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少年は第2の人生を手に入れたようです。

少年やその家族についての情報は次話で詳しく描きます。

「ハァァァァッ!」


そんな叫び声と同時に、繰り出される斬撃。

その一振りによって、目の前の人型の醜悪なは命を絶たれ、そして数秒後に霧散した。

その場に残ったのは、ドロップアイテムである塊の肉と、左耳のみだ。


「ふぅ。今日のノルマ達成っと」


そんな中で、先程魔物を屠った少年は、手で額の汗を拭うと、短い金色の髪を風になびかせながら歩き、ドロップアイテムを拾った。

そして指にはまっている指輪にそれらを触れさせると、ドロップアイテムはまるで吸い込まれるかのように消えていった。


「よしっ」


少年は全て指輪に入ったことを確認すると、ゆっくりと歩きその場を離れていった。



それほど深くはない森の中のそれほど危険のない場所を、少年はとぼとぼと歩いていた。


実は今日は少年の誕生日。

家では毎年のように家族がバレバレのサプライズパーティーの準備をしている所だろう。


それはとても楽しみであった。


では何故急いで帰らず、ゆっくりゆっくりと、悲しそうな表情で歩いているのか。


それには、家族すらも知らない一つの理由があった。


「もう、10年か…」


不意に少年は過去を思い出すかのようにそう言った。


この世界で10年…。

長いようで短かったその年数を考えると、のあの出来事が、そしての友との情景が、脳裏に鮮明に浮かんでくる。


3人で過ごした、楽しかった毎日。

少年にとって大切なとても大切な思い出の数々。


「元気でやってるかな………


少年、ユウ・クラハドールはそう言った。


未だ忘れられない、の記憶を思い出しながら…。



「ただいまー」


僕はいつも通りそう言うと、引き戸をあけ、家の中に入った。


現在の時刻は、18時。

それなりに暗くなってくる時間だ。

普通なら、もう光の魔道具に魔力を込め、灯りをともしている時間なのに、今日はそれがない。


それも、当然といえば当然か。


何故なら…。


パンッ!と、暗い部屋に突然響く軽い破裂音。


そしてその数秒後に、小さな光が10個ほど灯った、何かがこちらに近づいてくる。


そして…


「おめでとう!ユウ!」

「おめでとうユウちゃん!」

「にぃ!おめでとう!」


と、幾つかの声が聴こえてきた。


同時に部屋に光が灯る。


目の前には、ロウソクに囲まれたバーダ(鶏のようなもの)の丸焼きを持った母さんと、その両隣りを埋める、父さんと妹の姿があった。


そんな3人に、僕は驚いた表情を浮かべると、満面の笑みで、感謝の意を表した。


「ありがとう!」


…と。


ただ、内心は笑みは浮かべていたが、満面とまではいかなかった。

さらに、驚きなんてものは一切感じていなかった。


確かに、嬉しい。


しかし、僕の精神年齢は前世と合わせると26歳だ。


何となくだが、それ位の年齢ともなると、家族に大々的に祝われても、そこまで大はしゃぎするものではないと思うのだ。


現に今の僕がそうだ。


でも、ここまでのサプライズなら驚きはするのではないか。


そう疑問に思う人もいるかもしれない。


しかし、それはない。


…何故なら、毎年演出が同じなのと、僕が誕生日の今日家を出るときに、パーティーに使うであろうものが沢山目に入るからである。


10歳の少年ならまだ気づかずに喜ぶこともあるかもしれないが、僕は26歳。

嫌なやつかと思われるかもしれないが、仕方ないのだ。

どうしても色々な物が目に入ってしまうのだから…。


ただ、そんな状況でも先ほども言ったように嬉しいは嬉しい。


…前世では家族の愛というものに数年近く触れてなかったのだ。

家族に愛されている、家族が近くにいる。

それだけで胸がいっぱいになるのである。


と、脳内で色々と考えていると、突然ぐーーーーっととても長い音が響いた。


その音の先を見ると…妹がいた。


妹は恥ずかしいのか、顔を真っ赤にして下を向いてしまった。

そして、そのまま僕に走り飛びつくと、僕の胸の辺りに顔を埋めた。


…それが合図となった。


「さて、飯を食おう!何てったって今夜はパーティー!ご馳走が揃ってるからな!」


父さんがみんなの方を向き、そう言う。


僕と母さんはその言葉にうんと頷いた。


そして席に向かう。


因みに妹はくっついたままだ。


ただ、席に着く際には、妹の身体の向きを変えた。


つまり今は、椅子に座った僕の上に、妹が座っている感じだ。


因みに妹、リア・クラハドールの年齢は7歳で、僕より3歳年下だ。


この年齢辺りだと、男女にそれほど身長差というものが無かったりするが、僕とリアの場合は違う。


理由としては、まず僕の方が年齢が3つも上ということもあるが、それとは別に、僕が平均よりも身長が少し高いというのと、リアが平均より少し低いというのがある。


よって、僕の上にリアが座ったとしても、それ程じゃまになったりはしない。


寧ろ可愛い自慢の妹に好かれているということが嬉しい位だ。


…別にシスコンというわけではない。


