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再会の理由

「それで妾を連れ去りにでも来たのか?」

「ち、違います!! 貴方様には指一本でも触れるなと…。危険があれば命を捨てても守れと指示されています」

「なら…」

「申し訳ございません…。それは言えません」


 13階層で串焼きを両手に持ち、中継地点である野営地の端で、ぐったりと座り込む大怪我を負った仲間を解放する集団に話しかけるマカ。


「左様か。王子に妾の事は忘れてくれと伝えてくれ…」


 立ち去ろうとしたマカを引き止めるように、背後からリードエルは言った。


「その傷は…魔物によるものではないな。人の剣戟による傷跡だ。先行した冒険者が予定より遅れている理由はそれか?」


 ぐっ。と、苦虫を噛み潰したような顔で黙り込む冒険者たちに、振り返ったマカは問いかける。


「して、お前たちは何故入信したのじゃ?」

「俺は…弟に飯を食わせてやりたかった…」


 一番最初に語る男にマカは「そうか、メルディエン王国、地方都市バースランドの地下迷宮で…妾はお主の弟を…。仇は打たぬのか?」と目を伏せて言った。


 リードエルはそっと剣の柄に手を触れる。復讐のたぐいは己の命を犠牲にする相打ち狙いの者が多く、一撃で倒さなければマカの命が危ないのだ。


「ど、どうして…それを!? し、しかし、我らの命はあの方の物。あの方の愛する貴方様を傷つけるような事は弟も望まない」

「流石の妾も死んだ者を蘇らせることはできんのじゃ。そこの死にゆく仲間を助けてやる。そして、お主たちも…王子の呪縛から解放する。許せぬことはわかるが、別の生き方を少しは考えてくれなのじゃ」


 目をそっと閉じると、周囲に光の粒子が発現しマカを包み込む。光の粒子は渦となり掲げる指に集まっていく。そして、両手を胸の前で合わせると、辺り一面を神々しい光で満たす。


 大怪我を負った仲間の傷が癒え、体力までも回復したことが顔色でわかった。そして、王子の…黒い霧のような邪神の呪縛は、光により拡散し、やがて消滅していった。


 マカはそのまま祈りを続ける。すると桜の花びらのような魔力の塊が、其処彼処にヒラヒラと、中継地点である野営地に舞い始めた。驚く冒険者たちを、より…驚かせたのは、死に別れた愛する者たちが…、両親、恋人、友人が…もう一度逢いたいと思っていた者達の霊が…はっきりと姿を現したのだ。


 これは、霊感Lv10により冒険者たちの魂の望みや想いに紐づく霊を、交霊Lv9で冒険者たちの目の前に姿を現すように交渉して降霊Lv6 で呼び寄せ、霊視Lv9を使い霊感の少ない者でも視えるようした結果だ。


「シリウスなのか…?」マカが殺した弟と再び再開した兄。


 中継地点である野営地にいる屈強な冒険者たちから漏れる様々な感情。ありえない再会は、これからの人生を歩む上で、良い方に転がるか、悪い方に転がるか、マカにもわからない。しかし、この場にいる冒険者たちに、一歩先へ踏み出すきっかけを与えたのは間違いなかった。


 軽傷者から重傷者までを範囲効果のある治癒魔法で治してしまったこと、冒険者たちの心に後悔の傷跡を残した人との再会をさせてしまったことで、女神東方教会の現世に降臨したと言われる女神であることばバレてしまた。いや、もとから過半数にはバレていたのだ。問題ないだろう…。


「マカお嬢様っ!? お、お母さんに会えました!!」と泣きながら抱きついてくるアンに力を使い果たしたマカは身を預けると倒れるように眠ってしまった。

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