表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

1:既に出会って数日後の話①

7つある国のうちの1つ、"(ガーデン)"。

現在この"庭"を統べるのは11代目のカトレア陛下である。

"庭"の継承者は代々、継承した日に庭中に花を咲かせ、それは次の代に継がれるまで咲き続ける。

カトレア陛下が継承した日には、彼女に相応しい華麗な紫色の花を庭中に咲かせたという───。


「"姫"の継承式まであと1年かぁ…」


城の見回りの最中だった衛兵がポツリと呟いたのを聞いて、もう1人の衛兵が思い出したように「ああ…」と頷いた。


「"盾"不在でよく持ったものだよ、後釜はまだなんだろう?」

「あんなことがあったんじゃ、誰もやりたがらないだろうな」

「でも噂じゃ、自ら"盾"を志願した奴がいるらしい」

「何!?とんだ命知らずがいたもんだな!」

「自殺志願者じゃないのかぁ?」

「「アッハッハッハッハッ!」」


「ほう…ここには随分とお喋り好きな衛兵がいるんだな」

「「!!!」」


高笑いする衛兵たちの背後から銀髪の男が現れた。

その手には、鞘から少し顔を出した剣が怪しく光っている。

薄く笑みを浮かべた男は、そのままゆったりとした動きで剣を抜き取り…


「その無駄口…俺がかっ捌いてやろうかァァッ!!!?」

「「うわぁぁぁーーーー!!!」」


情けない悲鳴を上げながら、2人の衛兵はその場から逃げ去っていった。

男は追いかけることなく剣を鞘に仕舞う。

どうやら本当にかっ捌くつもりはなく、ただ単に脅したかっただけらしい。


「ふん、情けねーやつらだぜ。あれでも"庭"の衛兵かっての」

「いやいや、アヤト君が怖すぎるんだよ…」

「えっ、キハルさん!?」


男が見た先には、男の頭1つ分背の低い赤髪の少年が苦笑いで立っていた。

「キハルさん」と呼ばれたこの少年こそが、"庭"の第一王位継承者・キハル王子である。


キハルはカトレア陛下の一人息子だが、人を惹きつける魅力を持ち、気品に溢れた母親とは違い、特に秀でた才能もカリスマ性もない。

先程の兵士たちをはじめ、他の衛兵や使いの者たち、"庭"の民たちは彼を「守られてばかりの出来損ないのお姫様」だと皮肉って呼んでいた。


「いつからそちらに…」

「アヤトくんが来る前からかな」

「お出になるのであれば、言ってくださればお供しましたよ!」


「それが嫌だから黙って出てきたんだよ」とは言えなかったキハルは、「あはは…ごめんね」と笑って頭をかいた。


ーーー


キハルの自室に戻る道すがら話題に上がったのは、先程衛兵たちが噂していた"盾"についての話。


「もう"盾"の話が広まってやがりますね…」

「あれは…噂にもなるよねぇ…」


そう言ってキハルは意識をどこか遠くに飛ばすように見上げた。

アヤトは苦虫を潰したような顔をして、「あの野郎…」と忌々しげに呟く。


代々"庭"の王位継承者には、専属のボディガードが2人つくことになっている。

2人はそれぞれ"盾""矛"と呼ばれ、王位継承者を守る役割を担う。

カトレア陛下にも"盾"と"矛"がおり、カトレア陛下の代が終わるまで彼女に仕えている。


第一王位継承者であるキハルにも本来"盾"と"矛"がいるはずなのだが、現在キハルを護っているのは数年前から"矛"のアヤトのみである。

もちろんそれを良しとしない重役たちもいるのだが、キハル本人が頑なに"盾"を断っている。


しかし、つい先日"盾"を志願するものが現れた。


「あの野郎、今度来やがったら…」

「ひーーーめーーーさーーーん!!」

「「!!」」


歩く2人の後ろから、バタバタ走る足音とやかましい声が聞こえてくる。

それに気付いて振り向いた頃には、騒音の主はもうすぐそこまで来ていた。

「本気」と書いて「マジ」と読むように、「庭」と書いて「ガーデン」と読みます。他の国もこんな感じです。これはキラキラネームに入るのでしょうかね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