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緊張する理由

 迷宮内は、いきなり異空間的な青空の草原などでは無く、オーソドックスな洞窟だった。迷宮内に入ると、光源を買い忘れたことに気付くが、壁に掛けられた松明の灯りで十分移動も可能だった。さらに冒険者たちが、迷宮の攻略帰りに捨てたと思われる松明を拾って点火し、おんぶしているマカお嬢様に渡す。


「おぉ、これぞ、まごうことなき冒険じゃ!!」

「私の髪の毛を燃やすとか、本当にやめてくださいよね?」


「きゃははっ!」と可愛い笑い声を出しながら、ブンブンと松明を振り回すマカお嬢様に注意する。


 ちなみにマカお嬢様は、両手が塞がっていると魔物の対応が出来ないため、薪などを運搬するために使う背負子の上に座ってもらっている。つまり必然的に背後を監視する形にもなり、一石二鳥なのだ。


 しばらく進むと、松明の灯りでは照らしきれない大きな空間に出た。壁沿いにぐるっと一周するだけでも30分かかった。中央には、地下水脈から湧き出る水が小川を作り、その周辺にクエストの目的である薬草の群生地を見つけた。


 背負子を下ろすと、マカお嬢様は半分目を閉じた状態で、コクリコクリとうたた寝状態だ。危うく松明で火傷をさせるところであった。途中で拾った松明で焚き火をする。マカお嬢様が持っていた松明は帰りの光源として、再利用するため一旦、火を消した。


 やはりマカお嬢様の安全を考えると、背負子を背負っているのが一番だろう。焚き火の近くに盾を置き、薬草採取時にしゃがんでも邪魔にならないように、剣は腰にから背中に移動させる。


 生まれて初めての薬草採取だ。素手で引っこ抜こうとしたとき、「駄目だよ!!」と通りすがりの冒険者パーティーに注意された。何でも、根本を残しておけば、また薬草が生えてくるらしいのだ。


「ここで出逢ったのも何かの縁。誘拐犯のお兄ちゃんに、この銅貨6枚の採取用ナイフをプレゼントするよ」

「ぐっ。誘拐犯はやめてください!」

「ははっ。俺達は、17階層を縄張りとする4級パーティーだ。俺がリーダーのマッシュ、そのナイフをプレゼントしたのがアニー、後は、ジョゼフとカイランだ」


 職業を紹介しないのは、個人情報保護のためだろう。しかし、装備を見ればそれなりにわかるものだ。


「親切にどうも。俺はフレア。背中で寝てるのがマカです」



 マッシュ達と軽く世間話を終えると、再び採取作業に戻る。彼らの話では、1階層の薬草採取ポイントは、有名所で三箇所あるらしい。ここは、入り口に近いが、遠距離からの襲撃に対応できないので、「松明で焚き火をしていると格好の的だから注意してね」と言われた。ちなみに襲ってくるのは初心者狩り専門の冒険者らしい。


 うーむ。襲われるのが前提なのか。その意識レベルで、マカお嬢様を守らなければ…。


 「キュピッ?」


 1階層に生息する魔物は、この角ネズミとボスの大ネズミだけと、マッシュ達から教わったばかりだった。角ネズミは、単独で行動し、薬草を主食とする草食系の魔物であり危険は少ない。俺は背中から剣を抜くと、『入門』レベルの『スラッシュ』を放つ。叩き斬る剣なので、角ネズミの頭部がグチャッと潰れ、マカお嬢様には見せられない状態になる。


 「確か、素材としては使えないけど、魔石を取り出すとか言ってたな」


 人生初めての解体作業だ。これも慣れないと精神がガリガリ削られるな。採取用ナイフで角ネズミの体を引き引き裂き手を突っ込むと、柔らかい肉の感触の中に、赤く光る小石程度の魔石を見つけた。


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