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5:カーディナリス第一学園②

サイタテをキズナに押し付けた後、キハルたちは急ぎ気味に剣術科の校舎へ向かった。久しぶりの参加で遅刻するなんて良いご身分だとからかわれかねないからだ。それでなくとも「脆弱なお姫様」だと言われているのに。


座学の少ない剣術科は教室もあまり多くなく、少し進めばすぐにいくつかの訓練所に繋がる。


確か今からの時間の教師は"(マリン)"出身のスパダだったように思う。"(ガーデン)"と友好関係にある"海"は武術や剣術に長けている者が多く、スパダ以外にも何人か"海"出身の教師が勤めている。特にスパダの授業はわかり易くて生徒たちにも人気があるのだ。


そうこうしているうちに、スパダのいる訓練所へと到着した。小声気味に「失礼します…」と言って入ると、生徒に囲まれて談笑していたスパダが2人に気付いて声を掛けてきた。スパダが抜けると、その場にいた生徒たちは少し声をおとして何かを話し始めた。チラチラとこちらを見ているので、どうやらあまり良い話ではなさそうだ。


「お久しぶりです、キハル殿下。アヤトは1週間ぶりか」

「なかなか来れなくてすみません…今日はよろしくお願いします」

「…っス」


キハルが深く一礼するのとは違い、軽く首だけ動かしたアヤトに笑って、そのまま訓練所の前方へと向かう。


「集合ーーーーッ!!!」


スパダがよく通る声で集合をかけると、先程まで談笑していた生徒たちは即座に前方へと集まった。ここから、約2時間の授業が始まるのだ。


ーーー


授業が終わり、キハルとアヤトはスパダに軽く挨拶をしてからスフェーン城へと戻る。道中思い出すのは、帰り際スパダに言われた「キハル殿下は…もう少し来ていただければ、確実に身に付いてくると思うのですがね」という言葉。教える側のスパダが申し訳なさそうに言うので、言われた方は更に申し訳なくなるのだ。


お世辞にもキハルの剣の腕前は決して良いものではない。今日も何人かの生徒と模擬戦をおこなったが、力の差が激しく、相手の生徒は不満だだ漏れといった様子だった。ただでさえセンスというものが無いのにろくに授業も受けられず、それで力がつくはずもなく。


目に見えて落ち込むキハルを見て、アヤトは悩みつつも励ましの声をかけた。


「…俺も、初めは剣術なんて苦手でしたよ」

「アヤト君が苦手って…想像つかないなぁ…」


キハルがそう首を傾げるのは、アヤトが常に"盾"としての役割を優秀に果たしているからである。特に剣の腕前は"海"出身のスパダが褒めちぎるほど。そのアヤトが剣術が苦手など、慰めで言っているようにしか思えないのだ。


「そりゃ、主の前でカッコ悪ィところは見せられないですからね。コソ練ッスよ」

「隠さなくてもいいのに…」

「俺が嫌だったんです。貴方を護るためには、強くなきゃいけなかったから」


そのアヤトの真剣な眼差しの中には、過去の自分の不甲斐なさに対する憤りが込められていた。自分がもっと強ければ、あの時もっと剣を振る力があれば、後一歩足を踏み出せていれば───…


「ごめんね、アヤト君」


ハッと気づいた時には、キハルが悲しそうな表情でアヤトを見ていた。


そんな顔をさせるために強くなった訳では無いのに。どれだけ強くなっても、剣の扱いが上手くなっても、いつだって己が望む結果になってはくれない。


アヤトは黙って首を横に振り、キハルの謝罪を否定した。


「………貴方がやっていることは、どんな形であれ絶対にいつか実を結びます。俺はその時まで、貴方を護るだけです」


そんなアヤトの励ましを、今のキハルは素直に受け取ることも否定することもできなかった。ただただ護られてばかりの自分の存在に嫌気が差すばかりだった。

無愛想ですが、一応アヤトは年上の人には敬語で話します。その昔、姫さんに「俺以外の人にも敬語は使おう!」と言われたからです。大抵スッススッス言ってますが、彼なりの敬語なのです。無愛想ですが。

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