初対面2
「お話、ですか」
「えぇ。その前に、改めて自己紹介を。私はリンカーネイン公爵家長女、マリーローズ・リンカーネインよ。こちらは私のお友達の」
「ミーシャ・フローダンです! ミーシャちゃんって読んでね。こっちはアリシアちゃん」
「ん」
「アリシア・アリアンダちゃんです! よろしくね!」
アリシアは話を振られても、手元の論文に夢中で上の空。
ミーシャが代わりに答え、「もー」とアリシアに注意をしている。
「私は、何か色々噂になってるアイリスです。よろしくお願いします」
「えぇ、よろしくアイリスさん」
ペコリ、と頭を下げる。
アリシアはともかくローズとミーシャに対して、アイリスは好意的に感じた。
「早速聞きたいのだけれど、貴女とレオン様はどのような関係なのかしら?」
しかし次の瞬間に、ローズは自分に対して好意的でないと考えを改めた。
というのも、アイリスはレオンからこう言われていた。
『君と王家の関係について、君なら容易いと誰かしらが詰め寄って来るかもしれない』
今の状況からして、ローズはその関係に迫ろうとしている。
その実全くそんなことは無いのだが、ローズの人間性について誤解してしまったアイリスは、間違いなくそうなのだ、と決めつけてしまった。
もし問われたら、ある事については誰であろうと隠し通すようレオンに言われていたアイリスは、婚約者にも隠すのか、と多少疑問に思いながらローズにも隠すことにした。
「えぇとまず、噂の内容はだいたい本当のことですね。王族の方々からご支援を頂いて、この学園に入学しました」
「確か、光魔法が使えるのよね」
「はい、そうなんですよね」
確かに使えるが、それを知っている人は少ない。
どうして噂として広まってしまったのだろうか、と思うアイリス。
「それで、私が学園を卒業するまでレオン様がサポートしてくださると」
「……レオン様、ね」
小声でローズが呟くが、アイリスには聞き取れなかった。
それと同時にローズから若干の敵意を感じたが、ちょっとよく分からないのでスルーした。
「これくらいですかね」
「ねぇ、アイリスさん。貴女はレオン様のこと、どう思っていらっしゃるの?」
「え?」
今度はレオンに対する感情を聞くローズ。
それはどこか必死なふうで、強い感情が籠もっているように思える。
「えっと、頭が良くて優しくて、背が高くて……それくらい、ですかね?」
「それだけ?」
「えぇ?」
それ以上褒めるところは無いのか。
そう言われているように感じたアイリスは、絞り出してこう答えた。
「えっと……王子様、っぽい?」
「……ふふ、そう。そうなのね」
そう答えると、突然ローズが笑い始めた。
はて、一体何故だろうか。
「貴女とレオン様に、そういう感情は無い、ということね。良かったわ」
そこでふと、レオンとローズは婚約者であることを思い出した。
そして、質問の内容。
よく思い返してみれば『王家と』ではなく『レオンと』の関係を問われていた。
この二つから察するに、ローズはアイリスとレオンの恋愛感情を危惧していたのだと理解できる。
「あー、そういうことですか。全然、そんな関係じゃないですよ」
「おぉー。ローズちゃん良かったですね!」
ローズはただの、恋する少女。
ただ自分が勘違いし、要らぬ用心をしただけである。
そう理解したアイリスは、ローズと仲良くなれるような気がした。