可愛い僕の幼馴染み
素直になれないお嬢様のジャン目線のお話です。
僕には大好きな幼馴染みがいる。
名前はルイーズ。
緩やかにカールした腰までの金髪にグレイがかった茶色の目。
大きな少したれ目のルイーズは黙っていればとっても可愛いのにひとたび口を開くとその印象はガラッと変わってしまう。
遅いわ、いつも私を待たせるのね。
そんなことも出来ないの?
何?女々しい男って嫌いなのよね。
グレン様って素敵よね。兄弟なのになんでこんなにジャンと違うのかしら?
グサグサと僕の心をえぐるルイーズの言葉達。
いつもこの言葉にやられ瀕死の状態の心を何とか奮い立たせる。
「わたしジャンのことがだいすきよ。ジャンもわたしのことすき?」
小さい頃に言ってくれたこの言葉。
僕はそれだけを心の支えに頑張っていると言っても過言ではない。
僕の気持ちなんかつゆ知らず兄上が僕に向かってこう告げた。
「ルイーズは本当に可愛いね。ちゃんと捕まえとかないとぽっと出の誰かに攫われてしまうよ?」
「言われなくてもわかってる」
ぶっきらぼうに言った僕の言葉ににやにやと兄上は笑った。
「ルイーズって本当にツンデレというか素直じゃないよね。私の前ではあんなに可愛らしいのに本当に好きなおまえの前じゃ…」
本当にルイーズは僕の前と兄上の前では態度が違う。
完璧に猫を被っている。
兄上に褒められれば頬を染め、
兄上に笑いかけられれば微笑み返し、
兄上が揶揄かえば口を尖らせる。
何でこんなにも僕に対する態度と違うのか。
単純だった僕はいつの間にかルイーズに嫌われてしまったのだととても落ち込んだ。
そんなとき兄上が言ったのだ。
「ルイーズに取り合わずにその後のルイーズの表情を見てみなさい」
何を言ってるのだろうと思いながらも兄上の助言で間違っていたことは一度もなかったので試してみることにした。
これでルイーズに嫌われてしまったらどうしようという想いも抱えながら。
するとどうだろう?
僕に無視されたルイーズはひどく傷付いた表情をしたのだ。
え?
僕はそんなルイーズの表情を見て自尊心が満たされるのを感じた。
かくして兄上の助言によりルイーズが僕のことを好いていてくれることは分かったけれどどう距離を詰めて良いかが全く分からなかった。
翌日話しかけるとルイーズはいつものように僕に食ってかかってきた。
「ジャン、私のこと無視したわね」
いつもと同じようにキッと睨まれているのに何故だか可愛く見えてしまうから不思議だ。
これは惚れた欲目と言うものだろうか?
今までと同じじゃ何も変わらない。
どうやってルイーズとこの距離を縮めていこうかと考えていたときにルイーズの従姉妹のオリヴィア嬢に声をかけられた。
「ジャン様、少しお時間頂けますか?」
プラチナブロンドの見目麗しいルイーズの従姉妹がそう言って綺麗に綺麗に微笑んだ。
その日の午後、僕は久しぶりにルイーズの家を訪ねていた。
「ルイーズを訪ねてみてくださりませんか?」
そうオリヴィア嬢に言われたから。
何故だと聞いてもオリヴィア嬢はただ頬笑むだけだった。
ルイーズの家の執事にルイーズに逢いに来た旨を伝えるとルイーズは自室にいるらしい。
ノックをして部屋に入るとルイーズは微笑んで信じられない言葉を口にした。
「おめでとう。オリヴィアと幸せにね」
カッと頭に血が上り思わず壁に押しつけていた。
びくりと肩をすくませ僕を見つめるルイーズにはっとなる。
怖がらせたい訳じゃないんだ。
「ルイーズ、本気でそんなことを思ってるの?」
懇願するようにルイーズの顔をのぞき込めば視線を彷徨わせ、何か言いたげに口を開くが結局視線を逸らし黙り込んでしまう。
僕を見てルイーズ。
そんなことを願いながらルイーズへ口付けた。
柔らかなルイーズの唇の感触にたがが外れそうになってしまう。
そんな自分を落ち着かせるようにルイーズを抱きすくめた。
「ルイーズ、愛してるんだ」
どれ位時間が経ったのだろう。
ルイーズの腕がおずおずと僕の背中にまわっていた。
「ルイーズは僕のこと、好き?」
不安になりながらルイーズの顔を覗き込む。
「嫌いじゃないわ」
その言葉に安堵したけどちゃんと聞きたいんだ。
ねぇ、ルイーズ教えて?
「もう一度ちゃんと僕の眼を見て言って」
「…すき」
聞こえるか聞こえないか位の声だったけど確かにルイーズはそう言ってくれた。
瞬間、顔が緩んでしまう。
「僕もルイーズのことが大好きだよ!」
そう告げるときゅっとルイーズを抱きすくめた。
ルイーズの従姉妹のオリヴィア嬢が色々なお膳立てをしてくれていたと知ったのは数日後のことだった。
拙い文書をお読み下さり、ありがとうございます。