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帰れない理由

ほのぼのとした、政変による帰宅難民のお話です。


それでは、お楽しみください。

迷宮都市ダステムにあるランク的に、中の下の宿屋。その宿屋の店主から朝一でとんでもないニュースを聞く。


「何? 中央で政変が勃発しただと!?」


「はい。それで、公共の転移魔法陣ネットワークが封鎖、全領地の魔導金融ネットワークが遮断、各領地も領民以外の領土内の通行を禁止した模様です。もう商人たちは、朝から大パニックですよ」


「そ、そんなバカな…」


そのことをマカお嬢様に伝えると…。


「嫌じゃ! 帰りたいのじゃ!! 今すぐ帰るのじゃ!!」


帰る手段もなければ、手持ちのお金も少ない。マカお嬢様が公爵令嬢とバレれば、誘拐や政治で利用される…。しかし、いつ封鎖が解除されるか理解らぬ状態だ。この先、一体どうすれば!?


***** ***** ***** ***** ***** 


フレイデン王国でもTOP5の魔力を保有する奇跡の幼女がいた。ファーレランド公爵の長女であり、第二王子と婚約も結ばれていた。


その名をマカ・アルジャーナという。


ここまでならば、物語にも出てきそうな話なのだが、やはりどんな事象にも裏がある。

この幼女、頭の回転は早く、その上、王宮魔導師も驚く、超が付くほどのバカなのだ。

さらに両親共に親バカで、誰一人として、その行動を咎めないため、善悪の区別すら知らない。


王宮内に存在すると噂された幻の宝物庫を見つけ出し、伝説の王宮魔導師が晩年をかけ、何重にも封印した禁忌目録を、いとも簡単に魔導金庫から取り出してしまった。


その禁忌目録は、 失われた古代言語で記載され、流石のマカも読み取ることは叶わなかったが、ある種の閃きから、挿絵の魔法陣に隠された術式を発動させ、禁忌目録に封印されたナニカ(・・・)と契約した。


何かが起こると期待したマカは、次々と挿絵の魔法陣に隠された術式を発動させ、4つのナニカ(・・・)と引き換えに、全ての魔力を吸い取られる。そして、契約を終えた禁忌目録は消え去り、契約を解除する方法も失われた。


突然、魔力を失ったマカは、数々の不調を訴えるようになった。後にその原因が、幻の宝物庫に隠された禁忌目録だと知れ渡り、王宮は大混乱となったのだ。


□□□──────────────────────

・名前:マカ・アルジャーナ(人間・女性7歳)

・職業:巫女(Lv1/10)、スキルポイント:0

・体力:11(-10) ・筋力:10(-9) ・魔力:239(-239)

・習得:霊視Lv1、霊感Lv2、交霊Lv1、降霊Lv1

・状態:深刻な体力低下、軽微な目眩、軽微なスロー、

    軽微な病気

──────────────────────□□□


例え、体がボロボロになろうとも、マカの好奇心は止まらない。


「行くのじゃ! フレア・ロンド!! 王国最強の名が泣くのじゃ!!」


フレアは、若くして国宝級の剣ヴェンディダードの帯剣を認められ、王国近衛騎士団の精鋭中の精鋭と言われた。しかし、事も有ろうにマカに目を付けられ、マカ専属の護衛になるため、騎士団を脱退させられたのだ。


目指すは、エインシェ領地にある小都市ライゼンだ。同じエインシェ領地にある迷宮都市ダステムの 魔導迷宮ダステム・アンリーチから、出土された骨董品の骨董市が開催されているのだ。


小都市ライゼンまでは、地上で行くと、2つの山脈を含む7つの領地を超えて行かねばならないが、公共の転移魔法陣ネットワークにより、瞬時に移動することが可能だ。勿論、公爵の権力で、順番待ちをしている貴族たちより先に使用出来るよう根回しをして、さらに莫大な使用料金を支払う必要があるが…。


そして、小都市ライゼンの転移魔法陣に、ファーレランド公爵の小隊が姿を現した。


「えぇい、鬱陶しいのじゃ! お前らは帰れ!! フレアがいれば十分なのじゃ!」


突然、駄々をこねるマカに全員が困惑する。小隊の視線は、フレアに注目し、フレアは起死回生の妙案を思いつく。


「であれば、街娘とその兄に変装して、骨董市に参加しましょう。それならば危険も少ないはずです」


「街娘の服装か。仕方ないのぉ」


「しかし、この服は臭いのじゃ」


「我慢してください。新しい衣装を着ては、変装の意味がありません」


「左様か?」


「左様です…」


勿論、実質的に体力が1で筋力も1のマカは、同じく変装したフレアにおんぶされ移動する。


「あっちの店に行くのじゃ!」


「今度は、こっちなのじゃ、いや、やっぱり、そっちなのじゃ!」


マカは骨董品を片っ端から買い占めるようなことはしない。十分に吟味して1つだけ買うのだ。しかし、張り切りすぎてお腹を空かせたマカは、街の屋台で不衛生な食事を取る。


「ふむ。中々の味じゃ。おい、店主、これは何の肉を使っておるのじゃ?」


「なんだいお嬢ちゃん、そんなことも知らねぇのか? これは角兎の肉だ」


「ほう。角兎か…確か、魔物じゃったか?」


「それは知っているのか? 隣りにある迷宮で取れた肉だ」


「して、この料理は何と言う名じゃ?」


「食っといて知らねぇのかよ。よく覚えておけ、肉うどんだ」


マカは人見知りをしない性格で、誰とでもよく話す。しかし、護衛からすると面倒くさいこと、この上ない。注意するターゲットの数が増えるだけなのだ。


「だから、ライゼンより、迷宮都市ダステムの方が、良い品が多いんだって」


通行人の何気ない会話から、マカは当然と言えば当然だが、迷宮都市ダステムに行きたいと騒ぎ出した。


「なりません。迷宮都市ダステムは、迷宮から魔物が溢れるスタンピードを防止するために、強力な結界が張られ、直接公共の転移魔法陣での移動が出来ないのです。街道を行くならば、小隊が必要となります」


「何を言っておる。迷宮都市ダステムまでは、公共の馬車が出ておるだろう。公共の馬車は、護衛もしっかりと付いておる。心配は無用じゃ」


「しかし、迷宮都市ダステムへ行けば、今日中に帰ってこれません」


「迷宮都市ダステムで泊まれば良い」


このとき、マカお嬢様の我儘を聞かず、ファーレランド領へ戻っていれば、あんな苦労はしなかったのだ…。

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