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お誘いの理由

 食堂に入るや否や、『爆炎』の二つ名を持つ1級冒険者シュカと2級冒険者のパーティー・ソードレインが詰め寄ってきた。


 その勢いに監視役兼護衛役のリードエルもマカお嬢様の護衛モードになる。私も慌ててマカお嬢様の隣りに立つ。ついでに言うと、本日のメニューを伝えようと待っていたテレレも緊張して硬直していた。


「敵意は無い用じゃ。テレレ少し待ってくれ。して、何用か?」

「驚かせてしまったようだ。すまんな、急いでいたもので…。それに、タイミングが悪かったようだ。また食後に出直そう」


 両手でやっと持てるような大きな杖を持つロリっ子魔女のシュカは、ばつが悪そうに代表して謝った。


「なんじゃ? お主らは食べたのか?」

「いや、まだだ」

「なら、テレレ、今日のメニューは何じゃ?」

「あ、はい。高原野菜と燻製ハムのサラダ、小魚と鶏肉のごちゃまぜスープ、B級オークのハンバーグ、自家製焼き立てパン、それにフルーツタルトです」

「お主らもどうじゃ?」

「では、私もそれを頂こう」

「俺達も良いかな? テレレちゃん、それに蜂蜜酒も一緒にお願い」

「はい。畏まりました! お待ちください!!」


 ダッシュで厨房に戻るテレレちゃんを微笑ましく全員で見送ると、マカお嬢様が子供用の高い椅子の上でふんぞり返り、「お主らと話すのは初めてじゃな」と偉そうに話し始めた。


 時計回りで簡単な自己紹介が終わる頃、テレレちゃんが忙しそうに料理を次々と運ぶので、マカお嬢様は私に手伝うように目配せした。


「マカは食器のサイズも子供用なのだな」

「何を言うておる。実際に子供じゃ」


 口の周りにパンカスやらソースやらを付け、口いっぱいに食べ物をリスの如く頬張る様子をソードレインの盗賊のお姉さんイルサエラレムが目を見開いてみていた。


「マカちゃんって…。どこかで聞いて名前よね…」


 やがてデザートのフルーツタルトまで食べ終えたマカお嬢様は、「で、本題は一体なんじゃ?」と話を切り出す。


 シュカの説明によると、冒険者ギルドからの依頼で、61階層に陣取る階層ボスを倒すため、大迷宮・古代の墓に挑む上位の冒険者たちが手を取り合い討伐する計画に参加して欲しいとのこと。


「つまりレイドじゃな。して、配分や61階層までの移動などはどんな感じなのじゃ?」

「主催および総指揮は冒険者ギルド。参加資格は4名以上のパーティーで、配分はパーティー単位。

 37階層までは冒険者ギルドが、別件依頼する冒険者たちで安全を確保された状態で移動する予定。また37階層に中継地点を設けるらしい。

 38階層からは上位パーティーでなければ厳しくなるので、私達が攻略を開始する。また冒険者ギルドが用意する支援部隊がバックアップを開始する。

 ざっくりと言えばこんな計画だ」

「ふむ。上位パーティーは何組で何人ぐらいになるのだ?」

「恐らく8パーティー30名以上だ」

「左様か。して、妾のパーティーは3名なのじゃが?」

「そこも相談だ。単独である私の下に付いてもらえないか? マカの実績は十分に理解しているが、階級は私のほうが上なのだ。こっちの方が都合が良いのでな」

「正直言えば、あまり興味がない。迷宮に潜るのは好きだが、攻略に興味はないし、名声や金よりも純粋にLv上げが目的だからの」

「安全保証されるのか? 往々にしてボス討伐直後に、ドロップアイテム欲しさに仲間同士で殺し合いが起こるものだ」


 護衛役のリードエルも反対のようだ。


「それは無いと言い切れる。数年に一度ある討伐戦で、ドロップアイテムは人気のない物ばかりで殺してでも手に入れたいものなど無い。また冒険者ギルドの複数の職員により常時行動を録画されている。犯罪など起こせば直ぐに捕まる」

「勝算はあるのじゃろうな?」

「先程も言ったが、数年に一度ある討伐戦で、参加者の半数以上は経験者だ。今回、私達はメインと言うよりサブ的な扱いになる」

「お主らに得があるように思えんが?」

「恥ずかしながら、報酬と言うより、実績と名声だ」

「あの…『爆炎』という二つ名があって、1級冒険者になっても、名声が欲しいのですか?」


 こればかりは聞かずにいられませんでした。


「名声は生き物だ。常に活躍してこそ、名声も意味を成す」


 そんなもんですかね…。と、ロリっ子魔女のシュカを見ていたら、居心地が悪いのか視線を外された。

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