ。ご予約のポチ様でお間違いないですか?」
「無予約の竹村です。海苔弁当ひとつください」
「オレは乙女座の松本です。4年に1回しか誕生日が来ない男と覚えてください」
「じゃあ魚座じゃないですか。あなたの紹介はいりませんから海苔弁当を」
「ご飯のサイズがXS、S、M、L、XL、3L、4L、5L、6Lからお選びいただけます」
「ジーパンみたいな刻み方ですねクソめんどくせえ」
「なんとなんと、オレが店長にこのイカしたサイズ分けを提案し、正式に採用してもらっちゃったのでーす! グュペトォッ」
「ウインクの音キモッ。とりあえず普通の……Mでお願いします」
「ご一緒にムチ打ちはいかがですか?」
「そのMじゃないです」
「では次に、お弁当をお渡しする店員のサイズをお選びいただけます」
「ガチで何でもいいですね。今まで気にしたことないんで」
「では6Lの者をご用意させていただきます」
「最巨漢だ。いやまあ何Lだろうが構いませんけど」
「この6Lサイズの店員が弁当を抱えてお客様に全力タックルしてきますので、頑張って受け止めてください」
「土下座しますからXSサイズに変更してください。てかシステムが狂ってるでしょ。そんなことされたらお弁当が無秩序になっちゃいます」
「しかしながらその6Lの人、大学時代にラグビーで全国行ってますよ?」
「何が『しかしながら』なんですか。尚更やめてほしいです。マジでXSにしてください」
「ご飯を?」
「いやご飯はMです」
「はあ? わっかんねえなぁ。アルファベットで言うのやめてくんね? ジーパンじゃねえんだから」
「文句なら鏡に向かって言ってくれます?」
「オレ文句なんて言いませんよ。今までの人生でキレたことないんで」
「やーいやーい、おまえの母ちゃんの息子、ウインクの音キモい~」
「海苔弁当やったらフライどれにするかさっさと決めんかい搾りカス」
「キレるの早すぎでしょ。まだ舌の根水びたしですよ。とりあえず揚げ物好きなのでワクワク……何があるんですか?」
「イエバエ、ショウジョウバエ、センチニクバエの中から……」
「ハエの方のフライかよ。ハイパー不衛生なのでいらないです。精算お願いします」
「お会計、相続税が入りまして」
「消費税入れてください」
「450円ですが本日お客様感謝デーですので120万円です」
「裁判したいんですけど暇な日とかってあります?」
「ウキャキャ?」
「急に退化。とりあえず僕は1000円しか払いませんよ」
「100円玉10枚のお返しです」
「ユーフォーキャッチャーで遊ぶのか僕は。両替じゃなくてお釣りをください」
「そこはツカミと結び付けて『モグラ叩きで遊ぶのか僕は』の方がええんちゃうの? 同じゲーセンのゲームなんやったら」
「それネタ合わせの時に言ってくれます?」
「レシート温めますか?」
「結構です」
「ではお釣りもお返ししましたので…………6L店員のフルパワータックルを心ゆくまでお楽しみください」
「あっすっかり忘れ…………ぬおおおおおおお!! やめてくださいお弁当つぶれるつぶれるつぶれるつぶれる!! ぐぬぬぬぬ……ちょっとそこの4年に1回しか誕生日が来ない男!! 早くこの6Lマンをなんとかしてくだ」
「のこったのこったのこったのこったのこったああ!!!」
「行司してんじゃねええええええええええ!!!」
「…………ふう、これで問題なくバイトできそうやわ」
「どこで手応え感じたんですか。こんな店員がいたらお弁当屋さんソッコーで潰れちゃいますよ」
「いや、行司の話」
「募集してねえっつってんだろ。やめさせてもらいます」
「ありゃした~!」