放課後相談会2
「ローズ様、あくまで可能性の話ですよ。他にも殿下が街で一目惚れしたとか、元々アイリスさんの――」
「やめてー」
更に可能性の話を広げ、必要以上に追い打ちをかけるアリシア。
その無慈悲さにローズは、耳を塞いで音を上げた。
「――ローズ様、情報の無い推測なんてこんなものですよ。確か、リーグさんに情報収集を頼んだのでしたよね。その結果を待つしかないのでは?」
「そうね……」
推測に必要な材料が揃ってない以上、真実を確定的に絞ることはできないことを無慈悲な方法で伝えたアリシア。
論理的に考えることができるアリシアだが、共感性が欠如しているらしい。
的確にローズのメンタルを削りにきている。
アリシアにデリカシーという概念が無いことを知っていたローズは、こうなることをある程度覚悟していた。
だが、改めて言われるとやはりキツいと思った。
ここで、直前まで考え込んでいたミーシャが、何かに気づいたように声を上げた。
「ローズちゃん、確か今週末も殿下に会うんですよね? 本人に直接聞けばいいんじゃないですか。……?」
瞬間、静寂に包まれた。
「そうなのですか? なら、直接話した方が早いですね」
「あぁ、どうしよう。完全に忘れてたわ……」
ローズと王子は婚約を結んでから、二週に一度、仲を深める為にお茶をしている。
二人の関係にずっと思考が持って行かれていたため、そのことがローズの脳内からは完全に抜け落ちていた。
「どうしようかしら……」
「ローズちゃん、勇気を出して! 頑張ろう!」
あの現場を見てしまった以上、次の逢瀬は間違いなく気まずい空気が流れる。
ミーシャの応援が虚しく響く。
「じゃあ、これは解決ね! 勉強しよ〜」
固まっているローズを尻目に、ミーシャが相談会を締めた。
死んだような空気の中、勉強会が始まった。




