現職の理由
書けてしまったので、もう一話追加します。
またも…説明回…すまんな。
次は、迷宮に行く予定だが…ネタが思いつかん。
職業とは、『初期』−『入門』−『初級』−『中級』−『上級』−『特級』−『英雄級』−『伝説級』のように、最大で8段階まで転職が可能だ。だが一般人で『中級』程度。俺のように高貴な血筋と言えば聞こえは良いが、競走馬のようにより強い異性と交配させられ、生まれたときから血の滲むような努力を強いられる環境で育っても『特級』が良いところだ。
これが俺の…栄光の王国近衛騎士団時代の職業履歴だ。
『なりたい自分』−『見習い剣士』−『兵士』−『騎士』−『近衛騎士』−『聖剣士』
そして、今の俺は『上級』の『要人警護』だ。
『なりたい自分』−『見習い傭兵』−『傭兵』−『護衛』−『要人警護』
マカお嬢様の専属の護衛になるため、騎士団を脱退させられたのは、国王陛下も青天の霹靂であり、即座に撤回するように命令したのだが、時既に遅く…事も有ろうに、長い国の歴史の中でも、数度しか記録のない職業の初期化を実施した後であった。
職業の初期化には、数々の利点がある。
一つ目は、より強力なスキルを複数保持できる可能性があること。例えば『聖剣士』の『神聖波動六連撃』と『古代魔導師』の『火炎の大嵐』のようにだ。
二つ目は、ステータスが維持されたまま『初期』に戻るため、純粋に2倍のステータスが得られること、またスキルポイントが貯まりやすくなることだ。
三つ目は、 一つ目の例えのように、剣士でありながら魔法使いのように、幅広く強力なスキルを持つ歩く人間兵器が出来上がることだ。
しかし、これほどの利点がありながらも、歴史の中に数えるほどしか登場しない理由は、厄災級と言われる魔物から手に入る1級の魔石を触媒とし、失われた術式の解読と複雑な魔法陣を構築させるセンス、そして、それを膨大な魔力で発動させる必要があるためだ。
その全てを…全盛期(6歳)のマカお嬢様は、簡単にクリアしてしまったのだが…。ちなみに1級の魔石は、王宮内の幻の宝物庫から持ち出したらしい。
いや、俺のことはどうでも良い。それよりも、マカお嬢様についてだ。『巫女』とは、通常であれば、『なりたい自分』−『見習い巫女』−『巫女』と、二度の転職を必要とするのだ。
「いつ巫女になったのですか?」
「知らん。職業など興味がないのでな…。それより、この菓子は美味いのぉ!!」と、ほっぺたいっぱいに駄菓子を詰め込んでいた。
転職するには、転職の要石に触れる必要がある。マカお嬢様の行動範囲で、転職の要石がありそうな場所は、やはり王宮か…。しかし、どこで転職に必要な職業のLvを上げたのだろうか?
しかも、習得スキルの数に対して、残スキルポイントが0とは、理解できないのだ。通常、Lvを1つ上げると、1スキルポイント入手できる。
『なりたい自分』から転職するにはLv10、『見習い巫女』でLv30まで上げる必要があり、40スキルポイントが入手可能だ。現在のスキル取得を考慮しても、34スキルポイント残っていなければ辻褄が合わない。
あれ? 『巫女』は『中級』のはず…なのに何故、転職可能なLvが10なのだろうか…。
「食べ終わったのじゃ。迷宮へ行くぞ!」
「そ、その前に武器屋です。流石に素手で戦うわけにはいきません!」
「何を言うておる? ヴェンデ…むぐぐぐぐ…」
マカお嬢様が、国宝級の剣ヴェンディダードの名を言いそうになったので、慌てて、お菓子の食べかすだらけのお口を塞ぐのでした。