ただ、前世で兄弟が居なかった分、今いる妹の事を可愛いと感じるのも、可笑しなことではないと思う。


と、色々と考えている内に、どうやら皆準備ができたようだ。

両親のコップにはお酒、僕とリアのコップには果実水が入っており、両親は既にコップを手に持っていた。


僕とリアも遅れてコップを持つ。


と、そこで父さんは一度小さくせきばらいをすると、僕の方に向き直った。


「ユウ。改めて、誕生日おめでとう。もう10歳か。大きくなったなぁ」


そしてそう言うと同時に、父さんは少し涙ぐんでいた。


「はははっ。父さん大袈裟だよ」


「いや、大袈裟じゃないさ。ユウが無事に10歳を迎えて、洗礼の儀を受けることができるんだ。嬉しいに決まっているだろ…!」


父さんは僕の言葉にそう返した。


「そう。ユウちゃんは今日から成人になるの。親としては、無事に成人を迎えることができることが何よりも嬉しいのよ」


母さんが父さんに続けてそう言う。


「リアも嬉しい!」


僕の膝の上に座るリアが此方を見ながらそう言う。


妹の場合は恐らくよくわかってないが、恐らく両親の真似がしたかったのだろう。


僕は父さん母さんリアと順に見た。


皆笑顔で僕を祝福してくれている。


その事実が…たまらなく嬉しかった。


だから僕は笑顔を浮かべると、皆に再び感謝の意を表そうと口を開いた…その時だった。


ぐーーーーっと再び響く音。


その音の先には…やはりリアがいた。


リアは再び顔を真っ赤にしている。


ご飯を食べようと言ってから結構時間が経ってしまったのだ。


再度お腹がなるのも無理はない。


「リアもお腹が減ったようだし、話はこの位にして。

…ユウ本当におめでとう。…乾杯!」


だから父さんはすぐに話を切り上げると、最後に軽く挨拶をし、乾杯の合図をした。


「「「乾杯!!!」」」


それに僕とリアと母さんが答えると、すぐに食事を始めた。


…あの後母さんが酔っ払って父さんを叱ったり、リアが僕の手からしか料理を食べたがらなかったり、リアや父さんが泣き出したりと色々あったが、とにかく楽しい時間を過ごすことができた。



パーティーを終え、今僕は自室のベッドに横になっている。


そこで、先ほど父さんが言っていた言葉を思い出していた。


「洗礼の儀…か」


父さんのいうこれは、この世界の誰もが必ずといっていいほど受ける儀式だ。


この洗礼の儀を受けた子供は、神様に初めて1人の人間として認めて貰え、神様にスキルを貰うことができる。

そして、その洗礼の儀を受けた子供は晴れて成人として、色々なことができるようになる…というものだ。


1つ例を挙げるとしたら、冒険者として過ごす為の冒険者証明を貰うことができること何かがそうだ。

仮に冒険者になったとしても、まだ10歳のうちは討伐依頼などは受けられないが、安全な場所での採取依頼や、運搬依頼などの簡単な依頼を受けることができ、依頼完了と共にお金を貰うことができるのだ。


ここで、あれ?さっき君魔物と闘ってなかったっけ?何て疑問に思う人も居るかもしれない。


実は子供のうちから魔物と闘うことは、禁止されていない。


この世界は魔物があちこちに蔓延っており、魔物に襲われる可能性も0ではない為、幼いうちから親が子に戦闘技術を教えるということも良くある。


その教育の1つとして親が子に魔物と闘わせることもあるのだ。


しかし、仮に魔物を倒しても15歳未満だと、冒険者の依頼の受付何かをする冒険者ギルドから報酬を貰うことができないなど、魔物との戦闘という危険に釣り合う報酬がない為、進んで闘おうとする人はあまり居ない。


あくまで小さいうちは自分を守る為に技術を学ぶ。


これが、この世界の一般の常識のようなものである。


では何故僕がこの年齢から進んで闘っているのか。


…理由は1つだ。


強くなりたい。誰かを護れる位に、誰かの役に立てる位に強くなりたい。


…それだけだ。


前世で果たせなかった目標。

それを本当の意味で叶えることはもうできないけれど、それでも自分の名に恥じない男になることはできる。


だからこそ強くなりたいのだ。


…と、目の前に控えた洗礼の儀と決意について色々と考えていると、突然部屋の入り口のドアが開いた。


よくあることなので、僕は誰の来訪かはしっていた。


だから声をかける。


「…リア。どうしたの?」


「…にぃー。やっぱりリア、にぃと一緒に寝たい」


僕の問いかけにリアはそう答えた。


これもよくあることだ。


なので僕はリアに了承の意を表すと、ベッドの横にスペースを空け、トントンとそこを叩いた。


リアは眠たいのか目を擦りながら、ゆっくりとこちらに向かい、そして横になった。


スースーと音が聞こえてくる。


もの凄く早いがもう寝たようだ。


僕はそんなリアの姿に笑顔になり、そして小さく声を発した。


「…おやすみ。リア」


…と。


そんな僕の声が届いたのかはわからないが、リアが笑顔になる。


そんなリアの様子に僕は再び笑顔になると、横になり目を瞑った。


洗礼の儀…どうなるかな。


…と、若干の不安と期待を心に持ちながら。


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