【肆話】エイトビートに挑戦~入江高太のドラム講座Ⅲ~
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「明菜。やっとドラムを叩くための一丁目一番地。エイトビートにとりかかるぞ。」
高太は張り切っていた。やっとドラムの楽しいところを教えることが出来ると思うと嬉しくなっていた。
「一丁目一番地って政治家みたい。はじめの一歩でしょ。」
「そうとも言う…そんなことはどうでも良いんだ。いくよ。ハイハットを同じリズムで八回叩いて。」
「分かった。あれ?音があまり響かないよ。」彼女は、何処か抜けていた。
「ペダルを踏んで。左足でね。」
「ペダル?あ、これね。分かった。行きます。」
ハイハットのオープン音が聞こえる。強弱にムラがあるが、初心者には十分な腕前である。
「次は二パターン行こう。最初は、ハイハットを八回叩くのと同時に、一回目と五回目にバスドラを入れる。一旦やってみるね。」
高太は最初はゆっくり目に、そして段々と早くしていった。
「じゃあやってみて。」
「高太の真似して段々早くしていくよ。」
「うん。分かった。」
上達している。ハイハットの音も均等な大きさだ。そろっている。
「凄いじゃないか。俺より上達のスピードが速い。どうやら俺はとんでもない人と入れ替わるようだな。」
「そんな。褒めないでくださいよ。私は凡人ですから。」
「今度は、バスドラの部分でハイハットを叩かないで4回くらいやってみて。」
「はい。」
彼女は普通にこなしていた。
「これだけ出来るなら、最後のステップ行くよ。3回目、7回目にスネアドラムを入れる。場所は分かるね。」
「手前の左側でしょ。」
「大丈夫だね。よし。叩いてみて。」
「1回目はバスドラとスネアのところはハイハット叩かないで、2回目にハイハット叩きながら叩くね。」
「分かったよ。」
1回目は余裕に叩けたが、2回目で苦しんだ。
「何でよ。どうして一緒に叩けないのよ。」
「そんなに苛立つな。最初はそんなものよ。二つ一緒に叩けないのは普通だ。そうそう、楽器はあくまでも一例だからね。色々と変わるけど、臨機応変に対応してね。応用編はまた今度。俺は凄いドラマーだと言われているけどさ。簡単なリズムを凄く見せているだけで、ボーカルとギター、ベースを引き立たせるような単純な手だからさ。君でも出来るよ。きっとね。ここはいつでも開いてるからさ。好きなときに来て良いよ。」
「有り難う。ティンパニが家にあるからさ。今度、こっちに移送できないかな?家に連れて行っても良いけど、ほら彼氏だと思われると恥ずかしいでしょ。」
「いや、そんな事は無いよ。入れ替わり実習なんて少子高齢化社会を食い止めんとする政府の陰謀という説もあるから。彼氏にも知られないことを俺は知ることになるんだ。そして守秘義務に苦しむことになるんだ。彼氏を超えるのに彼氏じゃないとは言えないだろ。」
「よく分からないけど、奥深くまで知ることになるんだよね。」
「俺はそう推測している。どうなるか分からないけどな。明日から教えてくれるの、ティンパニ?」
「うん。あと一週間は吹奏楽部は休み。マンネリ化を防ぐための休暇らしいよ。」
「そうか。やっぱり優秀なところは違うな。頼むよ明日から。」
「うん。分かった。」
その日の練習はこれにて終了した。
一応のドラムパート終了。次回からは、明菜が高太にティンパニを教えます。