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エピローグ
展望台での夢のひと時を過ごした後、待たせていたタクシーに乗り込み、最寄り駅である虹ノ松原駅へ向かう。そこから博多駅に戻り、予定通り夜行バスに乗った。夜行バスの中で、ふと加奈ちゃんのことを思い出した。今回の旅行もきれいな景色が撮れたことだし、ちょっとした写真でも送っておこう。写真を選別していると、自然と旅の記憶が呼び起されてきた。ここはよく撮れているな、ここは実際に見た景色のほうが何十倍もきれいだな。虫や動物の鳴き声、自然の音が聞こえてくるようだ。私は今、記憶の中で旅をしているのだ。
ちょっとしたメッセージとともに、加奈ちゃんへ写真を送り、スマートフォンを鞄にしまう。次はどこに行こうかと少し考えてみた。しかし、思った以上に疲れていたのだろう、夏の日差しを目いっぱい浴び、焼けてヒリヒリする腕を気にする間もなく、私はまた、夢の中に溶けていった。
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